あなたは幸せですか?

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ソナタ「あなたは幸せですか?」

男1「はい? いえいえ別に幸せじゃありませんね。まぁ、だからといって不幸かというとまた違いますが。でも幸せではないですね」

ソナタ「そうですか、ありがとうございます」

男1「いえいえ」

・・・

ソナタ「そこのお嬢さん、あなたは幸せですか?」

女1「はっ? 誰よ、あなた?」

ソナタ「私ですか? 私はソナタです」

女1「そんなこと知らないわよ。なんでアンタなんかに幸せかどうか話さないといけないのよ?」

ソナタ「答えてはくれないのですか?」

女1「答えるわけないでしょ! どっか行きなさいよ!」

ソナタ「すみません。失礼しました」

・・・

ソナタ「そこのあなた、今幸せですか?」

男2「私に聞いていますか?」

ソナタ「はい、あなたに聞いています」

男2「うーん、難しいところですね。幸せの定義は人によって違いますからね」

ソナタ「あなたの定義で構いませんよ」

男2「そうですか? ……うーん、普通ですよ。幸せでは決してありませんね。平々凡々な退屈な毎日を送っています。いずれ幸せを手に掴みたいと思っていますが、なかなかうまくいかないんですよね」

ソナタ「ということは不幸だということですか?」

男2「まぁ、そんなところですかね」

ソナタ「そうですか。ありがとうございました」

男2「いえ、お礼には及びませんよ。では失礼します」

・・・

ソナタ「あなたは今幸せですか?」

女2「幸せかどうかですか? うーん、どちらだと思います?」

ソナタ「今までに聞いた人はみんな幸せではないと答えました。あなたもそのタイプですか?」

女2「うーん、どうでしょう? 幸せかどうかなんて考えたことありませんから」

ソナタ「おや、そうなのですか?」

女2「毎日を生きることに精一杯で、幸せか不幸か考える時間なんてないですよ。それにそんなこと考えるぐらいなら、今日の夕飯どうしようって考えるほうがよっぽど建設的だと思います」

ソナタ「なるほど。そういうものですか」

女2「あなたが求める答えではありませんでしたか?」

ソナタ「いえ、そういうわけでは。ただ人はみな幸か不幸かを考えている生き物だと思っていましたから。そうではないあなたの存在に少し驚いただけです」

女2「私だけじゃないと思いますよ? 幸せか不幸かを考えたことがない人は。多分たくさんいると思います。そんな話したことありませんけど。間違ってはないと思いますよ」

ソナタ「その情報はありがたいですね。もう少し考えてみます」

女2「それではごきげんよう」

ソナタ「はい」

・・・

ソナタ「うーん。なかなかいないなぁ。幸せって答える人。地球には幸せはないのかもしれないですね」

ソナタは地球人ではない。他の星からやってきたいわゆる宇宙人である。故郷の星は滅んだ。ソナタは最後の生き残りである。自らの不幸を嘆いたソナタは幸せを求めて、数々の星を渡り歩いた。

幸せがあるかを確かめるために星に暮らす人々に質問をして。そうやってソナタは第二の故郷に相応しい場所を探している。でもみんな胸を張って幸せだとは言わない。ソナタは幸せだと言
う生物にいまだ会っていない。心に暗雲が立ち込める。どこにも幸せはないのか。

ソナタ「いや、まだこの星に来たばかりです。諦めるには少し早いですね」

・・・

ソナタ「あなた方は今幸せですか?」

カップル「はっ?」

ソナタ「幸せかどうか知りたいんですよ」

カップル「何だコイツ、早く行こうぜ」

ソナタ「待ってください。幸せかどうか答えてくれるだけでいいんです」

カップル「……」

ソナタ「うーん。話を聞いてくれる人が見つからない。これじゃこの星に幸せがあるかどうか分からない。どうしたものか」

・・・

ソナタ「ねぇ、ちょっと話を。そこのあなた今幸せ。あっ、お嬢さん、僕の話を聞いてください」

女3「……」

ソナタ「無視しないでくださいよ」

女3「うるさい。あなた誰よ。しつこいわね。警察呼ぶわよ!」

ソナタ「えっ、えっ、あの……すみません」

・・・

ソナタ「はぁはぁ。この星は話しかけるだけで、警察を呼ばれてしまうのか。うーん、困ったぞ。この星には幸せはないのかもしれない。もう、いいや、別の星に行こう」

ソナタは地球にやってくるのに使った宇宙船に乗り込んだ。静かに宇宙船は飛び立つ。第二の故郷を求めて。新たなる星を目指す。

・・・

地球の人々「それにしても変な男の人だったなぁ。知らない人に自分のプライベートを話すわけないのに。誰が幸せかって聞かれて、はい、幸せですなんて本音を言うわけないのに。幸せでも謙遜して、そうでもないなんて話すのはそう珍しいことじゃないよ」

・・・

ソナタは知らない。宇宙人である彼には分かるはずもない。みんながみんな本当のことを話すわけがない。でも彼は、彼の星には嘘をつく概念が存在しなかった。ゆえにソナタは真実を見極めることが出来ず、『幸せがあったかもしれない星』を素通りしてしまった。

・・・

ソナタ「あなたは幸せですか?」

宇宙人「シアワセ、シアワセって何? おいしい?」

・・・

彼は今日もまた幸せを追い求めている。

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