悪魔はチョコレートを恐れるべきか?

悪魔(あくま。男):
亜由美に惚れてしまった悪魔。亜由美につきまとう。プライドが高く、ナルシスト。そして回りくどい。イベント好き。

亜由美(あゆみ。女):
悪魔に惚れられてしまった女子高生。悩んでいるが、最近まんざらでもなく、悪魔とカップルイベントを楽しめるか心配している。


亜由美が自分の部屋で勉強をしていると、いつの間に背後に悪魔が立っている。

悪魔:「なあ、2月だなぁ」

亜由美:「ああ、2月ねぇ・・・ソクラテス、プラトン、アリストテレス・・・ん? あ、そうそうええっと、」

悪魔:「2月と言えばなんだと思う?」

亜由美:「そういやそろそろ節分ね」

悪魔:「俺は鬼じゃないぞ」

亜由美:「けど去年結構ダメージ食らってたじゃない・・・無知の知は・・・プラ、あ、違うな」

悪魔:「うるさい! あれはただ痛かっただけだ!」

亜由美:「あ、そう。イデア論がプラトンね・・・」

悪魔、亜由美のノートをのぞき込み、笑う。

悪魔:「相変わらずくだらない勉強の仕方だなぁ。くだらなくて涙が出てくるぜ。ソクラテス―無知の知、プラトン―イデア論、アリストテレス―形而上学、か? そんな勉強して何になる?」

亜由美:「さっきからうるさいのよ! テスト明後日なんだから邪魔しないでって言ったでしょ!」

悪魔:「まあ聞けよ。お前、イデア論が何たるかを説明できるのか? イデアの語源は? そもそも師匠のソクラテスからどういう風に思想を受け継いで自分の思想に昇華させて、それをまた弟子のアリストテレスはどう継承しつつどう自分の思想としたか?」

亜由美:「・・・・・・」

悪魔:「ほら、見ろ。うんともすんとも言えないじゃないか。お前のやっていることはこの先なんの足しにもならないことさ。本来思想ってもんは、実践してナンボだろ。ああ、くだらない。反吐がでるぜ」

亜由美:「・・・・・・」

悪魔:「何とか言えよ。俺がお前のこといじめてるみたいじゃないか」

亜由美、諦めたようにため息をつきつつ、シャーペンを置いて悪魔を振り向く。

悪魔:「やっとこっちを向いたな」

亜由美:「あんた、悪魔のくせになんでそんなに詳しいの?」

悪魔、亜由美の問いに饒舌(じょうぜつ)になる。

悪魔:「そりゃ、俺は一流悪魔の登竜門である某スーパー悪魔学校出身だからな。そこは超スパルタ! 全寮制で基本500年間、いかにスマートに人を地獄に落とすかを叩きこまれる」

亜由美:「ふうん・・・」

悪魔:「そもそも、うまく口車に乗せて人間に悪の思想を刷り込むんだから、人間界に存在するありとあらゆる思想・宗教の知識は必須さ。あと話術、ま、早い話がこっちの世界でいうところのバリバリ営業マンってところか」

亜由美:「へ、へえ・・・なんか結構大変なのね、悪魔の仕事も・・・」

悪魔:「俺のすごさをやっとわかったか」

亜由美:「まあ、すごさっていうか・・・」

悪魔:「俺の華麗なる経歴を聞くか? ・・・ふふ、良いだろう。まず、スーパーエリートの両親から生まれ、この美しい美貌と溢れんばかりの才能を受け継ぎ、超飛び級で学校に進学・・・」

亜由美、ペラペラしゃべりまくる悪魔の話をしばらく黙って聞いている。

悪魔:「・・・で、396年連続トップの成績を維持し、飛び級をしまくった俺はそのまま主席で卒業。もちろん超ウルトラスーパー成績優秀だった俺様は悪魔免許皆伝試験を免除、さっそく人間界へと羽ばたき輝かしい実績をあげ、悪魔1年目にして年間ベスト・オブ・デビルを受賞・・・」

亜由美:「・・・で、その超ウルトラスーパーベスト・オブ・デビル様がこの山奥どんづまりハイパー過疎地の観光資源は綺麗な空気と、空き家を荒らしまくる猿だけのスバらしい村に光臨なさったというわけね」

悪魔:「ド田舎だろうとそこに咲いた美しい花を放って置くわけにもいかないだろ」

亜由美:「あんた生粋の悪魔の癖に大丈夫なの? 大晦日にはソバ食べてたし、今年は年始早々餅つきにも参加して大喜びしてたし・・・。そもそも、クリスマスだってノリノリでプレゼント交換とか、イルミネーションも見に行ったし」

悪魔:「おいおい、ただのイベントだろ。ま、流石に賛美歌には胃をやられたけどな」

亜由美:「・・・・・・」

悪魔:「おっと、俺の華麗なる経歴紹介がまだ途中だったな、」

亜由美:「ああ、もう良いって」

悪魔:「最後まで聞けよ」

亜由美:「大体わかったわよ」

悪魔:「なんだと、盛り上がるのはこれからだ、」

亜由美:「それにま・・・、あんたがそういう風にイベント普通に楽しめて、気をつければ別にダメージもないっていうこともわかったし・・・」

悪魔:「おい、何が言いたいんだよ」

亜由美:「あんたの回りくどいアピールなんかお見通しなんだから・・・あ、もうこんな時間! 私勉強するから部屋に居てもいいけど黙っててよ」

悪魔:「待て、俺の華麗なる経歴はまだ・・・」

亜由美:「ああ、もう、わかったからって! 大丈夫だから、ちゃんと14日はチョコあげるから!」

悪魔:「! ・・・え、な・・・!」

悪魔、絶句する。

悪魔:「別に俺は何にも言ってないぞ、お前が・・・」

亜由美:「ああ、はいはい、わかった。わかったから、何でも良いけど、イルミネーション見に行くときは耳せんすること!」

悪魔、顔を赤くして慌てるが亜由美は相手にしない。

悪魔:「べ、別に俺は自分から欲しいなんって言ってない・・・!」

亜由美、もう返事はしなかったが今後はこの妙な悪魔とイベントを気兼ねなく楽しめることがわかり、安堵する。