【BL】再会と説得

クラレット:
とある王国の王子。今は隣国の支配下にある国を取り戻そうと日夜奮闘している。

アレン:
行方不明の弟を探して世界中を旅している。クラレットとは元々幼なじみだが、自身の身分は低い。


ある大きな都市。城の執務室然とした部屋の中で、男性と少年が向かい合っている。

クラレット「例えば明日、君が死んだとして」

アレン「いきなり人のこと殺してんじゃねーよ、おっさん」

クラレット「私のところにはいつその知らせが来るだろうか」

アレン「なんだそれ」

クラレット「君はどこにいても目立つ存在だが、常に身分がわかるようなものを身に着けているとは言い難い」

アレン「自分が何者かなんてわざわざ言いふらすものじゃあないだろう」

クラレット「旅に共を連れることもない」

アレン「人目を忍ぶ旅にお供がいるのは、アンタら貴族だけだっつーの」

クラレット「かといって危険な連中に目をつけられるような行動を控えるわけではないし」

アレン「俺が敢(あ)えてそうしてるわけじゃねえよ。あっちが勝手に絡んでくるんだ」

クラレット「定期的に連絡を入れろと言っても、次はいつ王都へ戻ってくるのかすら知らせてくれない」

アレン「電話や郵便が安定して使えるのなんて、一部の都市だけなんだから仕方がないだろ」

クラレット「私とて暇ではないのだから、いつでも君のことを待っているわけにはいかないというのに」

アレン「待っていろとは言っていないじゃないか」

クラレット「でも、私が待っていなければ君とは何年会うことすら叶わないのかわからないじゃないか」

アレン「会えるだけマシだと思っとけよ」

クラレット「会えなかったらどうするんだ」

アレン「なに?」

クラレット「待っていたのに会えなかったら、と時々考えることがある」

アレン「……。」

クラレット「君を待っているのが怖い」

アレン「アンタ、怒ってるのかと思ったら、不安なのか」

クラレット「君のことを考えて不安にならない日などない」

アレン「俺は死なないよ」

クラレット「君のその言葉には説得力がない。なぜなら行動が伴わないからだ」

アレン「別に死のうとしているわけじゃないさ」

クラレット「今日、君が姿を見せるより先に私の元に届いたのは、赤毛のチビが不思議な力を使って暴れて宿が壊滅状態という知らせだった」

アレン「……アンタの部下は本当に優秀だな」

クラレット「あれだけ派手にやれば、町中の噂になる。部下の手を使わずとも自然に耳にも入ってくるさ」

アレン「アレはあいつらが悪いんだ。王都の物価をよく知らないからと旅人から有り金巻き上げようとするから」

クラレット「そういうときこそ私の名を使え。不正を正すことも私の役目だ」

アレン「城のてっぺんにいるやつの名前なんて、こんな小汚いガキが口にしたって信じてもらえるかよ」

クラレット「宿をつぶしたところでその手の悪党が滅びることなどない。不正は根元から断たねば意味がないんだ」

アレン「城でアンタに取り次いでもらうまでの時間を考えたら、自分でどうにかした方が手っ取り早いんだよなあ」

クラレット「君のその決断力には感服するが、そのうち取り返しのつかない事態を招くのではないかと感じるんだよ」

アレン「そのときはそのとき。死んでからならアンタにも早く会えるようになるかもしれないぜ」

クラレット「オバケになろうと君のことは愛しているが、できれば君に会うときは体温を感じたいものだね」

アレン「今だって全身が冷え切るまで門の外で待たされるけどな」

クラレット「……すまない。君と私の関係について城の者皆に理解を得るのは難しい」

アレン「別に期待してないよ」

クラレット「……君が城の門を叩いてから3秒で私と対面できるようにする方法もあるが」

アレン「嫌な予感がするから聞きたくない」

クラレット「なに、遠慮するな。私たちの関係にはっきりとした名前をつけるだけのことだ」

アレン「アンタに会える時間が増える代わりに、俺が旅に出られなくなるのはごめんだ」

クラレット「別に結婚しろとまでは言っていないさ」

アレン「アンタがそんな顔をしているときはロクなことがないからな」

クラレット「我が騎士団にきちんと籍をおけばいいだけの話だ。そうすれば私との面会にも理由ができるし、君のその旅を公式に任務としてやることも可能になる」

アレン「俺はそんな風にしてアンタの保護下に入るつもりはねえ。『貴族のお気に入り』になって自由を失うくらいなら、アンタにだって一生会えない方がマシだよ」

クラレット「……君は正直だね」

アレン「何度も言ってる。俺は目的のために生きてる。アンタに足枷をつけるような約束はできない」

クラレット「君といつもつながっていられるのなら、足枷でも手枷でも喜んではめようじゃないか」

アレン「……アンタが一番大事にするべきなのは、俺じゃなくてこの国だろ」

クラレット「……。」

アレン「俺はアンタのことが好きだよ。信じてもらえないかもしれないけど」

クラレット「君の言葉には説得力がない。なぜなら行動が伴わないからだ」

アレン「ハハハッ、アンタおねだりが上手になったな」

クラレット「君の言葉は信じにくいが、行動力だけはあるものと思っているからね」

アレン「せいぜい期待に添えるよう努力致しますよ」

アレンはクラレットの顔に手を沿え、唇を落とした。