トイレでの災難

仁志:
男性 主人公

駅員:
エフ駅の駅員


仁志「はぁ~スッキリした。なんとか間に合った。どうも朝から腹の調子が悪いな。まあ、とにかくようやくスッキリしたことだし、家に帰るとするか……あ、あれ? や、やばい。紙がない。マジか。どっかに予備のトイレットペーパーはないのか。くそっ、見当たらねえ。まったく駅のトイレは気が利かねえな。予備の紙くらい用意しとけっつうの」

仁志「となるとどうしよう……なんか紙の代わりになるようなもの持ってなかったっけ? とはいえ俺財布しか持ってねえや。ハンカチとティッシュくらい携帯しとくべきだった。財布の中に紙の代わりになるようなものは……お札、さすがにこれはダメだろう。あと他にはレシートが二枚、これで何とかなるか?」

仁志「ってなるわけねえ~! レシート二枚じゃどうにもならねえよ。しかもお茶とガムしか買ってねえからレシート短すぎじゃん。他にはもう何もないな。やばい、トイレットペーパーの代わりになるようなものは今の俺にはない。ど、どうしよう、何か他に手は……」

仁志「誰かがトイレに来るまで待つか。誰か来てくれねえかな。そもそもこの駅降りる人自体少ないし、ましてやこんな端っこにある汚いトイレ、滅多に利用する奴いないよな。それこそさっきまでの俺のようによっぽど切羽詰まった奴でもないと。はぁ~誰か来ないかな……」

仁志「くそ~、やっぱ誰も来ねえ。こうなったら何か他に手を考えるしかねえ。そうだ、携帯電話で誰かに助けを求めるか! 今すぐここのトイレまで駆けつけてくれるような人のいい奴いたっけ? あ、哲也なら来てくれるかもしんねえ。よし、哲也に電話してみるか」

仁志「あ、もしもし哲也? 俺仁志だよ。あのさ、ちょっと頼みがあって聞いてくれるか? 今から時間ある? えっ暇だって! それは良かった。実は俺今エフ駅のトイレにいるんだけど、実はちょっと困っててさ。そうなんだよ。紙がないんだよ。それでエフ駅のトイレまでトイレットペーパーを持って来てくれたらありがたいんだけど……」

仁志「え、そんなところにいるの? 哲也今家にいるんじゃないのかよ。そこからここまで来ようと思ったら一時間くらいかかるよな。さすがにそんなには待てねえな。仕方ない、別の奴に電話してみるよ。悪かったな哲也、じゃまた今度な。うん、今度暇なとき飯でも食いに行こうな。じゃあな」

仁志「哲也はダメか。他に誰かいたっけ?う~ん、この駅からそう離れていない場所にいそうな奴なんてそうそういないぞ。っとこんなことやってる間にもやっぱ誰もトイレには来ねえ。よし、おふくろに電話してみるか」

仁志「あ、もしもしおふくろ? オレオレ、今エフ駅にいるんだけどさ。今からここに来れない? もし来てくれたらおふくろに飯でもおごってやるんだけど。え? もう飯食ったって? だったら洋服でもプレゼントするよ。だからとにかくエフ駅まで来てくれよ、頼むからさ。いや実は今トイレにいるんだけど、拭く紙がないんだよ。そう、俺困ってんのよ。おふくろと俺は家族だろ? おふくろにとっちゃ俺は可愛い可愛い息子ってわけだよ。そんな可愛い息子が困ってんだから、な、頼むからさ」

仁志「え? どこに可愛い息子がいるって? ここにいるじゃないか。いや確かに家の手伝いはあまりしてあげてないけど、今そんなこと言わなくたっていいだろ。何だよ、今度からは自分の部屋の掃除くらい自分でするからさ、だから今日のところはここまでトイレットペーパーを持ってきてくれよ。な? 俺の優しいおふくろ。え? そうなの? これから用事があるって? 何だよ、それ。それなら早く言ってくれよ。わかったよ、用事があるなら仕方ないな。じゃ別の手を考えるよ。じゃあ切るよ」

仁志「困った、おふくろもダメとなるとこれはいよいよやばい。もうこうなったら拭かずにトイレを出るか……いやいやそれはダメだ。さすがにそれは男の沽券にかかわる。なんかないか……このトイレのどこかに紙の代わりになるようなもの? ん? これはっ! 張り紙じゃないか! これだ、この張り紙ならけっこう大きいし、いけるかもしれない! よし、勝手に張り紙を剥がすのも気が引けるが、そもそもトイレットペーパーを用意していないこの駅が悪いんだ。この張り紙を使わせてもらおう」

ビリッ!

仁志「ふぅ、これでヨシッと。ではさっそく……うん、良い感じだ。最初からこの張り紙を使っておけば良かったんだ。もっと前に気づいておけばあちこち電話しなくても済んだのにな。まぁ、でも何とか助かった。これで家に帰れるぞ! さてとあとはこれを流して」

ジャー!

仁志「ん? 何だ何だ、や、やばい、水が溢れ出してきた。う、うわぁっ! 便座から水がぁああ! なぜだぁ、俺が何をしたって言うんだぁぁああ!」

駅員「お客様、お客様どうかなされましたか? 何か悲鳴が聞こえたのですが? お客様?」

仁志「いや、その、トイレをしていたら水が溢れてきてしまって。この通り床がびしょ濡れに……」

駅員「あ? この紙は、ここにあった張り紙じゃないですか。お客様、困りますなぁ、トイレにこんな物を流されちゃ、そりゃ詰まりますよ。」

仁志「……すいません」

駅員「この張り紙にも書いてあったでしょ『トイレにトイレットペーパー以外の物を流さないで下さい』って」