【BL】魔王さんのパン屋さん

魔王さん(30歳 男):
ファンタジックな世界に召喚された、あちらの世界では「魔山(まやま)」という名前の元人間。
なんやかんやで魔王になったが世界を征服できる程のありあまる力をパンを作る事に全力で注いでいる。

勇者さん(20歳 男):
ファンタジックな世界の勇者。
勇者の家系に生まれ自分も魔王を倒して伝説の勇者となるはずが、肝心の魔王はパン屋さんという事でがっくり。
しかし魔王に戦いを挑もうとパン屋に通い詰めている内に魔王さんを好きになってしまった。本人は自覚していない。

家来1(推定500歳 男):
魔王さんの家来であり魔王さんをファンタジックな世界に召喚した。
召喚したものの一向に世界征服しない魔王さんにやきもきしつつも根が優しい子なのでパン屋さんを手伝っている。


バタン!

勇者「おい魔王! 今日こそ俺と勝負しろ!」

家来1「いらっしゃいませお客様ー、ドアは静かにあけてくださーい」

他の客「じろじろ」

勇者「う、すまん。気を付ける」こそこそ

客1「すみません、これと、このパンと、これもください」

家来1「はーい、ありがとうございます。合計で1200Gでございまーす。次のお客様どうぞー」

勇者「えーと、あ、これください」

家来1「合計で540Gですー。あれ、勇者さん今日もうぐいすパンですか。他のも食べてくださいよ」

勇者「1000Gでお願いします。いいじゃん別に。俺このパンが一番好きなんだよ」

家来1「はい、1000Gお預かりしますー。460Gのお返しでーす。あ、魔王様は奥ですー」

勇者「どうも」

・・・

魔王「ふう、もう焼き上がったかなー?」

魔王「お、いい感じだ、後はこれも焼いて…、ん?」

バタバタバタ、ガチャン!

勇者「おい! 魔王! むぐむぐ 今日こそ俺とむぐむぐむぐ 勝負しろ!」むぐむぐむぐむぐ

魔王「あー、お客様困ります、パン食べながら調理室に入ってこないでくださーい」

勇者「う、す、すまん。でも美味しかったんだもん」

魔王「それは当たり前ですね。僕が焼いたパンですから」

勇者「べ、別にお前が作りたいっていうなら毎日俺の為に食パン焼いてくれてもいいけど?」ちらちら

魔王「なんで急にツンデレなんですか。焼きませんよ。ほら出て行って」

勇者「なんだよ! いいじゃん! 俺にかまってくれてもいいじゃん! たまには勝負しろよおっさん!」

魔王「おっさんは若者を相手にしてる暇はないんです。今日も僕のパン屋さんに沢山のお客さんが来てるんですから」ぐいぐい

勇者「あ! お、押すなよ! なんだよケチー!」

パタン

家来1「ふう、やっと落ち着いた。あれー? 勇者さんまーた追い出されたんですか」

勇者「世界征服なんて簡単にできる力持ってる癖に、なんであいつあんなにパンばっかり構ってる訳?」ぐちぐち

家来1「自分が構ってもらえないから拗ねてるんですね勇者さん」

勇者「別に! 俺は! ま、魔王が好きだなんて思ってないし! たまにはパン生地じゃなくて俺の事見て欲しいとかちっとも思ってないし?!」

家来1「魔王様が大好きだしイースト菌より自分を見てほしいんですね素直ですね」

勇者「ばか! ちがう! ばか!」じたばた

家来1「魔王様を召喚した私が言うのもなんですが、魔王様には悪い事したなと思っていますよ」

家来1「魔王様はあちらの世界ではサラリーマンをしながら休日には趣味のパン作りに精を出していたようですからね」

家来1「きっとあちらの世界に恋人もいた事でしょう。それなのに私ときたら魔王様の名前が魔山だからという理由だけで魔王様を選んでしまって」

家来1「名前に魔がついてるし何だか暇そうだしこの人でいいか~って軽いノリで呼んじゃったんですよねー」

魔王「お前そんな理由で召喚したのかよ」

家来1「あ、魔王様お疲れ様です」

魔王「はい、お疲れ。閉店までもう30分もないし、後は僕が店番するからお前はもう城に帰っていいよ」

家来1「はーいわかりましたー、お先に失礼しまーす」てくてく

魔王「ふう。…ん? なんだよ勇者」

勇者「…お前、向こうの世界に恋人いたの? 俺という存在がいながら…」ぐすぐす

魔王「は? 恋人? いねーし? つーかこの30年間彼女なんて1人も出来た事ねーし?? 喧嘩売ってんの???」

勇者「でもお前、向こうに帰りたいとか思ってんだろ? だから俺とも勝負しないし、世界征服だってしないんだろ?

魔王「帰りたい、とかはないな。最初は思ってたけど、でも別にあっちに戻っても冴えないサラリーマンやるだけだし」

魔王「それならこっちで大好きなパン生地こねてる方がいいし。」

魔王「それにお前と勝負しないのも、世界征服しないのも、お前が……」

勇者「お前が?」

魔王「…いいのかよ。俺が世界征服するとお前なんて簡単に俺に負けるぞ。お前が負けないようにしてやってんだよこっちは」

勇者「!! ふ、ふーん、そっか~そ~なんだ~へ~~~」にこにこ

魔王「うわ、むっかつく顔してる。何だよ泣いてたと思ったら急に機嫌よくなりやがって」

勇者「別に?? 魔王の愛を再確認して嬉しいとかじゃないし?」にこにこにこにこ

魔王「意味わかんねえしそもそもお前に愛なんてねえしほらこのパンやるから早く帰れよ」ぽい

勇者「パン? …あ! 俺が好きなうぐいすパン!」

魔王「ほらそれやったんだからもう帰れ。あまり遅いと明日起きれなくなるぞ」

勇者「うんわかった! 明日もまたくるね! ばいばーい!」バタバタバタ

魔王「小学生かよ。おーい、走ると転ぶぞー」

魔王「…はー、何やってんだ俺も。さっさと片付けて帰ろう」

家来1「魔王様」

魔王「うわびっくりしたお前まだ帰ってなかったのかよなんだよなにしてんだよ」ドキドキ

家来1「いえ別に? ただ魔王様も素直じゃないお人なんだと思いましてね」にやにや

魔王「は? 素直じゃないって何が? もう店閉めるからお前も手伝え」バタバタ

家来1「やれやれ周りからすれば付き合っているも同然だと思うんですけどねえ。知らぬは本人ばかりですか」

今日もファンタジックな世界は平和です。