宿題タイムトラベル

小園雄介:
2200年からやってきた、16歳の高校生。

小園太郎:
2016年現在25歳の青年。雄介の遠い先祖。


2200年――自家用タイムマシンが普及した世の中。
高校一年生で十六歳の小園雄介は、自分の先祖に会う為、180年前に当たる2020年にやってきていた。

雄介「どうも、先祖様。僕は2200年からやってきた、貴方の子孫の小園雄介です」

太郎「は?」

雄介「お部屋にお邪魔してもよろしいですか?」

太郎「いやいや、お前どう見ても不審者だろ。帰ってくれない?」

雄介「来たばっかりなのに帰れと言うんですか? それは酷いなぁ」

太郎「お前の事情なんてしらねーよ」

雄介「少しくらい僕に協力してくれたっていいじゃないですか。身内なんだし」

太郎「身内じゃねーよ。誰だよお前」

雄介「だから貴方の子孫ですって。さっきも言ったじゃないですか」

太郎「そんなファンタジーなことあるわけねーだろ。大体俺は彼女もいないんだ。子供なんかできるわけねーだろうが」

雄介「うわ…モテないからって卑屈すぎる」

太郎「うるせえ!」

雄介「でも大丈夫。僕が生きてるってことは貴方もなんとか結婚して子供ができるって証拠ですから。安心してください」

太郎「そんなこと言われても信じらんねーよ、大体お前こえーよ」

雄介「そんなことないですよ。僕は単に宿題をしにきただけですし」

太郎「宿題?」

雄介「はい。実は昨日学校で先生からこんな宿題を出されまして…」

次の瞬間、雄介の目からレーザーのように光が飛び出した!
その光の先に、なにやら文字が浮き出て見える…

太郎「なになに…『先祖にインタビューして家系図を作れ』…?」

雄介「そうなんです。この宿題の為に僕は一人一人インタビューするためにタイムトラベルをしているわけなんです」

太郎「おいおい…2200年ってこんなレベル高い宿題やってんのかよ…」

雄介「なので太郎さんにもインタビューしたくて」

太郎「うーん…まだ何か怪しいけど、さすがに目からレーザー出されたら信じないわけにいかないな…」

雄介「でしょう?」

太郎「で、俺に何を聞きたいワケ?」

雄介「そうですね。まずはどれくらいモテないのか話を聞きたいんですが…」

太郎「って。なんだよその内容は!」

雄介「だって、ただ家系図作るだけじゃ駄目なんですよ。テーマが必要なんです」

太郎「お前の家系図のテーマは何なんだ?」

雄介「ズバリ『モテランキング家系図』です」

太郎「なんじゃそりゃ」

雄介「先祖を遡って、どの人がどれだけモテたかを調べて、家系内モテランキングを作るんです」

太郎「なんだよその絶望的なランキング! 絶対俺が最下位じゃん!」

雄介「そんなことないですよ」

太郎「なんでそう言い切れるんだよ?」

雄介「だってさっき話を聞いた幸太郎さんという人は、連続20回フラれたって言ってましたよ」

太郎「…………それ俺の親父じゃん」

雄介「え、でも太郎さんはそれよりかはマトモなんですよね?」

太郎「俺は昨日21回目のお断りメールを貰ったよ……」

雄介「ど…ドンマイ!」

太郎「何かわかんないけどお前に言われると異様にムカつくわ」

雄介「でもまあ真の恋人とはこれから出会うってことですよ!」

太郎「はぁ…そんなことあんのかな…」

雄介「じゃないと僕は存在しませんから。でも一体何回目の告白で成功するんだろう?」

太郎「俺がききてーよ! それが分かれば楽なのに」

雄介「因みに昨日フラれた相手はどんな人だったんですか?」

太郎「あーちょっと不思議ちゃんだったな」

雄介「不思議ちゃんといいますと?」

太郎「なんか変わってるタイプの子。ミステリーとかオカルトとか好きでさ」

雄介「へえ…太郎さんはそういう人がタイプなんですか?」

太郎「そういうわけじゃないけど、たまたま職場で出会って、面白いなーと思ってさ」

雄介「職場ですか。じゃあ明日から顔合わせづらいですね」

太郎「そうなのよ! 分かる? この感じ」

雄介「いや、僕はもう15人くらいと付き合ってるんで」

太郎「はあ!? お前いくつだよ」

雄介「16歳です」

太郎「それでもう15人と付き合ってんの!?」

雄介「はい。全部あっちから告られて」

太郎「告られた!! 一体どのあたりから俺の家系にモテの血が混ざったんだよ!?」

雄介「一応今は3人の女の子と併行して付き合ってます」

太郎「3股かけてんのかよ! 最低だなお前! クソ羨ましいぜ!!」

雄介「僕の父は既にモテモテでしたよ。祖父もモテモテで200人くらい泣かせたって言ってました」

太郎「マジかよ! 本当にお前俺の子孫か? 違う家のガキじゃねーの?」

雄介「いやいや、確かに太郎さんは僕の先祖ですって」

太郎「くそ…俺はこんなに非モテだってのに子孫はモテモテかよ…なんかムカつくぜ」

雄介「とりあえず次回は22回目の告白をするってことですね」

太郎「まあそういうことになるな。21回目は駄目だったから」

雄介「じゃあ次回は頑張ってください」

太郎「ああ。…って、ちょっと待てよ。お前さ、俺の奥さんになる人の名前知ってるんじゃないの?」

雄介「まあ調べればわかりますけど…」

太郎「じゃあ教えてくれよ! 頼む!」

雄介「仕方ないなぁ。じゃあちょっと待っててください。脳内チップから記録を取り出しますから…」

雄介はそっと目を閉じた。どうやら記録を取り出す作業をしているらしい。
その姿を見た太郎は、未来はハイテクだなあと心底感心した。
とその時、太郎の携帯電話がブルブルと震えだす。

太郎「はい、もしもし」

和美「もしもし。私、和美です」

太郎「和美ちゃん!?」

和美「ごめんなさい、いきなり電話なんかしちゃって…」

太郎「そんなことないって。でも、俺にはもう連絡してくれないだろうって思ってたから驚いたよ」

和美「その…やっぱりちゃんと電話で言った方が良いかなって思って」

太郎「俺とは付き合えないってことを?」

和美「うん…」

太郎「それなら昨日のメールで十分伝わったよ。和美ちゃんのことはもう諦めるから」

和美「ごめんね…」

太郎「いいんだ。それに今はそれどころじゃなくなっちゃったし」

和美「え?」

太郎「実は今、2200年に住んでる俺の子孫とかいう奴が来ててさ。ただの変質者かと思ったらガチらしいんだよ。だから…」

和美「なにそれ! 超面白そう!!」

太郎「えっ」

和美「それってタイムマシンで来たってこと!? 太郎君の子孫ってどんな感じ!? 2200年ってどんな世界になってるの!?」

太郎「え…あ、あの…和美ちゃん?」

和美「その子孫って人、今太郎くんの家にいるの!?」

太郎「う、うん…俺の目の前にいるけど…」

和美「今からそっち行っても良い!? 今結構近くにいるから!!」

太郎「えっ、あ、ああ、まあ良いけど…」

和美「すぐ向かうね!!」

ハッスルした声と共にプツリと電話が切れる。
呆気にとられ茫然と立ち尽くす太郎の肩を、雄介がポンと叩いた。

雄介「さっそく22回目のお断り電話ですか? 元気出してください」

太郎「今のはちげーよ!」

雄介「なんだ、違うんだ。つまんない」

太郎「オイ!!」

雄介「あ、それより太郎さんの奥さんの件なんですけど」

太郎「おう、何て人だった?」

雄介「奥さんの名前は…」

太郎「名前は…?」

ゴクリ――
そう唾を飲み込んだ瞬間。

和美「太郎くーん!!」

太郎「和美!?」

雄介「和美?」

和美「その人が太郎君の子孫って人?」

太郎「ああ…一応そうなんだけど…」

和美「太郎君の子孫なのになんでそんなにイケメンなの?」

太郎「って、オイ!!」

和美「これが2200年の人…ああ、すごい…感動しちゃう!」

太郎「雄介、こちら和美ちゃん。昨日俺がフラれた相手なんだけど、さっき電話が来てお前の事話したら、どうしても会いたくなったみたいで」

雄介「なるほど」

太郎「ごめんな、さっきの話は後でってことで…」

和美「さっきの話って?」

雄介「太郎さんの未来の奥さんの話です」

和美「なにそれ聞きたい!」

太郎「いやいや、和美が聞いたらヤバイだろ」

雄介「そうでもないですよ。だって未来の奥さんは和美さんですから」

太郎「え!!?」

和美「え?」

雄介「どうやらお二人は、今日付き合うことになるようです」

太郎「ええっ!? でも俺、昨日フラれたばっかなんだけど」

雄介「ところが今日僕と会ったことで、不思議ちゃんな和美さんは太郎さんに興味を持ったようです」

和美「うん! 私やっぱり太郎君とつきあう!」

太郎「まじに!!?」

和美「だって他の人とじゃこんな面白い体験できないもん」

太郎「まじか…雄介、お前なにげに俺らのキューピッドになってんじゃん」

雄介「まさか僕の宿題がこんな効果をうむとは思っていませんでした」

太郎「ありがとう雄介。礼を言うよ」

雄介「どういたしまして」

太郎「お礼ついでに俺のモテランキングちょっと上にしといてくれない?」

雄介「それは無理ですね。最下位です」

太郎「クソ!!!」

こうして雄介は先祖のキューピッドとなりながらタイムトラベルを続けていった。
やがて2200年に戻り完成させたモテランキング家系図は、雄介のキューピッド履歴の賜物なのであった。

END