小さな喫茶店での仕事人(犬?)のある日の会話

タロ:
常連

ポチ:
新規

ハガネ:
常連

アカネ:
常連


タロ「こんにちは、みんな早いなあ」

ハガネ「やあタロ、こんにちは。て言うか、君が今日は遅かったんじゃないか?」

アカネ「そうね、いつもより遅いわねえ」

タロ「ああ、ここに来るまでに、ちょっとね……」

アカネ「何かあった?」

タロ「毎度のこと、と言えばいいのかなあ」

ハガネ「毎度のことになってしまってるけど、なって欲しくない何かがあった?」

タロ「まあね、あれだよまた移動中にさ」

ハガネ「何か言われた?」

タロ「チビ達がね、可愛い可愛いとか言ってさ」

アカネ「あはは、可愛いのはいいけど手を出してきたのね」

タロ「仕事中で無かったら、相手するのもやぶさかでは無いけど、仕事中に手を出されるの困るよねえ」

ハガネ「全くだ、その辺りもうちょっと徹底して欲しいなあ」

アカネ「あ……」

・・・

客A「あらここって、犬カフェだったの?」

客B「てかさあ、毛が抜けたりとか不衛生じゃないか。飲食店なのに、何やってるんだ」

店員「お客様、彼らは盲導犬です。目の見えないパートナーを先導している犬たちなんです」

客A「あれが盲導犬? 普通の犬に見えるけど」

客B「いくら盲導犬だって、毛だって散らばるしやっぱ衛生的にこれ、問題じゃね?」

店員「当店は盲導犬や介助犬の入店を歓迎しています。目の見えないお客様でも、パートナーと一緒にお茶を楽しんで欲しいからです」

・・・

アカネ「やれやれ、まただわ」

ハガネ「ここは割と早く俺たちを受け入れた店だから、滅多に無いんだけどなあ」

タロ「うわ、ヤバい。うちのパートナー、落ち込みかけてる」

アカネ「お宅のパートナー、かなり神経質って言うか、繊細だものね」

ハガネ「うちのも気分暗くなってるなあ」

・・・

店員「大変失礼いたしました、どうぞお気になさらずにお茶をお楽しみください」

・・・

アカネ「ここの人たちはいい人ばかりなんだけどねえ、まだ受け入れられないのかしらね私たち」

タロ「僕としては、パートナーの目になってるって自信もあるし、仕事してるって意識もあるけど」

ハガネ「普通の、目の見える人間は俺たちのありがたさがわからなくて、まあ当然だしな」

アカネ「うちのパートナーもね、この前言ってたわ」

・・・

アカネのパートナー「考えてみれば不思議だなあ、俺は視力無くす前は盲導犬なんて大したこともしてないと思ってたんだよ。でもこうなってみると、本当にお前たちがいなかったら、外を歩くことも不自由になるんだとやっとわかったんだ。おまけにな、目が見えなくなったおかげでお前に会えたんだから、それもある意味ラッキーだったさ」

・・・

ハガネ「アカネの所のパートナーは、本当に君が好きなんだな」

アカネ「ハガネのところも同じでしょ」

ハガネ「俺は2代目なんだよな、勿論パートナーは俺を信頼してくれてるし大事にしてくれるけど、時々前のパートナーを思い出してる時があるんだ」

タロ「でもそれは仕方ないし、今は君が一番大事なのも確かさ」

ハガネ「あはは、まあな」

アカネ「あら、見たことの無い人たちだわ」

・・・

店員「いらっしゃいませ」

新しい客「あの、ここは盲導犬も一緒に入れる喫茶店だと聞いたんですが」

店員「勿論ご一緒していただけます、あちらの奥のコーナーが専用コーナーになっていますので、ごゆっくりなさってください」

新しい客「ありがとう」

・・・

ハガネ「よう、こんにちは」

新入り「こんにちは、あのここいいのかな?」

タロ「いいよ一緒にちょっと休もうよ」

アカネ「パートナーたちも一緒にお喋り始めたみたいだし」

ポチ「あ、僕ポチって言います」

タロ「よろしく、僕はタロ、あっちのガタイのいいのはハガネ、でもって紅一点がアカネ」

ポチ「よろしくお願いします」

アカネ「あなたのパートナー、目が見えなくなってあまり経っていないみたいね」

ポチ「わかります?」

タロ「僕ら勘はいいんだ」

ハガネ「足取りなんかがちょっとね、不安そうだし」

ポチ「僕もまだ慣れてないんで、しっかりとリードが出来ないんです」

アカネ「大丈夫だって、慣れればどんどんリードできるようになるし、パートナーとだってもっと親しくなれるわ」

ポチ「皆さんもそういった不安、ありました?」

タロ「今だって不安なこともあるし、ドジも踏んだりもするよ」

ハガネ「それでも俺たちの仕事だ、最後までやり遂げるさ」

アカネ「それより驚かなかった?」

ポチ「何をですか?」

アカネ「訓練所から出てパートナーと暮らすようになって、でもってパートナー以外の人間の私たちに対する無知」

ポチ「まだあまり長くないので、それほどには」

タロ「なら君はラッキーだよ」

ハガネ「まだまだなあ、俺たちの存在をペットと勘違いしてる人間もいるし」

アカネ「さっきも不衛生だって言ってた人間がいてね」

タロ「毎日せっせとブラッシングしてもらってるし、ちゃんと服まで着せてもらってるから、毛が飛んだりも殆どしないけどね」

ハガネ「それだけ普通の人間は、無知なんだ」

ポチ「でもそんな時って、パートナーは傷ついたり」

タロ「するんだなあ、それが悲しくてね」

アカネ「それを見る方が、自分が何か言われるよりもっと嫌」

ハガネ「俺たちの仲間はみんな、パートナーが一番大事だしな。仕事には熱意を持ってるから、それがもっと理解されればなあ」

タロ「何て話を何時もここでしてるわけさ」

ポチ「そうなんですか、僕も入れて欲しいです」

アカネ「それこそあなたのパートナーがこの店に来るかどうかにかかってるけど、どうもあの分だと来てくれそうね」

ハガネ「おっとそろそろ俺のところは店から退散のようだ、またな」

アカネ「またね」

タロ「また会おう、って僕のところもだ。またねアカネ、ポチ」

ポチ「はいまた是非」

アカネ「さよなら、またね」

ポチ「僕嬉しいです、話せる人(犬)たちがいてくれて」

アカネ「私たちもね、この店で会えて情報も交換したり。愚痴も言いあえて助かってるの、あなたも遠慮なく参加してね」

ポチ「はい!」

店員「ありがとうございました、またお越しください。盲導犬のみんなも、明日も元気で仕事してくださいね」