おかしな王様

この世界のどこかに甘いものが大好きで、お菓子ばかり食べている王様がいました。あまりにお菓子ばかり食べているので、人々からはスイート王と呼ばれ、もう今では誰も王様のことを本当の名前で呼ぶ者はいません。

さて、今日も王様はチョコレートやクッキー、アイスクリームなど、お菓子ばかり食べています。

「モグモグ、やっぱりチョコレートは最高だなぁ。それにこのクッキー、サクサク歯ごたえが良くってほっぺが落ちそうなくらい美味しいぞ。モグモグモグ……」

王様の目の前にはついさっきまでずらりとお菓子が並んでいましたが、あっという間に食べ尽くしてしまいます。

「モグモグ、あぁ、美味しかった。お腹がいっぱいになったぞ。ふぅ、それでは寝るとするか」

そう言って王様はゴロリと横になります。

それを見ていた王様の家来たちは、顔をしかめます。

「王様王様、甘いものを食べた後はしっかり歯を磨かないと虫歯になってしまいますよ」

「王様、お菓子ばかり食べていないで野菜も食べないと、病気になってしまいますよ」

「王様、お菓子ばかり食べていると、太って動けなくなってしまいますよ」

家来たちは口々にそう言って王様に注意をするのですが、王様はちっとも言うことを聞いてくれません。

「うるさいなぁ、ワシは王様だぞ、この国で一番偉いんだぞ。お前たち家来はワシのために世界中のお菓子を集めてくればいいのじゃ!」

王様はいつでもそんなことを言って、偉そうにふんぞり返っています。

「王様、しかしこのままでは本当に病気になってしまいます。お菓子ばかりではなく、どうか他の食べ物もバランス良く食べてください」

家来は王様に訴えかけます。

でもやっぱり王様は言うことを聞いてくれないのです。それどころかいつの間にかグーグーといびきをかいて眠ってしまいました。

「あぁ、あの王様には困ったものだなぁ。いくら新鮮な野菜で美味しい料理を作っても、まったく食べてくれない」

「本当に困ったものですねぇ、毎日毎日甘いものばかり食べて。王様のお腹なんて今にもはち切れそうなくらい、太ってしまっているわ」

「やれやれ、実に困ったものだ……」

家来たちは口々にそんなことを言って、ため息をついています。

・・・

「あぁ、今日は良い天気だなぁ。よし、今日は隣の国にある美味しいと噂のケーキを食べに行こう!」

ある日、王様は以前からずっと気になっていた隣国のケーキを食べに行くことに決めたようです。

「おい、家来たちよ、ワシはちょっと出かけてくる」

「王様、どちらへ行かれるのですか? 一人で出かけるのは危険ですから私もお供します」

「着いてこなくても良い。ワシは一人で出かけたいのじゃ。着いてきたら承知しないぞ!」

そう言って王様は家来の心配をよそに、たった一人で出かけてしまいました。

「ふぅ、家来たちに着いてこられては甘いものも好きに食べられぬからなぁ。歯を磨けだとか野菜も食べろだとかうるさいったらない。美味しいものを食べに出掛けるのは一人に限るのじゃ」

王様は大きなお腹を揺らしつつも足取り軽く、隣国への道をたった一人で歩いて行きます。

「はぁ、疲れたなぁ。隣の国はまだ先かぁ。こんなことなら馬に乗ってくれば良かったなぁ。しかしワシは一人で馬には乗れないし、そうなると家来を連れて行かなきゃならぬ。あんなうるさい家来を連れて行くくらいなら歩いてでも一人で出かけたほうがまだマシじゃ」

王様はぶつぶつとそんなことを言いながら、隣国を目指します。

しかし行けども行けども隣国は見えてきません。それどころか辺りは薄暗くなってきました。

「お腹が減ったなぁ。それに暗くなってきたぞ。どうしよう、お腹が減ってもう歩けそうにない……」

王様はとうとうその場にへたり込んでしまいました。

そして十分が経ち、ニ十分が経ち、一時間経っても王様はその場に座り込んだままです。

グゥ~、王様の大きなお腹からそんな音が聞こえてきます。

「あぁ、このままではお腹が減り過ぎて倒れてしまう。いったいワシはどうしたらいいんじゃ。こんなことになるなら家来を連れてくれば良かった……」

王様はだんだん心細くなってきました。その間にもグゥ~とお腹は鳴ります。

それからまた一時間が過ぎ、いよいよ王様は心細くなってきて、今にも泣きだしそうな顔をしています。

――っとそんな時、どこからともなく馬車の音が。

「おやまぁ、こんなところに人がうずくまっている。あの、いったいどうなされたのですか?」

馬車から降りてきた人がそう言って、王様に声をかけます。

「おぉ、た、助かった。ワシはあっちの国から来た王様なんじゃが、お腹が減り過ぎて一歩も動けそうにないのです。何か食べ物を分けてはもらえないだろうか」

王様は必死でそう言います。

すると相手は

「なんだ、そんなことでしたか。私はここから二つ先の国へこれから商売をしに行く商売人なのです。畑で育てた自慢の新鮮な野菜を売りにね。この野菜で良ければ差し上げましょう。どうぞ、どれもこれも私が丹精込めて育てた野菜です。とっても新鮮でおいしいですよ」

王様は大嫌いな野菜を前にして一瞬迷いましたが、何しろお腹が減って仕方がありません。

恐る恐る野菜を口に運びました。

「な、なんじゃこれは! とってもジューシーで、おまけに甘い。ワシが普段食べているチョコレートよりも甘いくらいだ!」

「それは私が育てた大根です。とっても甘くておいしいでしょう。なんてったって穫れたてなんですからね」

「大根がこんなにおいしかったなんて。どれどれ、他の野菜もみんな甘くてとってもおいしいぞ!」

そう言って王様は野菜をパクパク。

こうして王様は国に帰り、好き嫌いせずなんでも食べるようになったのでした。