わがままぼうやのヒツジさん

ヒツジさん:
とってもワガママで泣き虫な男の子。いつもお母さんを困らせています。

おかあさんヒツジ:
ヒツジさんのお母さん。ヒツジさんのワガママに困っているけれど、とても優しいお母さん。


あるところに、とってもワガママでちょっぴり泣き虫な男の子のヒツジさんがいました。ヒツジさんはいつも「やだもん!」と言って、おかあさんヒツジの言うことを聞こうとしませんでした。

おやつの時間、自分の大好きなものじゃないときは、机をたたいて大声でこう言うのです。

「やだもん! やだもん! きょうはパンケーキがよかったんだ! パンケーキじゃなきゃいらないんだもん!」

せっかくおかあさんヒツジが作ってくれたアップルパイを、ヒツジさんは食べようとしません。

おかあさんヒツジが、

「そろそろ夕食の時間ですよ。おもちゃをおかたづけしてね。」

と言うと、ヒツジさんは足をバタバタさせてこう言います。

「やだもん! やだもん! ぼくはまだおもちゃで遊びたいんだ! おかたづけなんてしないんだもん!」

結局、おもちゃをかたづけるのはおかあさんヒツジなのです。

どろんこ遊びを怒られても、いたずらが見つかっても、いつもヒツジさんは「やだもん!」ばっかり言って、おかあさんヒツジを困らせているのでした。

そんなある日のこと。

ヒツジさんがとっても気持ち良いおひるねから目をさますと、おうちの中がとても静かでした。おかあさんヒツジがお料理をしているときのおいしそうなにおいもありません。編み物をしている時のキイキイという椅子の音もしません。

「おかあさん。」

ヒツジさんはおうちの中でおかあさんヒツジを呼びました。でも返事はありません。おいしいごはんやおやつを作ってくれるキッチンにも、良いにおいのお洗濯物とたくさんほしているお外にも、どこにもお母さんヒツジはいないのです。

ヒツジさんはだんだん不安になってきました。

「おかあさん、どこに行っちゃったの?」

いくら呼んでも、おかあさんヒツジは出てきません。ヒツジさんはとうとう泣き始めてしまいました。

「えーん。おかあさんがきえちゃった!ぼくがワガママばっかり言うから、おかあさんは僕がきらいになっちゃったんだ!」

寂しくて悲しくて、ヒツジさんのおめめからぽろぽろと涙がとまりません。

「えーん、えーん!もうワガママ言わないよ! だからおかあさん、帰ってきて!」

ヒツジさんが、そうさけんだ時でした。

「ただいま。」

おうちの玄関のドアが開いて、おかあさんヒツジのとっても優しい声が聞こえました。おかあさんヒツジは、街までお買い物に行っていたのです。

「あらあら。ぼうやはどうしてそんなに泣いているの?」

おかあさんヒツジは、ヒツジさんのことをぎゅっと抱きしめて、涙をふいてくれました。

「ぼくがワガママをたくさん言っていたから、おかあさんはぼくのことがキライになっておうちを出ていったと思ったんだ。」

ヒツジさんがそう言うと、おかあさんヒツジはにこにこ笑顔でこう言いました。

「おかあさんはぼうやのことをキライになんかなりませんよ。だって、世界でいちばん大好きなぼうやなんですから。」

ヒツジさんは、それを聞いて安心しました。

「ぼくもおかあさんのこと、だーいすき! だから、もうワガママ言わないよ。だって、おかあさんは世界でいちばん大好きなおかあさんだから!」

それからヒツジさんは、ワガママを言うのはやめました。おかあさんヒツジが作ってくれたおやつもごはんも、キチンと食べるようになりました。おかたづけもちゃんとできる、とってもいい子になりました。

だって、ぼうやはお母さんが世界で一番大好きなぼうやですから。

おしまい