だから魔王は世界を滅ぼせない

勇者:
男の子 10代半ばの見た目 人間
苦労人主人公、父親から勇者を受け継いだ
勇者の家系に生まれたが魔王の対応に困っている

魔王:
女の子 10代半ばの見た目 300歳位
すごいパワーを持っているが使い道がない
生まれつき魔王でわがままお嬢様
勉強が嫌だったので勇者の家に無理やり押しかけ家出をしている

ジル:
男性 20代後半の見た目 500歳
魔王の付き人の悪魔
家出したお嬢様をあの手この手で魔王城へ連れ戻そうとするが失敗ばかり


魔王「うーむ、悩む、どうしよう。のう、勇者。どうしたらいいかのう?」

勇者「とりあえず、早く家から出ていってくれませんか魔王サマ」

勇者(僕は代々勇者の家系に生まれた。勇者といっても僕の住んでいる世界で魔王が暴れまわっていたのは、もう何百年も昔の事だ)

勇者(どうやら僕の何代も前の勇者が魔王に打ち勝って、それ以来魔王はとても穏やかになったらしい)

勇者(だから勇者なんて肩書は一応あるけれど、もう魔物は人間を襲わないから戦う事もない。ダンジョンもただの洞穴だ)

勇者(お爺ちゃんもお父さんも皆から未だに勇者って呼ばれてるけど、仕事は勇者とは関係ない)

勇者(僕だってお父さんから勇者を受け継いで以来、勇者って呼ばれる事があるものの、でも勇者らしい事なんてした事ない)

勇者(確かにこの世界はとても平和になった。だからと言って、これは無いと思うんだよ。)

魔王「なんでよ! いいじゃん! いいじゃん!」

勇者「いやですから、なんで魔王サマが勇者の家に家出してくるんですか。おかしいでしょ」

勇者(そうだ、何と魔王が勇者である僕の家でのうのうとお茶を飲んでいるんだ。こたつに入ってミカンを食べながら)

勇者(この魔王はかつて勇者に倒された魔王とは違うようだけど、でも確かに魔王だ。だって自分から魔王って名乗ったし)

勇者「学校から帰ってきたらいるとかびっくりだよ…。っていうか何で誰も止めなかったの? 魔王だよ? 普通追い返すでしょ?」

勇者母「あらやだ。だってこんな可愛らしいお嬢さんを追い返すなんて出来る訳ないじゃない」

勇者父「そうだぞ、お前のガールフレンドだと思ったんだが違ったのか?」

魔王「お父様ったら恥ずかしいです、ガールフレンドだなんて。私と勇者君ってやっぱり、恋人同士に見えちゃいます?」

勇者「もうやだこいつら」

勇者(ほっといて部屋行こう)スタスタ

魔王「あっ、待て、勇者! 置いていくでない!」バタバタバタ

勇者母「あらあらうふふ」

勇者父「あいつも成長したなぁ」

・・・

勇者「なんで部屋までついてくるんですか、というか、そこ、僕のベッド…」

魔王「ん? 何でって勇者がわらわを置いていくからじゃ! 勇者のベッド…! くんかくんか」

勇者「やめてください帰ってください」

勇者「本当、何しに来たんですか、初対面ですよね。は! まさか、勇者を倒しに…!? やめてください僕悪い勇者じゃないよ」

魔王「何を1人でぶつぶつ言っておるんじゃ。何しにって…そんなの決まっておるじゃろ?」

勇者「えっ、平和協定なんてくそくらえだー! 世界世界征服してやるぞ、邪魔するな勇者! とかじゃなくて?」

魔王「ないない、何でわらわが今更世界征服するんじゃ。そういう事はもうしないのじゃ。魔王は案外平和主義なんじゃ」

勇者「じゃあ何が目的で人間界に。魔王は魔界から滅多に出てこないはずでしょ、だって聞いた事ないですよ。魔王が勇者の家に来るなんて」

魔王「そ、それはっ」

勇者「それは?」

魔王「…やっぱりむり!」

勇者「え! やっぱり世界征服を…」

魔王「違う! だから、えっと、つまり…」もじもじ

勇者「そういえばさっき、どうしようとか言ってましたよね? 何か悩んでるんですか? 世界征服の方法とか?」

魔王「やけに世界征服にこだわるの。お主結構好戦的じゃな」

魔王「えーっと、な。実は、あの、ここに来たのは、」

勇者「はい」

魔王「えと、あの」

魔王「あの…」

魔王「勇者の事をす……」

???「探しましたよお嬢様!!」バリン!

勇者「ぎゃ!」

魔王「うわ! お前は!」

???「こちらにいらしたのですねお嬢様、さあ早く魔王城へ帰ってお勉強の続きをしましょう。今日のノルマがまだまだたっぷり残っておいでですよ」にっこり

魔王「嫌じゃ! 放っておいてくれんか!」ぷいっ

???「そうですか、いいんですか? ノルマを増やしても」

魔王「悪魔じゃ…」

???「悪魔ですから、何をおっしゃっているんですかお嬢様、さ、早く帰りましょう」ぐいっ

勇者「ちょっと待った! なんなんだよお前! 勝手に窓割って入ってきて!」がしっ

魔王「勇者…!」キュン

???「これはこれは勇者殿、お初にお目にかかります。私は魔王ことお嬢様の執事をしておりますジルと申します」ぺこり

勇者「あ、これはどうもどうも」ぺこり

勇者「じゃなくて! どうすんだよこの窓! 部屋の中にまでガラス散ってるじゃん!」

ジル「まあまあ落ち着いて、すぐ直しますから、はいちちんぷいぷい~」しゃらんら

勇者「わーすっごぉい」

勇者「じゃなくて、悪魔って言ったな? もしかして魔王と共に勇者を倒そうと…」

ジル「えーと、お嬢様」

魔王「はい」

ジル「まだおっしゃってなかったのですか? 勇者殿に」

魔王「はい」

ジル「勇者の事が好きだって……」

魔王「わーーーー!!!!」

勇者「えっ」

ジル「まあそういう訳ですから魔王が勇者を倒して世界征服~なんて事はありませんよ」

魔王「もう! 帰る! わらわは帰るぞ!」

ジル「あ! お待ちくださいお嬢様! 私めも一緒に、」

魔王「お前なんて知らん! ばーかばーか! ぷんぷん! わらわは怒っておる! 1ヶ月人間界で反省しておれ!」

魔王「あ、ゆ、勇者は別にわらわの城に遊びにきてもいいぞ? いつでも待ってるんだからね!!」ダッシュ

ジル「そ、そんな。お嬢様あーー!」

魔王「とりあえず帰ってくれませんか…」