【BL】山田パラダイス

山田五郎:
男子校を卒業したばかりの男子。

三原:
山田五郎が3年間想いをよせていたイケメン教師35歳。


その年の春、山田五郎は晴れて高校を卒業した。
彼はこの3年間通っていた男子校に想いを寄せている人がおり、卒業と同時に当たって砕けろとばかりに告白した。
するとどうだろう、なんと相手も「実は気になっていたんだ」などと言うではないか。
その相手とは、今年35歳になるイケメン教師の三原だった。

山田「まさか先生が俺のことを好きでいてくれたなんて驚きました」

三原「いやなに。入学当時から山田君は可愛かったからね」

山田「そんな、先生ってば本当のこと言わないでくださいよ」

三原「ははは」

山田「確認ですけど、俺達、両想いってことですよね?」

三原「まあそういうことになるかな」

山田「じゃあその…付き合ってくれますか?」

三原「うーん、それはどうかなぁ」

山田「なんでですか? だって俺もう卒業したし、校内恋愛するわけじゃないんだから特に問題ないでしょう?」

三原「いやなに。それはそうなんだけどね、4月にはもう新入生が入ってくるから」

山田「どういうことですか? 仕事で忙しいから無理ってことですか?」

三原「いや、そうじゃない。新入生が入ってきたら、もしかしてそこに可愛い子がいるかもしれないだろう?」

山田「は?」

三原「そのとき僕が山田くんと付き合っていたら、僕はその可愛い子と付き合う機会を失ってしまうじゃないか」

山田「先生…あまりにも欲望に忠実すぎます…」

三原「ははは」

山田「じゃあ先生は現時点で、俺よりもっと良い相手がいると思っているんですね?」

三原「まあそういうことかな」

山田「婚活難民みたいな考えなんですね」

三原「いや~そんなに褒めなくても」

山田「褒めてないです」

三原「まあとにかくそういうことだから、山田くんのことは好きなんだけど付き合うかどうかはちょっと難しいんだ」

山田「…わかりました。じゃあもういいです」

三原「短い間だったけど世話になったね」

山田「そんな別れの定型句みたいなこと言わないでくださいよ」

三原「だってもう僕のことは諦めたんだろう?」

山田「いいえ、俺は三原先生のことは諦めません! なんせ3年間好きだったんですから!」

三原「付き合えなくてもいいの?」

山田「いいえ、付き合いたいです」

三原「じゃあどうするの?」

山田「とりあえず俺と付き合って下さい。で、もしこの4月に先生好みの可愛い奴が入ってきたら乗り換えてもらって構いません」

三原「おやおや、そんな都合のいい話アリなの?」

山田「仕方ありません。そうでもしなきゃ付き合ってくれないんでしょ?」

三原「まあ…」

山田「じゃあとりあえずそれでお願いします」

こうしてなんとか意中の三原と付き合うことになった山田五郎だったが、大学の勉強をする傍ら、三原の浮気防止にも目を光らせなければならなかった。
付き合って1か月――今のところ不審な動きはない。

山田(ふう…どうやら今年の新入生の中には三原先生好みのやつはいなかったようだ)

山田(よかったよかった…)

そう思ってホッとしていたのも束の間、とうとう山田五郎に試練が訪れた。
それは久々のデートの際、三原行きつけの喫茶店でお茶しているときに突然降りかかった。

三原「山田くん、時は満ちたよ」

山田「なに厨二病みたいな台詞口にしてるんですか、先生」

三原「とうとう僕には、山田くんに替わって気になる人ができてしまったよ」

山田「え! だって今年の新入生の中にはそんな人いなかったでしょ?」

三原「ああ…新入生の中にはね」

山田「ま、まさかそれ以外に!?」

三原「そうだ。実は教育実習生としてやってきた山田先生が僕好みでね」

山田「な…っ! ソイツも山田!? 同じ山田としてなんだか悔しい…!」

三原「そういうわけだから、今日限りで卒業生の山田君とはお別れしたいんだ」

山田「そんな! 納得いきません!」

三原「でも元々そういう約束だったろう?」

山田「グッ…」

とその時、背後から野太い声が響いてきた。

???「三原くん、話は聞かせてもらったよ。それはあんまりヒドイんじゃないか?」

山田「あれっ、あなたは確か…校長先生!?」

校長「いかにも。私は校長だ。卒業生の山田くん、君には悪いが私はもう7年も三原先生と付き合ってるんだ」

山田「えー!?」

三原「おやおや、約束が違うじゃないですか山田校長」

山田「校長も山田!?」

三原「お互い浮気し放題&口は出さないというのを条件に極秘で付き合うことにしたのに」

校長「それは分かっている。だけどな…この7年間、三原君は一体どれだけ浮気をしてきたと思ってるんだ」

三原「さあ…覚えてませんね」

校長「70回だよ70回! 年10人、順調に誑(たぶら)かしすぎだろう!」

山田「えー! そんなに遊んでたの!?」

三原「人聞きが悪いですね。だって仕方ないでしょう? 僕の性癖を考えると…」

山田「性癖?」

とその時、店の奥から爽やかな店員の声が聞こえてきた。

店員「その性癖のせいで俺も随分と泣かされましたよ」

山田「あんた誰!?」

店員「俺はこの喫茶店の店員です。三原先生はこの喫茶店の常連で、4年前に店員の俺を口説いてきたんです。それから関係を続けてます」

山田「えー!?」

三原「君までそんなことを言いだすとはね。約束が違うじゃないか」

店員「ええ。確かにお互い別の人とつきあっても良い事にしましたけど、この4年間あまりにもひどかった。俺、山田凌太はもう耐えられません」

山田「えー! アンタも山田!?」

三原「皆、落ち着いてくれ。だって仕方ないじゃないか、僕の性癖ではどうしても浮気せざるをえないんだ」

山田「その性癖ってなんなんですか!?」

校長「なんと…君はまだ知らないようだね、卒業生の山田くん」

店員「本当に困りますよね、山田校長」

校長「いかにも。店員の山田くんのいうとおりだ」

山田「あ~もう!山田山田ってうるさいよ! なんなんだよ性癖って!」

三原「卒業生の山田くん、実は僕はね、山田フェチなんだ」

山田「…は?」

三原「“山田”に目がないんだよ」

校長「そういうわけだから目の前に山田姓の人間が登場するたびに三原先生は浮気をしてるんだ」

店員「ホントにヒドイですよ。これからも山田という人が登場したら浮気するはずですよ」

三原「うん、今一番のツボは教育実習生の山田先生かな」

山田「なんだよツボって! 山田だったら誰でもいいのかよ!」

三原の性癖を知った山田五郎は当然絶望した。
がしかし、周囲の山田たちが文句を言いながらも上手く三原と付き合っていたので、もしかしたらこれでいいのかもしれないと思い始めた。

それから数年――
山田五郎は今でも三原の取り巻きの山田の1人として生きている。
最近では「三原と付き合う山田友の会」を設立し定期的に情報交換をして楽しく過ごしている。
なんだかんだ言って三原を好きになってよかった…そう思う山田五郎であった。

END