【BL】出世といいわけ

ジュン「もー先パイ、どこに行ってたんすかー! 俺、探しちゃいましたよ~」

エイジ「俺は1ミリたりとも動いてねえよ」

ジュン「ええっ?! だってオレ、コンビニ行ってただけっすよ? 戻ったらもう先パイいないんですもんー」

エイジ「それはおまえが迷っただけだろ」

ジュン「そんなバカな~。コンビニまで100mもないのに迷子になんてなるわけが」

エイジ「バカはおまえだ。とりあえず静かにしろ。俺たちが今なにやってるのかまで忘れてないだろうな」

ジュン「ハイ! 連続殺人の犯人と疑われる男の自宅前で張り込みをしています!」

エイジ「だから黙れっつってるだろ。周りに聞かれたらどうするんだ」

ジュン「車内ですもんー聞こえませんよ~」

エイジ「近隣の住民に怪しまれるような行動は慎めって言ってるだろ」

ジュン「大丈夫ですよ~そうそう簡単にみつかりませんって」

エイジ「おまえって本当に危機感ってものがないよな」

ジュン「一緒にいると和むってよく言われます」

エイジ「褒めてねえよ」

ジュン「先パイに褒められちゃったりなんかしたらオレ今日仕事にならないです」

エイジ「だから褒めてねえよ」

ジュン「そうだ先パイ、これ買ってきましたよ」

エイジ「ああタバコ? すまんな」

ジュン「タバコは身体に悪いんで、サプリメントにしときました。なめて溶かすやつなんで口寂しくないですよ!」

エイジ「いらねーよ!」

ジュン「えー? 意外に味もいいですよー?」

エイジ「せめてガムくらいにしといてくれよ……。じゃあコーヒーでいいから」

ジュン「はいはい。先パイ毎日コーヒー飲み過ぎなんで、今日は野菜ジュースにしときました!」

エイジ「だからいらねーよ!」

ジュン「ええー? 甘くておいしいですよ?」

エイジ「おまえはまともにお遣いもできないのかよ……」

ジュン「いやいや、ちゃんとできてますから。オレは先パイの身体が心配なんですよ」

エイジ「後輩に健康管理なんてされたくねえよ」

ジュン「健康管理どころか生活全般管理したいですけどね、オレは」

エイジ「おまえは俺をどうしたいんだよ」

ジュン「健康になってほしい? いや、健康で長生きしてほしいんです」

エイジ「独身の刑事に長生きは難しいだろ」

ジュン「だからオレがいるんじゃないすかー」

エイジ「おまえがいると逆に寿命が縮む」

ジュン「こんなに尽くしてるのに?!」

エイジ「おまえのミスでいつか犯人に刺されるんじゃねえかって怖くて仕方がないわ」

ジュン「えーだって、先パイ優秀すぎるから危険な現場ばっかり行ってるじゃないですか」

エイジ「それが仕事だ」

ジュン「オレがコンビになった意味がないっすよ」

エイジ「一緒に危険なところに行くのが嫌なら、コンビ解消することだってできるんだぞ」

ジュン「オレじゃなくて、先パイを危険な目にあわせたくないんです」

エイジ「だからわざとミスするって?」

ジュン「そうしたらオレたちにはもっと楽な仕事しか回って来なくなるでしょう」

エイジ「おまえそれでも刑事かよ」

ジュン「オレが刑事になったのは何かの間違いかもしれないけど、先パイのそれは天職ですもん」

エイジ「そうは思えないが」

ジュン「先パイは放っておいたら仕事と一緒に死んじゃうよ。そんなの嫌です」

エイジ「別に積極的に死のうとはしていない」

ジュン「なーんかわかんないけど、先パイはオレを置いてっちゃうような気がするんですよね……」

エイジ「おまえのわけわかんない勘ってたまに当たるから怖いよな」

ジュン「直観力が鋭いって昔から先生にも言われてました!」

エイジ「だから褒めてねえ……」

ジュン「オレは先パイの死ぬところなんて見たくないし、だけど先パイは優秀な刑事だからどんな現場でも率先して動いちゃう。なら、危険な仕事を引き受けないようにするしかないじゃないですか」

エイジ「……おまえって本当にバカだな」

ジュン「先輩想いって言ってください」

エイジ「ただのバカだよ。……俺たちが危険な捜査をしなくても良くなる方法なんて他にもあるだろ」

ジュン「えーなんですかそれ!」

エイジ「たくさんの事件を解決すること」

ジュン「そんなの、先パイがいつもやってることじゃないですか」

エイジ「成果を挙げれば出世できる。出世すれば現場には出なくて良くなる」

ジュン「はっ! そういえばそうかも」

エイジ「つまり今やることは、一生懸命犯人を捕まえること。わかったか?」

ジュン「そっか、オレが頑張って犯人を捕まえて先パイを出世させてあげればいいんだ!」

エイジ「警察を辞める気がないのなら、それが一番穏便な方法だろうな」

ジュン「じゃあオレ、がんばります! それが先パイとコンビを組んでるオレの仕事ってことですね!」

エイジ「俺たちがコンビであるうちにどうにかしような」

ジュン「もちろん! オレが先パイを安全なところに連れて行きますから! そういうことならオレのことはどんどん置いてっちゃってください」

エイジ「おまえも一緒に上へ行くんだよ」

ジュン「え?」

エイジ「俺だっておまえには危険なことをしてほしくないからな」