ジョーイとヘレンのオアシス道中記

ジョーイ:
勇者

ヘレン:
僧侶

ドミニオン:
魔物


ジョーイ:最近さー、物騒な犯罪増えてんじゃん。あれってつまりは愛が足らんのだよね。こないだもアノーイの郊外で馬車が盗賊に襲われたって言うけどさ、あれも盗賊たちに愛を注いでやんなかったからじゃないかな。盗賊のリーダーなんかグレにグレた最強のグレじゃん。グレーターデーモンっしょ。アル中の父親に色んな相手と浮気する母親のいるみたいなさあ、ひどい環境で育ったんじゃないの。そこんとこどうなの。

ヘレン:どうもこうもないし、うるせえ。

ジョーイ:ヒュー流石は「じゃじゃ馬ヘレン」だな。

ヘレン:そんなあだ名は初耳だし誰も言ってないしうるせえ。

ジョーイ:まったくへそ曲がりだなあ。もっと会話し…

ヘレン:杖アタック!

ジョーイ:ウゴオッ!

ヘレン:ちょっと黙ってこれからどうするかマジに考えろっての。もうこの砂漠に迷い込んであたしら3日目だよ。やべえよ。オアシスあったから良かったけどもう移動できねーぞこれ。

ジョーイ:まあオアシスあっから良いじゃん。

ヘレン:だからよお、おめーはここで一生暮らすのかっての。メシもそのうち無くなるぜ?

ジョーイ:いやあ、パッと見た限り果物たくさんあるしどうにかなんじゃないの。

ヘレン:いやいや、ダメだろう。人間2人養うだけの食料なんて…むっあれは何だ? 誰かこっちに来るぞ。

ジョーイ:おお本当だ。あの人に帰り道教えてもらうか…はぁ。

ヘレン:なんで溜め息。

ジョーイ:だってもうちょっとここで暮らしたかったからなあ。

ヘレン:じゃ1人でどうぞ。

ジョーイ:ヘレンが居なきゃ意味ないし。

ヘレン:は、はぁ? マジ訳わかんないんですけど。

ジョーイ:そんなギャルみたいなキレ方するお前が最高。

ヘレン:この棍棒をくらえ!

ジョーイ:ぐえっ。

ドミニオン:あのすいません。

ジョーイ:いってー、ちょっとは加減したほうがいいんじゃないの。結構痛いんだよその棍棒。モンスター殴ったら倒せるぐらい強いってことは殺傷能力があるんだよ。そこのところどうなの。

ヘレン:知らん。

ジョーイ:うわクール。

ヘレン:そうよあたしはいつだってクールなのよ。

ドミニオン:あのー…

ジョーイ:そういうところも良いよなヘレンって。

ヘレン:まだ変なこと言うわけ? やめてよ…

ジョーイ:いや、この旅はヘレン無しじゃどうにもならなかった。

ヘレン:ちょっと…

ジョーイ:改めてありがとう。そしてこれからも宜しく。オレには君が必要なんだ。

ヘレン:はうっ。

ジョーイ:なあ良かったらこの旅が終わったら…

ドミニオン:ばたーん。

ジョーイ:うおっ何だ敵か!?

ヘレン:攻撃は…受けてないわね。それどころかこの魔物、相当弱ってるみたい。

ジョーイ:行き倒れか…

ドミニオン:み、みず…

ジョーイ:水か、水が欲しいんだな。よしこれを飲め。

ドミニオン:あ、ありがとうございます…んぐっんぐっ。

ヘレン:ちょっとジョーイ! 魔物だよ?

ジョーイ:いや、魔物だ人間だつって助けを求めてるやつを無下に見捨てることはできん。さっき言ってたろ? 愛が必要なんだよこの現代社会、このトウキョー砂漠にはさ。

ヘレン:どうなっても知らないよ…でもそんなところが…

ドミニオン:ふー、うまい。処女の生き血よりうまい。

ヘレン:何かすごい不穏なこと言ってるけど。

ジョーイ:う、うん。

ドミニオン:あー、助かりました。ありがとうございます。お礼にこれを…

ジョーイ:む! やるか!

ドミニオン:いえいえ、これ。私の街のポストカードです。どうぞ。

ジョーイ:え? ああ、ありがとう。あんた市長さんなわけ?

ドミニオン:ええ。トリンドルっていう街を運営させて頂いているドミニオンと申します。

ジョーイ:! …トリンドルっていやあ…

ヘレン:あたし達の目的地じゃない。

ドミニオン:ああそうなんですか。それは丁度良かった。是非おいでくだ…

ジョーイ:覚悟!

ドミニオン:へ?

ヘレン:おらあ!

ドミニオン:うわっ痛い、とても痛い。きゅー。

ジョーイ:むむ、倒れてしまったぞ。

ヘレン:話じゃ凶悪なモンスターがトリンドルを支配してるから助けてやってくれ、なんて事になってたが。

ジョーイ:何か事情がありそうだな。襲っといてなんだが治療しよう。

ヘレン:うむ。

・・・

ドミニオン:全く、ひどいじゃないですか。いきなり襲うなんて正気を疑いますよ私。

ジョーイ:え? いや、まあ魔物と人間ってそういうもんだし。

ヘレン:今こうしてあんたと話てるのが不思議なくらいよ。

ドミニオン:そうすか。謝らないんすか。

ジョーイ:あ…ごめんなさい。

ヘレン:ごめんなさい。

ドミニオン:うーん、素直。許します。

ジョーイ:ありがとう。

ヘレン:ありがと。

ドミニオン:取り合えずまあ、トリンドル行きましょ。

・・・

ジョーイ:んー、なんつう平和な村。どうなってんですヘレンさん。

ヘレン:全く意味が分からないわ。何で魔物と人間が共生できてんのかしら。

ドミニオン:ふふ、この街はそういう平和好きな連中が集まってできたんですよ。

ジョーイ:しかし噂では侵略を受けて大変な事になってるって聞いたが。

ドミニオン:まあ噂ってそんなもんすからね。でもいきなり襲われるぐらいだからちょっと結界でも張りますかね。よっと。

ヘレン:うわ強力な結界がすっと出た。

ドミニオン:ふふ、私はこういう防衛専門の魔物でね。戦闘はからっきしなんですが結界張るのは得意なんです。

ジョーイ:しかし…さっきオアシスで処女の生き血がどうとか言ってたが、本当に人を襲ってないのか?

ドミニオン:ああ、あれはほら、これ。特産フルーツ通称「処女の生き血」。鮮血みたいな果汁がうまいのです。

ヘレン:もの凄い誤解を招くネーミング。

ドミニオン:仲間内でブラックジョークみたいな感じで名前付けちゃったんですよね。「処女の生き血ってすげー魔物っぽくねえ? 不死者っぽくねえ?」とか村田の奴が言うから。村田ってそういうとこあるんすよ。

ジョーイ:知らん。

ヘレン:知らん。

ドミニオン:とにかく今日はこの宿屋「臓物の館」でどうぞお休みになってください。

ジョーイ:この名前付けたの村田でしょ

ドミニオン:いやデミウルゴス・オメガ・バーストさんです。

ヘレン:強そうな名前でてきたな!

・・・

ジョーイ:いやー、この宿屋最高だね。メシはうまいし温泉は気持ちいいし。

ヘレン:そうね。街の雰囲気も良いわ。こんな街があったなんて信じられないわ。

ジョーイ:ドミニオンも頭良さそうだし人格良い感じだし。

ヘレン:普通に人格者だったわね…

ジョーイ:…しばらくここで過ごさないか?

ヘレン:え? …まあ、目標が無くなっちゃったわけだから良いけど。

ジョーイ:それとさー、さっきオアシスで言いそびれたんだけど。

ヘレン:は? あ、もう寝ないと。

ジョーイ:ええちょい、待って寝ないで。何でこう肝心なときになるといつも寝ちゃうんだヘレン。

ヘレン:く、くー。すー。くー。すー。

ジョーイ:うーむこれは完全に寝ている。というか寝ている扱いをするしか無いぐらいの嘘寝。

ヘレン:ふんっ!

ジョーイ:ぐえっ。いたた…。

ヘレン:あ、大丈夫? ヒールかけてあげる。

ジョーイ:えあ、うん。

ヘレン:いつも、ちょっと強く殴っちゃってごめんね…

ジョーイ:いやいや全然、全然大丈夫。

ヘレン:あの、私、あんたとだったら…

ジョーイ:アワワー! ね、寝なきゃ!

ヘレン:え、ちょっとそんな。

ジョーイ:ぐーぐー。

ヘレン:もう、あたしたちってどっちもこういう感じで攻められると弱いわね…

ジョーイ:そ、そうね。

ヘレン:じゃあまあ寝ますか。

ジョーイ:はいよー。おやすみー。

ヘレン:おやすみー。