とあるイケメン男子高生の物語

橘浩太:
学区内一番のイケメンといわれる男子高校生。

節子:
浩太の右隣に住んでいる幼馴染。

彰:
浩太の左隣に住んでいる幼馴染。


橘浩太は学区内一番のイケメンと言われている男子高生である。
校内の女性からの告白率は50%超え、なんと男子からの告白率も10%と高確率を誇っており、校外の学生に至っては出入り待ちするほどだった。
そんな浩太の右隣に住んでいる幼馴染の節子は、あからさまに浩太のことが好きだった。
しかし浩太の左隣に住んでいる幼馴染の彰も、これまた浩太のことが好きだった。
そんな三人はいつも一緒に登下校している。

節子「ちょっと彰! 浩太にくっつきすぎないでよね!」

彰「うるせーな! お前こそ浩太にべたべたすんじゃねえ!」

浩太「まあまあ二人とも落ち着けって…」

節子「浩太は黙ってて!」

彰「浩太は黙ってろ!」

浩太「う、うーん…なんで俺が怒られてるんだろう…」

節子「それより浩太、来週の日曜日一緒にショッピングいかない?」

浩太「ショッピング? いいね、ちょうど新しい服が欲しかったんだよね」

彰「あぁん? 浩太は俺とショッピングすんだよ!」

節子「は? アンタみたいなヤンキーと浩太が一緒にショッピングするとかマジないんだけど」

彰「ふざけんな。お前みたいな芋女と歩いたら浩太が腐るだろうが」

節子「はあ!? 何その言い方! 許せないんですけど!」

彰「本当のこと言っただけじゃねーか!」

浩太「まあまあ二人とも落ち着けって…」

節子「浩太は黙ってて!」

彰「浩太は黙ってろ!」

浩太「う、うーん…やっぱり俺が怒られるのか…」

彰「そんなことよりさー浩太、この前校内一の美少女に告白されたって話マジ?」

浩太「え? ああ…そうだな。うん、告白された」

節子「えー! あの高嶺の花って言われてる大企業社長令嬢の徳川さん!?」

浩太「うん。けど俺、あんま興味なかったし…」

彰「だよなー! 浩太には俺がいるもんな」

節子「違うよ! 浩太には私がいるの!」

浩太「…あ」

とその時。
噂をすれば影といわんばかりに、行く手を阻むように黒塗りの高級車が停車した。
そこから出てきたのは、例の大企業社長令嬢の徳川ユメである。

ユメ「ごきげんよう、浩太さん」

浩太「えっと…おはよう」

ユメ「あら、今日もまた2匹の腰巾着を引き連れているの?」

彰「誰が腰巾着だ!」

節子「そうだそうだ!」

ユメ「あら失礼。でも浩太さんの顔面レベルはもはや世界レベルですもの。そんな浩太さんの両隣に芋のような顔があるというのはどうにも解せないわ」

彰「誰が芋じゃ! 芋はこの女だけだろーが!」

節子「ちょっと彰! ヒドいわよ! アンタも芋っていわれてんだからね!」

彰「俺は芋じゃなくて個性派なんだよ!」

ユメ「とにかく、ただの芋と個性派の芋が浩太さんの御尊顔の隣にあるのはいけないと思うの。許されないのよ。だから二人はどこかに消えてくれないかしら」

浩太「そういう言い方はないんじゃないかな?」

ユメ「あら、本当のことを言ったまでですわ」

浩太「徳川さん、俺、この前ハッキリ言ったよね。君とは付き合えないって」

ユメ「グッ…!」

浩太「その気持ちは変わってないから。君と付き合うつもりはない」

ユメ「ガハッ…!」

浩太「だからごめん。金輪際俺に付き纏ったりしないでくれるかな?」

ユメ「くっ…! な、なによ! 誰が付き纏ったっていうのよ。それならアンタの腰巾着の方がよっぽど付き纏ってるじゃない」

浩太「節子と彰は特別だよ。俺にとって大切な二人だから」

節子「浩太…!」

彰「浩太ああ!」

浩太「二人とも、行こう。早くしないと遅刻しちゃうし。じゃあね、徳川さん」

ユメ「お、おのれええ…! 覚えてろ橘浩太あぁ…!」

そんなユメの恨み節をBGMに登校した三人は、清々しい気分で一日を過ごした。
特に節子と彰は、学区内一のイケメンであり意中の人でもある浩太に「特別」と言われたものだから、一層気分が高揚していた。
しかし、そんな嬉しい気持ちは誰にも報告できなかった。
なぜなら――

同級生「浩太くんの幼馴染の二人さぁ、ちょっとナメてるよねー」

同級生「わかるわかるーいつもベッタリくっついちゃってウザイよねー」

同級生「なんかあの二人って浩太くんに特別視されてない?」

同級生「ほんとそれ。許せないよねー」

こんな状況の中で自慢などしようものなら袋叩きにあうこと請け合いである。
そのため、節子と彰は必然的に二人でその気持ちを共有することになった。

節子「今日、浩太に特別っていわれて嬉しかったね」

彰「だな! 皆には絶対言えねーけどな」

節子「ね。だからこれは二人だけの秘密ね」

彰「おう」

節子「ふふ、なんか彰とはいつも喧嘩してばっかだったけど、こうして話してみると私らって共通してるとこ多いよね」

彰「まーな。お互い浩太のこと好きだし、家も近いから昔っから知ってるし」

節子「これからもいろいろ相談しあおうよ」

彰「そうだな。浩太に関しちゃお前にしか相談できねーし」

こうして二人は浩太に関することでいろいろと相談しあうようになった。
そして数か月後のある日の朝――
いつものように家を出た浩太の前に、いつもとは違った様子の節子と彰が立っていた。
二人はモジモジした後に、同時に叫んだ。

彰・節子「浩太ごめん! うちら、付き合うことにした!」

浩太「………え?」

節子「今迄ずっと浩太のこと好きだったけど、浩太ってレベル高いしライバル多いし正直ちょっと疲れてたんだよね」

彰「そうそう。頑張って落としたとしてもまた徳川みたいなやつがライバルとして登場すると思うと心労すごいしさ」

節子「だからもう腰巾着はやめる!」

彰「ってわけでこれからは俺らナシで頑張ってくれよな!」

浩太「あ…ちょ…」

節子「じゃあね~」

彰「ばいばーい」

浩太の目には、手を繋いで楽しそうに登校する節子と彰の背中が映っていた。
そして次の瞬間、待ってましたといわんばかりに黒塗りの車が浩太の脇に停まり、その中から徳川ユメが登場した。

ユメ「ふははは! ざまーないわね! 特別と認めた二人に裏切られた気分はどう?」

浩太「徳川さん…。いや別に俺はなんとも…」

ユメ「嘘よ! ショックでしょ!? あんだけチヤホヤしてきた相手が手の平返したみたいにそっぽ向いたんだから」

浩太「だから俺はなんともないって」

ユメ「強がらなくていいのよ、浩太さん。私はとても心が広いから、そんな憐れな貴方と付き合ってさしあげてもよくてよ?」

浩太「遠慮します」

ユメ「は!?」

浩太「俺は君とは付き合わないから。以上。さようなら」

ユメ「なっ! うぐうぅ~何様のつもりじゃあああ…!」

ユメの奇妙な雄叫びをBGMに、浩太はゆっくりと学校へと向かった。
両脇に誰もいないなんてあまりに久々すぎて不思議な気分だったが、悪くないなと思っていた。
なぜなら――

浩太(二人がくっついて良かった。節子と彰、ずっとお似合いだと思ってたんだよね)

浩太(俺のキューピッド作戦、大成功だな)

浩太(…ま、二人と一緒にいられないのはちょっと寂しいけど)

このキューピッド作戦は極秘だったが、何かの折に感づいた節子と彰により拡散された。
その結果、浩太は「友達想いの最強イケメン」として評判になり、校内の女性からの告白率は驚異の70%超え、男子からの告白率も30%に上昇、校外の学生に至ってはストーカーが増加し警察が稼働するほどになった。
橘浩太は今日もまた、学区内一番のイケメンとして君臨するのであった。

END