魔王へ婿入り

アレク:
女好きの傭兵

クレイ:
アレクの友人である傭兵。射手

ローズ:
アレクの新しい恋人

魔王:
ローズの父親


アレク「クレイ、この子が俺の恋人ローズだ」

ローズ「初めまして、アナタの事はクレイから聞いているわ」

クレイ「初めまして。こいつとは腐れ縁で」

アレク「余計な事言うな! こいつは射手なんだ。俺とよく一緒に仕事してる」

ローズ「ふふっ。今度は私も一緒に仕事にしたいわ」

クレイ「ローズさんも、剣か何かをやってるの?」

ローズ「いえ、私は魔法を少し使えるの」

クレイ「そうなんだ、今度一緒に仕事をしたいね」

ローズ「ええ、ぜひ」

そのまま3人は楽しそうに話し、気づけばかなりの時間が経過していた。

ローズ「そろそろ帰るわね。あまり遅くなると親が心配するし」

アレク「ああ、またな」

ローズ「ええ」

そのまま、ローズは笑顔で手を振ってアレク達の元を去っていった。

クレイ「何だよ! あの子すげーいい子じゃん。どこで出会ったんだよ」

クレイがからかうようにアレクに言う。

アレク「前に仕事で一人で洞窟を探検したことあったじゃん? その仕事の依頼者が彼女だったんだ」

クレイ「おいおい、報酬と一緒に女もゲットかよ!」

アレク「…あの子、凄くいい子だろ? 美人だしスタイルもいいし、魔法の腕もいいし。彼女としてはいう事なしなんだ…」

クレイ「惚気なんて聞きたくねーよ!」

アレク「…でも、問題があるんだよ…」

クレイ「問題?」

アレク「彼女、魔王の娘なんだ…」

クレイ「…はあ?」

アレク「…妙に強いからおかしいとは思ったんだよ。でも、まさか魔王の娘なんて思わないじゃん!」

クレイ「え、マジなのかよ? 本当に魔王の娘なのか?」

アレク「こんなんで嘘なんかつくか!」

クレイ「マジかよ! 魔王って勇者に倒されたから一時の力はなくなったとはいえ、凄い強いんだろ! さっさと別れた方がいいって」

アレク「そうしたいのは山々なんだけどな…。彼女に父親に俺を紹介したいって言われた」

クレイ「はあ?」

アレク「真剣な交際だから、父親に俺を認めてほしいからって」

クレイ「もう逃げ場なしじゃん!」

アレク「そこでだ! 彼女の父親に会う時、お前もついてきてくれないか?」

クレイ「はあ? 俺関係ないじゃん!」

アレク「関係ある! 親友だろ! 心配するな、彼女からお前同行の許可はとったから」

クレイ「勝手に取ってんじゃねーよ! 俺は絶対行かないからな!」

アレク「頼む! 俺が死んでもいいのか?」

クレイ「自業自得だろ!」

最初は嫌がっていたクレイだが、アレクの必死さに結局同行をOKしてしまったのでした。

ローズ「ここが私の家よ」

アレク「これは…。立派な家だね」

ローズの家は魔王の城らしく、とても大きく立派な門でした。

ローズ「さあ、こっちよ。父もアレク達に会えるの楽しみにしてるのよ」

アレク「そうなんだ、俺も楽しみだよ、ハハッ」

その乾いた笑いは、アレクの内心をよく表しているようだった。

ローズ「ここよ」

ローズがとても大きな扉を開けると、そこには明らかに大きな男と、その横には綺麗な女性が並んで座っていた。

クレイ「……!」

思わずビビるアレクとクレイ。

ローズ「お父様、連れてきたわ。こっちが恋人のアレクでその隣が彼の友人のクレイよ」

アレク「…初めまして、お父様」

クレイ「…初めまして」

魔王は大きな目で、アレクを睨みつける。

アレク「…!」

それに明らかにビビるアレク。

ローズ「彼とは結婚を前提とした交際をしているのよ」

クレイには結婚を前提は初耳だったが、アレクの青ざめた表情を見て何も言うのはやめた。

魔王「…ローズよ。私は、人間の男との結婚を認めないとは言わなかったか?」

ローズ「確かに言ってたわ! でも、私は彼を愛しているの!」

魔王「…認めん! か弱い人間の男を、お前の結婚相手になどな!」

アレク「…あの、誰も結婚なんて言ってな…」

ローズ「じゃあどうすれば認めてくれるの?」

アレクの勇気を出した一言は、あっさりとスルーされた。

魔王「そこまで言うのなら、我が配下のキッドに勝てれば、お前の婿として認めてやる」

ローズ「本当、お父様! やったわ、アレク。キッドに勝てば、結婚を認めてもらえるって」

ただの親への紹介から気づけば結婚許可まで進んでいた話。そこにはもう、アレクの意思はなかった。

今更「結婚話は初耳です」なんて言える度胸はアレクにはなく、なくなくキッドと戦う事になったのだった。

カキーン!

キッドの放った鋭い一突きで、アレクの持っていた剣は大きく飛ばされてしまった。

魔王「勝負あったな。約束通り、結婚の話はなしだ」

ショックを受けたように崩れ落ちるアレク。肩で息をしているアレクの顔が笑っているように見えるのはクレイの気のせいではない。

魔王「お前には私が相応しい男を探してやる。こんなか弱い人間なんてすぐに忘れるんだな」

アレク「…ごめんよローズ、俺が弱いばかりに。嫌だけど、素直に身を引く…」

ローズ「待ってお父様!」

立ち去ろうとする魔王を、ローズが止めた。

魔王「なんだ、我が娘よ。話はもう終わっただろう」

ローズ「私は真剣にアレクを愛しているの! 彼以外と結婚なんて考えられないわ!」

アレク「いや、まあ、決まったことだし…」

ローズ「アレクと一緒になれないなら、私は魔王の娘と言う地位を捨てるわ!」

徹底スルーされるアレクに、クレイは憐みの目で見る。

魔王「本気なのか、娘よ! こんなか弱い男の為に、魔王の娘を捨てると!」

ローズ「ええ、捨てるわ! 彼と一緒になれないのなら、駆け落ちするわ!」

アレク「ちょ、待て…」

魔王「…そこまでこの男を愛しているのか…。こんなか弱い男を…」

ローズ「ええ、愛しているわ! この世の何よりも!」

ローズの母「あなた、もういいのではないですか。ここまで愛し合っている二人を、ムリヤリ引き裂くなんて、よくないですわ」

それまで黙っていたローズの母親が、夫を窘める。

それに明らかに顔色が変わる魔王。

ローズ「お母さま!」

魔王「…わかった! お前たちの結婚を認めよう!」

ローズ「お父様!」

魔王「ただし、結婚するならあの男もこの城で住むのだぞ! それが条件だ」

ローズ「ありがとうお父様! やったわ、アレク。私達の結婚が認められたわ」

感激のあまりアレクに抱き着くローズ。そのアレクの顔が青ざめたまま固まっているのは、絶対にクレイの気のせいではない。

勝手に結婚が決まり、勝手に魔王の城に住むことになったアレク。

そんな彼に、クレイはボソッと一言

クレイ「まあ、頑張れよ」

その一言でアレクが涙を流したその意味が、結婚が嬉しいからじゃないことを知っていたのは、クレイだけだった。