パンクとアルバート

アルバート:
イギリスの田舎に住む小学生。母方の祖母の死をきっかけに祖母の住んでいた家に引っ越してきた。

母さん:
アルバートの母。イギリスの田舎出身。

パンク:
ホブゴブリンの男の子。気難しくて照れ屋で人見知り。お掃除好き。


はじめて新しく住むおうちを見たとき、アルバートはとても大きい家だなと思いました。

入口も窓も屋根も何もかもが今まで住んできた家よりも大きくて、なんとアルバートの部屋もあるのです。

アルバートは小学一年生。今までお父さんとお母さんと一緒の部屋で寝ていたので、部屋で一人でベッドに入るとなんだか寂しくてなかなか寝付けません。

ふとんをかぶって目をつぶるとどこからかさっさっとほうきでおそうじするような音が聞こえてきます。

目を開けて窓の外を見ると真っ暗で、こんな時間にお母さんがおそうじをしているわけがありません。

「いったい何の音だろう」とアルバートは不思議に思って、廊下に出てみることにしました。

暗い廊下の先に明るい光が見えます。

「あっちは台所のはずだ」

アルバートはゆっくりと台所まで歩いていきました。

そっと扉を開けて、中を覗いてみると、なんと知らない男の子がほうきを使って床をお掃除しています。

アルバートは「誰だろう」と思って、こっそり台所に入りました。

男の子はアルバートに気づかず、お掃除を続けます。

アルバートがテーブルの影から男の子を見ると、ほうきがふたつ、さっさとごみを集めているのが見えました。

アルバートは「男の子は一人なのに」と不思議に思って、テーブルの下からほうきを手でつかみました。

そうしたら、男の子は「わっ」と大きな声で驚きました。

「誰だ! 僕のしっぽをつかむのは?」男の子が聞いてきます。

そう、アルバートがつかんだほうきは男の子のしっぽだったのです。

ほうきのように柔らかくて茶色くて長いしっぽは男の子のおしりにつながっていました。

「アルバートだよ」アルバートはテーブルの下に隠れたまま言いました。

「アルバート? 知らない名前だ。どこにいる?」男の子はアルバートを探します。

アルバートはしっぽをつかんだまま男の子についていきます。

男の子が冷蔵庫を開けて「アルバート?」と言いました。

「僕はそこにはいないよ」アルバートは言いました。

「後ろから聞こえたぞ」男の子は振り向きました。

アルバートはしっぽをつかんだまま男の子の後ろに回って、冷蔵庫の扉を閉めました。

男の子はテーブルの下を見ます。「アルバート、ここかい?」

「そこには僕はいないよ」アルバートは答えます。

男の子が鍋の中を覗いて「アルバート、出ておいで」と言ってもアルバートはそこにはいません。

男の子は台所中を歩き回って、最後に鏡の前にやってきました。

男の子が鏡を見ると、自分のしっぽをつかんだアルバートが映っていました。

「やあ、僕がアルバートだよ。君の名前は?」とアルバートはしっぽをつかむのをやめて、男の子に声をかけます。

そうしたら「わっ!」と男の子は驚いて、とっても早く台所から逃げ出してしまいました。

「いったいだれだったんだろう」

そう思ったアルバートは次の日、お母さんに聞いてみました。

「夜に台所をそうじしているしっぽの生えた男の子に会ったんだよ」

アルバートが言うと、お母さんは「それはパンクだよ。パンクはお掃除大好きの妖精で、とっても恥ずかしがり屋なんだ」と教えてくれました。

「パンクと友達になれるかな?」とアルバートが言うと、台所の隅にあったほうきがぱたんと倒れました。

「きっとなれるわ」とおかあさんは言いました。

アルバートがほうきの方を見ると、ほうきがふたつあって動いているように見えて、パンクが「うん」と言っているのだとわかりました。