座敷童と一緒!

大学生になり憧れの東京で新生活を始めた遠山良子は、ある日自分のアパートの部屋の片隅に、見知らぬ女の子が座っているのに気付いてしまった。

その女の子は半透明で、着物をきて、小さな体で体育座りをしている。

良子は恐怖に恐れおののいたものの、何とか勇気を振り絞ってその物体に話しかけた。

良子「あの…すみません。あなたは誰ですか?」

座敷童「私は座敷童です。あなたには私が見えるのですか?」

良子「うん…なんか見えちゃったみたいなんだよね」

座敷童「そうですか」

良子「で、あなたはいつからそこにいるの?」

座敷童「結構前からいました。あなたの前の前の前の前の…つまり結構前の住人の時にここに引っ越してきたんです」

良子「引っ越してきた?」

座敷童「はい。昔は東北に住んでたんですが、東京に憧れていたので上京してきたんです」

良子「え。東京に憧れるとかそういうのあるんだ?」

座敷童「ええ、座敷童界ではやはりみんな東京に憧れる人が多いです」

良子「座敷童界! そんなのあるんだ」

座敷童「でも東京の人は皆冷たいんです」

良子「人間界でも良く聞くわそれ」

座敷童「私は人間に幸福を齎す存在なのに、皆は私を見て幽霊だ怖いどっか行けとか言って霊媒師を連れてくるんです。しかもその霊媒師がインチキで、エイヤーとか適当なこと言ってもう除霊しましたって澄まし顔で去っていくんです。だから私は消えた振りをしないと可哀そうかなって思って気を遣ってストレスがめっちゃ溜まるんです。嗚呼、生きるのが辛い…」

良子「へ、へえ…。なんか分かんないけど大変なんだね」

座敷童「あなたも霊媒師を連れてきて、私をなんとかしようと思ってるクチですか?」

良子「いや、私は今日初めてあなたに気付いたからまだそこまでは考えてないんだけど」

座敷童「でも私なんかいなければ良かったって思ってるでしょう?」

良子「そりゃまあ…」

座敷童「うわーん! やっぱそうなんだ! 私なんてどうせ嫌われ者なんだ!」

良子「ちょっとちょっと、泣かないでよ!」

座敷童「どこ行っても邪魔者扱いされるんだもん。こんなんだったら生まれてきたくなかったよ。うわーん!」

良子「分かった分かった! 霊媒師なんて絶対呼ばないから! これでいいでしょ」

座敷童「……ほんと?」

良子「本当だよ。だけど私はあなたのこと良く知らないから、いろいろ教えてくれない?」

座敷童「分かった。スリーサイズは上から順番に…」

良子「ソコ興味ないから」

座敷童「じゃあ何を話す?」

良子「まずはあなたが今後どうしたいかってことを聞きたいな」

座敷童「今後?」

良子「そう。お互いこの部屋に住んでるわけだから、上手くやっていきたいじゃない?」

座敷童「うん」

良子「折角こうして会話してるんだし、友達みたいになれないかな?」

座敷童「友達?」

良子「色々お喋りしたりする仲になるの。そういうのも良いんじゃない?」

座敷童「うん、そうだね。じゃあ友達になろう」

良子「よし、じゃあそれで決まりね! あ、そうだ。一つお願いがあるんだけど」

座敷童「なに?」

良子「実は最近付き合うことになった彼氏がいて。この部屋に連れてきたいなと思ってるんだ。彼氏があなたに気付いたら怖がるかもしれないから、その時だけは隠れていてくれないかな?」

座敷童「そうなんだ。分かった、じゃあそうする」

良子「ありがとう」

そんなこんなで座敷童と仲良くなった良子は、時折お喋りしたりしながら毎日を過ごした。

お互い憧れの東京暮らしを満喫し、どんどんと季節が過ぎる。

やがて四年後――

就職が決まった良子は、とうとうその家を引っ越すことになった。

良子「今日はあなたに話があるの」

座敷童「分かってる。ここを引っ越すんでしょ?」

良子「なんだ、気付いてたんだ」

座敷童「この前彼氏が来た時、二人でその話してたでしょ。聞いちゃった」

良子「そっか。実は彼氏と同棲する予定なんだ。それで、このアパートだと狭いし、新しいところに引っ越そうってことになって」

座敷童「良子とさよならするの、やだな。寂しい」

良子「私もだよ」

座敷童「じゃあ、私も一緒に引越し先についていっていい?」

良子「え? さすがにそれは…」

座敷童「やっぱりそうだよね…私なんか一緒にいたら落ち着かないよね…」

良子「そんな寂しそうな顔しないで」

座敷童「だって…ううっ……うえっぐ……」

良子「泣かないで」

座敷童「良子がいなくなったらまた新しい人がきて、私のこと怖い嫌だどっか行けっていうもん。私また独りぼっちになっちゃうんだもん…ううっ…うっ…」

良子「…もう、仕方ないなぁ。分かった、じゃあ一緒に来て良いよ」

座敷童「え…良いの?」

良子「うん。その代わり今度は彼氏も一緒に住むから、もし彼氏があなたに気付いて怖がったら、そこでお別れしましょ。それがなければ一緒にいましょ。どう?」

座敷童「ありがとう、良子」

春が来て、良子と彼氏は新居へと引っ越した。

それにくっ付いて座敷童も引越した。

ところが、その新居には驚くべき事実があったのである。

良子「あれ…あなたはまさか、座敷童?」

座敷童(男)「そうです。僕はここに住み始めてもう2年経つ座敷童です」

良子「嘘でしょ! まさか新居にも別の座敷童がいるだなんて」

座敷童(男)「良かったら仲良くしてください」

良子「いや、それはまあ良いんだけど…実は私、前のアパートから座敷童をつれてきてるの」

座敷童(男)「え?」

良子「彼女と一緒に引っ越してきたのよ」

座敷童(男)「じゃあ僕はどうしたらいいんですか?」

良子「さあ、私は座敷童界の事情がわからないから何とも言えないけど…座敷童二人が一緒に住むっていうのは不可能なの?」

座敷童(男)「普通はないですね。それに女の子なんですよね? 僕、そんな女の子と一緒に住むなんて破廉恥なことできないです」

良子「なに照れてんのよ。とにかく一度彼女と会ってみてよ、ほら」

座敷童「はじめまして」

座敷童(男)「あっ…はじめまして」

座敷童「私、良子の部屋から引っ越してきました。東北出身なんです」

座敷童(男)「え! 僕もそうなんです。東京に憧れて上京してきたんですよ」

座敷童「うわ、私と一緒ですね。だけど東京の人って冷たくて…」

座敷童(男)「そうそう! そうなんだよ! すぐに霊媒師とか呼んでさ!」

座敷童「わかる~!!」

良子「なにこれ。すごい意気投合してるんですけど…」

座敷童「良子、ごめん。やっぱり私、この座敷童さんと二人だけで住むことにする」

良子「へ!?」

座敷童(男)「一気に惚れてしまいました。二人で新居に暮らそうと思います」

良子「マジか!!」

座敷童「今迄ありがとう良子。彼氏と幸せに暮らしてね」

座敷童(男)「結婚式には呼んでくださいね。ささやかな幸せを用意しますから」

良子「わ、わかった…」

座敷童「じゃあね、またね良子」

良子「またねー…」

こうして座敷童二人はその新居から去っていった。

良子「うーん、なんだろ…」

良子「親切心で一緒に引っ越してきたのに、なんだか最終的に私がフラれたような気分…」

良子「……ま、いっか!」

それから数年後、良子は遂に彼氏と結婚した。

将来を考え新たに一軒家を建てたところ、その家に住み始めて数日、部屋の隅に見慣れた二つの顔を見つけた。

その時には思わず笑ってこう言ったものである。

良子「おかえり!」

END