桃子の鬼退治

桃子「鬼が村の宝を盗んでいると聞きました。なのでおじいさま、おばあさま、鬼を退治してください。私はお茶でも飲んで待っています」

おじいさん「ちょっと待ってくれ。わしらが鬼退治に行くのか?」

桃子「まさかおじいさまは私に鬼退治に行けとでもおっしゃるの? 酷いわ、か弱い女の子を戦場に向かわせるなんて」

おじいさん「いや、年寄りを戦場に向かわせる方が酷いと思うのだけど」

桃子「おじいさまはどうせあと数年しか生きられないのだし、未来がある私よりもおじいさまとおばあさまが鬼退治に行くべきだわ!」

私は嘘泣きでおじいさまとおばあさまに訴えかける。しかし、何の反応も返ってこない。私のセリフがショック過ぎて天に召されてしまったのだろうか? 横目でおじいさまとおばあさまの様子を伺う。おじいさまとおばあさまは冷めた目で私を見ていた。完全に嘘泣きだとバレている。

桃子「……おじいさまとおばあさまは私のことが嫌いなのね。鬼退治に行って死んでくれればいいと思っているのね。分かりました。私が鬼退治に行くわ!」

私は懲りもせずに嘘泣きをし、玄関に向かって走り出した。

おばあさん「桃子! 厠(かわや)はあっちだぞ!」

私は思いっきりズッコケた。あの流れで厠(かわや)に行く勇気はさすがにない。鬼退治に行く勇気しかない。鬼退治の話をしていたわけだから。

おじいさん「おばあさん、桃子は厠(かわや)ではなく、鬼退治に行くつもりのようだ。何の修行もしていないのに、鬼に勝てるとは思えないがな」

桃子「おじいさまは何か勘違いをしているわ。私は鬼を倒すつもりはありませんわ」

おじいさん「しかし、鬼退治に行くと言ったではないか?」

桃子「ええ、確かに言いました。けれど、私が直接手を下すとは言ってませんよ」

おじいさまの言うとおり、何の修行もしていない私が鬼に勝てるはずがない。私など瞬殺されて終わりだ。

おじいさん「ではいったいどうするつもりだ?」

桃子「強いものを引き連れて鬼退治に行きますわ。私なんかが鬼に立ち向かっても殺されるだけです。私は命令を出すだけで、鬼退治は他のものに任せますわ。この辺りはたくさん動物がいますもの」

私は言わば鬼ヶ島への案内人だ。鬼ヶ島の場所は知っているから、そこまで案内するだけだ。私が戦闘に参加しても足手まといにしかならない。私はか弱い女の子なのだから。

おじいさん「鬼退治に行くと言った手前後戻りできなくなっている感じはするが、気を付けていきなさい。わしらは決して桃子が死んでくれればいいなんて思っていない。桃子は大事な孫なんだから、生きてほしいと思っている。無事に帰ってくることを祈っているよ」

桃子「良い事を言おうとしている感じはするけれど、とても嬉しいわ」

おばあさん「桃子よ、鬼退治に行くなら、このきびだんごを持っていけ」

桃子「わぁ、おばあさま、いつの間に作ったの? もしかして作り置きしてたの?」

おばあさん「いや、おやつに食べようと買ったんだよ」

桃子「おばあさま、本当に持って行ってもいいの?」

おばあさん「別にいいよ。一年前に買ったやつだから」

桃子「え? そ、そうなんだ」

もしかしておばあさまは私を残飯処理係とでも思っているのだろうか? 食べてお腹を壊したりしないだろうか?

食べるのは危険そうだけど、何かに使えるかもしれないから持っていくことにする。

桃子「それではおじいさま、おばあさま、行ってきます」

おじいさん・おばあさん「行ってらっしゃい」

・・・

犬「桃子さん、お腰につけてるきびだんごをくださいな」

犬が話しかけてきたが、私は無視した。どうせ連れていくなら、もっと強そうな動物がいい。

猿「桃子さん、きびだんごをください」

今度は猿が話しかけてきたが、私は無視する。握力は強いだろうけど、猿の後ろにゴリラの姿が見えたのだ。恐らく猿よりもゴリラの方が握力は強いだろう。

私はゴリラに話しかけ、仲間にすることに成功した。きびだんごは腐っているかもしれないからあげられないが、手料理を振る舞うことを約束した。

雉「桃子さん、きびだんごをくださいな」

雉(きじ)が話しかけてきたが、私は無視した。雉(きじ)の後ろにワシの姿が見えたからだ。

私はワシに話しかけ、仲間にした。ワシにも手料理を振る舞うことを約束した。

ライオン「桃子さん、きびだんごをくださいな」

今度はライオンが話しかけてきた。私は手料理を振る舞うことを約束し、ライオンを仲間にした。

ゴリラにワシ、ライオンを仲間にできたのは心強い。

さあ、鬼ヶ島に出発だ。

鬼「よくここまで来たな。褒めてつかわそう」

鬼はパチパチと拍手をした。

鬼「しかし、宝をやるわけにはいかない。宝が欲しければ俺たちを倒すしかないぞ」

鬼たちが一斉に襲い掛かってきた。

ゴリラ「桃子さん、私の後ろに」

桃子「うん」

私を守るようにゴリラは鬼たちを蹴散らしていく。思った通り、握力が強い。金棒をいとも簡単にへし折っている。

鬼はワシの速さについていけず、翻弄されていた。

ライオンは鬼の脚に噛みつき、動きを鈍くさせている。

ものの数分でボス以外の鬼を倒した。

鬼「なかなかやるではないか。だが、その程度では俺には勝てんぞ」

鬼はゴリラたちを圧倒した。手下とはくらべものにならないほどの強さだった。

鬼「どうした、もう終わりか?」

鬼は余裕の表情を浮かべているのに対し、ゴリラたちは動けそうになかった。

こうなったら私がやるしかない。

私は意を決して鬼の元に駆け出し、きびだんごを口に放り込んだ。

鬼「食べ物をくれるとは良い奴では……はぐっ?」

突然鬼の顔が青ざめ、お腹を押さえた。やはりきびだんごは腐っていたか。おばあさまに感謝しなければならない。

鬼にとどめを刺し、私たちが勝利した。

宝を船に積んで村に帰ると、私たちは村人に感謝された。

その後も私はおじいさまとおばあさまと幸せに暮らしました。