本当の魔王は誰だ?

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勇者:
魔王を倒し、さらわれた姫を助けてくれと国王に言われ、魔王の城までやってきた勇者。しかし、彼がそこで見たものは…

魔王:
勇者が倒すべき相手…のはずだが…

姫:
誘拐された姫、勇者の救助対象だが…

四天王:
魔王の直属配下達、本来であれば勇者を待ち受けるはずが…

国王:
勇者に魔王を倒し、娘でもある姫を助けてくれと依頼したのだが…


長き旅を経て勇者はついに魔王のいる城へ到着した!

勇者「お前の悪行もここまでだ!」

気勢を挙げて魔王のいる玉座へ辿り着いた勇者、そこには黒いマントが後姿の魔王らしき者がいた。

「勇者よ…まずはここまでよく来れたと誉めてやる…」

勇者「ここに来るまで多くの困難を乗り越えてきた…だがそれも今日のためだ!」

「そうか…なら楽しませてみろ…勇者よ!」

そして振り返った魔王を見た勇者は驚愕する! 魔王は美しい人間の女性であったのだ!

勇者「(こ、この女性が魔王!?)お、女と言えど容赦はしないぞ! 魔王よ!」

禍々しい鎧を身に着けた魔王らしき女性は言った。

姫「何を言う、私はこの国の姫だぞ?」

勇者「え? お前が魔王ではないのか? じゃあ魔王は?」

姫「そこに転がっているだろう。」

勇者がふと脇を見ると傷だらけの魔王が倒れていた。

勇者「こ、コレは一体…」

魔王「ゆ、勇者よ…」

魔王は弱弱しい声で勇者に語りかける。

勇者「魔王…その姿はどうした? そして姫に何があったのだ!?」

魔王「こんな様になったのは…ゲホッ! そこの姫にやられたのだ…」

勇者「ひ、姫に!? デタラメを言うな! 姫をこんな姿にしたのはお前達ではないのか!」

魔王「ある意味ではな…そ、それより姫を連れ戻しにきたのであろう…さっさと連れて帰っていいぞ…」

魔王から飛び出したのは人質のはずの姫を連れて帰れと言う衝撃の発言であった。

勇者「な、何を言っているんだ? さっきから…」

魔王「この国の姫を頼むから早く連れて帰ってくれ…我らには手が終えん…」

勇者「全く状況が分からない…しかし、姫! 国王よりあなたを助けてくれと言われ、ここまでやってまいりました! さぁ、帰りましょう!」

しかし、姫はそっぽを向いて

姫「嫌だ、帰らん。」

勇者「な!? ひ、姫!?」

姫「あんな所に戻るぐらいならここにいたほうが良い。」

勇者「姫! 一体どうしたのです!? まさか魔王に洗脳されて…」

魔王「しとらんわ。本当に姫の意思だ。」

姫「勇者よ、そこまで言うなら私を倒してみせよ!」

姫が剣を構えて凄まじい殺気を放ってくる!

勇者「姫は乱心されたのか? ならば私が止めてみせる! はぁ!」

勇者が剣を構え、姫と対峙するが…

・・・

ガキン! ガキン! と激しく剣がぶつかり合う。

姫「どうした勇者! その程度か!」

勇者「す、凄まじい剣圧だ…ふ、防ぐだけで精一杯だ…」

姫の一撃一撃がどんな巨大なモンスターからの一撃よりも重く、早く勇者に降りかかっていた。

勇者「く! やむを得ない! ここは封印された禁断の魔法を使うしかない!」

姫「ほう? 面白い見せてみろ!」

勇者「お許しください! 姫!」

勇者の剣から巨大な火の玉が放たれる! 古代町一つを焼き払った炎の魔法だが…

姫「何だこれは?」

姫の一息で巨大な火の玉は消えてしまった。

勇者「馬鹿な…禁断の魔法が簡単にかき消されて…」

姫「もう終わりか? つまらん、ならばこちらから行くぞ」

姫も同じく勇者と同じ巨大な火の玉を出す! しかし、勇者のよりも高温で巨大な炎の玉であった!

勇者「ひ、姫がなぜこの術を!? うわあああああ!」

・・・

姫「終わったな、つまらん」

丸焦げになってしまった勇者、しかし死んではいない。

勇者「な、なぜ…姫が…」

魔王「やはり勇者でも駄目か…いよいよ、この国で姫に敵う相手はいないと言うことか…」

勇者「魔王…どういう事だ? なぜ姫はあんな力を…」

魔王「説明してやう、かつて姫を攫(さら)った時のことだ」

・・・

かつて私は人間界の各国の姫を攫(さら)い、国王を服従させようとしたのだ。そのほうが手っ取り早く人間を支配できると思ったのでな。そして最初に攫(さら)ったのがこの国の姫だった。

しかし、これが大きな誤算であった…この国の姫は剣術達者であったのだ。しかも人質にしている間退屈なのか私の直属の配下である四天王を相手に武芸の相手をさせたのだ。

四天王に敵うわけが無いと当初思っていた。ところが数日もすると四天王の一番下の者が敵わなくなり、さらに数日もすると下から二番目の者が、そして1週間もしないうちに全四天王を打ち破ってしまったのだ。

いつしか姫と戦える相手がこの魔王だけしかいなかったのだが、とうとう我ですら敵わなくなってしまうほど姫は異常な強さを手に入れてしまったのだ。

・・・

姫の持つ驚異的な回復術でケガが治った魔王と勇者は姫を上座にテーブルを挟んで椅子に座っていた。

勇者「つまり、お前達が姫をレベルアップさせてしまったということか?」

魔王「そうなるな、しかも毎日相手をさせられた上に中々お前が来ないから姫の強さはバンバン上がってしまったのだ。」

勇者「何で禁術の魔法を姫が使えるようになっている?」

姫「この城の書庫で色々な魔法を覚えて姫が自ら作り上げた魔法だ。すでに1000を超える魔法を覚えた。」

勇者「1000!? 魔法使いが一生をかけて覚える事ができる魔法は50がやっとなのに…ではなぜ姫にこんな禍々しい魔物が着るような鎧を?」

魔王「何だか元の姫衣装が気に入らなかったらしく、魔界の著名な鍛冶職人を呼んで作らせたんだ。しかも勝手に…」

姫「あんな姫衣装は私の趣向に合わぬ。やはりこれぐらいの鎧でなければならないな。」

勇者「事情はよくわかりました…ですが、お父上である国王が心配しております。早く戻りましょう。」

姫「嫌じゃ」

戦う前と同じく姫は拒否の意思を見せる。

勇者「何故です…?」

姫「勇者よ。長い旅をしてきたのであればわかるであろう。この国の悲惨さを…」

勇者は思い出していた。魔王の城に来るまで途端の苦しみにいた民たちを。

勇者「確かに貧しかったり、苦しんでいる人たちを多く見ました。しかし、それは魔物によって…」

姫「それは違う、民を本当に苦しめているのは国だ。我が父なのだ。」

衝撃の一言であった。これまでの旅で確かに民は苦しんでいたし、それは魔物によるものだと思っていた勇者は動揺する。

勇者「しかし! 民達は魔王や魔物によって苦しめられていると…」

魔王「それはない。なぜなら我はこの姫を攫(さら)って以降、一度も魔物に指示を出していない。というか出せていない。」

勇者「デタラメを…」

姫「魔王の言う事は本当だ。私がほぼ毎日稽古相手にしていたからな。とても魔物に命令を出す暇は無かった。」

魔王「それ所か魔物達からは勇者が突然、村を苦しめているという見に覚えの無い事で攻めてきたと報告があったのだ。」

勇者「・・・・・・」

姫「勇者よ。民達は国に脅されていたのだ。嘘を言って勇者を魔物と戦わせ、魔王に怒りをぶつけるようにさせろと…」

勇者「民が国に…」

姫「そうだ。逆らう者は家族にいたるまで罪人とし、民が本当に苦しんでいる理由を魔王になすりつけようとしたのだ。」

魔王「そして、勇者が魔王を倒し、姫を奪還できればその後でお前も始末する予定だったろうな。お前の力とこの真実を知れば危ういからだ。」

勇者「そんな…」

真実を知り、ショックを受ける勇者。そんな勇者に姫は問いかける。

姫「勇者よ。本当の魔王は誰だ? ここにいる私か? それともそこの魔王か? それともこの国の王か?」

勇者「それは…」

姫「ここまでの長い旅で苦しんでいる民の姿、それは魔物ではなく国による物なのだ。私はこの力を持って国王を倒そうと考えている。」

勇者「国王を倒す…つまりそれは!」

姫「そう。民を苦しませ、その苦しみの矛先を魔王に向けて勇者と戦わせようとした父こそが討つべき相手だ。」

勇者「そのお志は分かりました。しかし、それならなぜ今まで…」

魔王「今までできなかった理由か? この姫様ならすぐに出来たろうな。しかし、仮に成し遂げた後でお前が納得しただろうか?」

勇者「・・・・・・」

魔王「お前は聞く耳を持たず、姫を倒そうとするだろう。結果は返り討ちだろうが、お前を殺すのは惜しいと判断したのだ。それゆえ今日まで時を待ったのだ。」

姫「勇者、国王と戦うにも私一人の行動では人は納得しない。しかし、そこへ民に影響力のある勇者、そして魔物に影響力のある魔王まで加われば多くの人は納得するだろう。」

勇者「つまり魔王、お前はもう姫に加担するのか?」

魔王「あらぬ疑いをかけられてお前と戦わされそうになったのだ。一矢ぐらいは報いたい。それにこの姫にはもう勝てぬ…逆らう気すらせんわ…」

もはや魔王も姫のほうに付く、魔物の王である魔王ですらも姫に加担するのである。

姫「勇者、本当に戦う相手を倒すため力を貸してくれぬか…」

勇者「…本当に戦う相手…」

・・・

国王の住む王都、一件華やかだが国中の民を苦しめた上に成り立った血塗られた人柱の王国。

その王国を姫と勇者、魔王の率いる軍勢は攻めた。

姫と勇者による説得と演説で苦しんでいた民や兵士ですらも蜂起(ほうき)し、国と戦う覚悟を決めた。

さらに魔王の影響力を活かし、魔物ですらも王国を倒すために共闘を決めた。

王国はその日の内に陥落、国王と国を苦しめた者達は全員国外追放となり、勇者が新たな国王として、そして姫がその伴侶となって王女となった。

魔王も人間界の支配は姫がいる限り無理と悟り、魔物達を説き伏せて和平を結ぶ事にした。

こうして本当の魔王は打ち倒され、国には平和が訪れたのであった。

END

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