【BL】剣と魔法の世界なら

放課後の学校から帰宅するおさななじみの二人。

ユウスケがカバンからゲームソフトを取り出す。

ユウスケ「これ返しとく! ありがとなー。おもしろかった!」

リョウイチ「ずいぶん時間がかかったな。RPGとはいえそんなに難しかったか?」

ユウスケ「いや、そうじゃないんだけど」

リョウイチ「なに?」

ユウスケ「俺、RPGはすみずみまで楽しむタイプでして」

リョウイチ「村人との会話まで全部聞くタイプの人間か」

ユウスケ「その通り。なんかおもしろいじゃん」

リョウイチ「意外な情報を聞けたりするしな」

ユウスケ「そうそう。あれっおまえもそういうタイプだっけ?」

リョウイチ「全然。最短ルートでクリアしたい」

ユウスケ「……あ、そう」

リョウイチ「おまえはファンタジーが好きだな」

ユウスケ「あーそうかも。もっとリアルなやつだったらこんなにやりこまないかもね」

リョウイチ「世界観が好きなのか」

ユウスケ「うん。もし、ここが剣と魔法の世界なら、間違いなく俺は勇者だしな」

リョウイチ「すごい自信だな相変わらず」

ユウスケ「どうして?」

リョウイチ「ファンタジー世界の勇者と言えば主役だろ。どうしてそんなことが言い切れる?」

ユウスケ「この溢れんばかりのカリスマ性、村娘にしとくのは惜しかろう」

リョウイチ「おまえにあるのは、カリスマじゃなくて中2感だけ」

ユウスケ「中2病の心を忘れない俺ならば、難しい呪文とて覚えられるに違いない」

リョウイチ「おまえのそういうポジティブなところは嫌いじゃないが、万年赤点に勇者が務まるとは思えんな」

ユウスケ「おまえはそんな頭でっかちだからダメなんだ。勇者に必要なものといえばー! 一に勇気! 二に勇気! そして三に勇気だ!」

リョウイチ「確かにおまえは勇気のある男だよ」

ユウスケ「そうだろ!」

リョウイチ「追試で居眠りするやつなんて見たことねえもん」

ユウスケ「いや、あれはさ」

リョウイチ「鬼の佐藤が魔王の顔になってたもんな」

ユウスケ「佐藤先生が魔王だったら俺が敵う気はしない……」

リョウイチ「情けない勇者だな」

ユウスケ「あの後どんだけしぼられたと思ってんだよ」

リョウイチ「勇者にも知恵は必要なのでは?」

ユウスケ「そうかなあ……」

リョウイチ「例えば計算のできない勇者がいたとして」

ユウスケ「うん」

リョウイチ「まず金欠で死ぬだろ」

ユウスケ「うっ」

リョウイチ「あの世界の勇者の金稼ぎの方法なんて、モンスターを倒してお金を奪うのが基本だろう」

ユウスケ「そうだな」

リョウイチ「おまえが勇者だったら、倒した側から散財して宿に泊まる金すらなくなるな」

ユウスケ「の、野宿でいいよう」

リョウイチ「食べ物はどうする」

ユウスケ「魚でも釣ればいいじゃん」

リョウイチ「生物にも興味がないくせに?」

ユウスケ「生態を知らなくとも食べることはできるだろ」

リョウイチ「ハイ、食べた魚の毒にあたって死にました」

ユウスケ「ううっ」

リョウイチ「バカは哀しいな」

ユウスケ「なんだよう、バカには勇者ができないって言うのかよう」

リョウイチ「まあ落ち着けよ、勇者には仲間がいるだろ」

ユウスケ「あっそうか! 賢者とか魔法使いとかな! な~んだそれじゃあ俺でも生きていけるじゃん!」

リョウイチ「そいつらにおまえと仲間になって得があるのならな」

ユウスケ「……泣きたい」

リョウイチ「ハハハ、おまえおもしろいな」

ユウスケ「なんだよ、おまえは考えたことないわけ? ファンタジー世界に転生したら、とか」

リョウイチ「まあ、そんなアホな妄想はしないな」

ユウスケ「これだからまじめくんは嫌」

リョウイチ「バカよりはマシさ」

ユウスケ「もっと人生楽しく生きようぜぇ」

リョウイチ「そうだな、もしもおまえが勇者なら、俺は間違いなく魔法使いだ」

ユウスケ「へえ、おまえに魔法を使いたいなんて望みがあるとは知らなかった」

リョウイチ「魔法は目的じゃないよ。ただの手段だ」

ユウスケ「手段?」

リョウイチ「そう。俺がやりたいのは、勇者のおまえが進む道を支える役目」

ユウスケ「そうじゃん、おまえが仲間になってくれればいいんじゃん」

リョウイチ「それを思いつかないからおまえはバカだというんだよ」

ユウスケ「でもそれじゃあ、今と少しも変わらないよな」

リョウイチ「それでいいんだよ、俺なんて」

ユウスケ「おまえだって主役になってみたいとは思わないの?」

リョウイチ「別に考えたこともない」

ユウスケ「なんでだよお。男だろー?」

リョウイチ「だっておまえの恋愛ドラマの主役は俺だろ? うぬぼれじゃないと思うんだけど」

ユウスケ「……おまえってそういうところあるよなあ。本当は自信家の主役気質だってこと、忘れてた」

リョウイチ「違っていた? そうか、俺の勘も衰えたものだな」

ユウスケ「全然違う。俺のドラマのヒーローなんて俺自身に決まってるだろ」

リョウイチ「それは残念」

ユウスケ「お前にあげられるのなんて、せいぜいヒロインだけだよ」

真っ赤になってあさっての方向を向くユウスケ。

リョウイチ「望むところだ」

リョウイチはにやりと笑って応えた。