猫のジョージと素敵な仲間たち

ジョージ:
オスの猫。

マリン:
メスの猫。

その他ジョージの仲間たちの猫多数


昔々ある国に、どうしても人間になりたい一匹の黒猫、ジョージがいました。

「あ~あ、どうして僕はこんな真っ黒な猫なんだろう。いいな、人間は。大きくて賢くて楽しそうで。僕も人間だったらなぁ……」

そこで黒猫のジョージは人間に近づくため、毎日来る日も来る日も鏡を見ては頭を悩ませます。

「う~む、この真っ黒な見た目がダメなんだよなぁ。よし、人間のように白くしてみよう」

そうしてジョージは夜になるとこっそりパン屋さんに忍び込み、パン屋さんにあった小麦粉を全身に塗りたくりました。

でもまだまだ人間のようにはなれません。

「う~む、このピンと伸びたヒゲがダメなのかもしれない。よし、このヒゲを取ってしまおう」

ジョージは自分の鋭い爪でヒゲを取ってしまいました。

それでも人間のようにはなれません。

「う~む、この三角の耳がダメなのかなぁ。よし、耳を隠してしまおう」

ジョージはその日の夜、こっそり帽子屋さんに忍び込み、そこにあった青い帽子を頭にすっぽり被りました。

やっぱり人間のようにはなれません。

「う~む、この全身を覆っている毛が邪魔なのかもしれないなぁ。でも、剃っちゃったら風邪ひくしなぁ。よし、この毛も隠してしまおう」

ジョージは夜になるとこっそり洋服屋さんに忍び込み、自分の体にぴったりと合った子供用の洋服を着たのです。

少しは人間に近づいてきたのでしょうか。

「う~む、何かが違うなぁ。この鋭い爪があるからダメなのかなぁ。よし、鋭い爪を切ってしまおう」

ジョージは公園にあった石を使って、爪を研ぐことにしたのです。

これで人間のようになれたのでしょうか。

「う~む、どう見たって人間には見えないなぁ。やっぱり僕は人間にはなれないのかなぁ。悔しいなぁ……」

ジョージは人間になれないことにがっかりしながら、とぼとぼと町を歩いています。すると仲間の猫、マリンに出会いました。

「あら、ジョージ、なんて恰好なの! 変な帽子を被っておかしな服を着て、おまけにきれいな真っ黒の毛が白く汚れてるじゃないの!」

「うるさいやい! 僕のどこが変だって言うんだよぅ」

ジョージはちょっぴり怒りながら、また町をとぼとぼと歩いていきます。すると今度は別の猫に出会いました。

「何だい、ジョージその恰好は? 何だかおかしいと思ったら、ヒゲがないじゃないか! おまけに爪はどこにいったんだい? 鋭い爪がないと高いところだって登れないだろぅ?」

そんなことを言われたジョージはさらに怒り出します。

「うるさいなぁ、爪なんかなくたってヒゲなんかなくたって別にいいじゃないか! 放っておいてくれよ」

そう言うとジョージはまたまた町をとぼとぼと歩いていくのです。

肩を落とし、とぼとぼと歩く猫のジョージは、他の猫たちの注目の的です。なにしろ一匹だけ服を着てみんなとは違う恰好をしているのですから。

「やいジョージ、そのおかしな恰好をいったいいつになったらやめるのさ」

「ねえ、ジョージ、あなたったらとってもおかしな恰好よ」

「おいジョージ、そんな不思議な恰好をして恥ずかしくないのかい?」

仲間の猫たちはみんながそう言って、ジョージの恰好を不思議がります。

でもジョージはその恰好をやめませんでした。だって帽子を脱いだって服を脱いだってもう元には戻れません。ピンと張ったヒゲもないし、鋭い爪だってもうないのです。おまけに自慢だった真っ黒の毛並みが今では黒と白のまだらになってしまい、どこか薄汚れて見えてしまいます。

それからというもの、ジョージは猫たちの仲間にも入れてもらえず、人間にもなれず、一人ぼっちになってしまいました。

「え~んえ~ん」

あんまり悲しくてジョージはずっと泣いてばかりです。来る日も来る日も泣いてばかりいたため、その涙で白く汚れていた毛はすべて流れ落ちてしまい、いつの間にかヒゲも爪も伸びました。あとは帽子と服さえ脱げば立派な猫のジョージです。

でもジョージは帽子と服を脱ぎません。なぜならジョージは人間になりたかったのですから。

「え~んえ~ん」

今日も町中にジョージの鳴き声が響き渡ります。それを聞いた仲間の猫たちは、とても悲しくなってきました。僕たちはジョージになんて悪いことをしてしまったんだ、みんなが自分たちの行いを反省したのです。

そうなったらもう自分たちがしなければいけないことは一つしかありません。泣いているジョージの元へ仲間たちはみんなが不思議な恰好をして謝りに行ったのでした。

『ジョージごめんね。僕たちが悪かったよ。いくら服を着てたって爪が短くたってジョージはジョージなのにね。また僕たちとお友達になってくれるかい?』

それを聞いたジョージはみんなのほうを向き、泣くのを止めました。いや、それどころかお腹を抱えて笑っているではありませんか。

「あっはっはっは、何だいその恰好は。みんな揃いも揃ってなんて不思議な恰好をしてるのさ。あっはっは、僕はちっとも気にしてないよ。今までもこれからもずっと僕たちは友達さ」

仲間の猫たちは自分たちも不思議な恰好をすることで、これ以上ジョージを傷つけまいとしたようですが、そのおかげでジョージはすっかり泣き止んでくれたようです。

それからというもの猫のジョージが暮らす国には、不思議な恰好をして楽しそうにしている猫たちがたくさん見られるようになったのです。

もうジョージは人間になりたいなんて思っていません。だってジョージには素敵な仲間がたくさんいるのですからね。