【BL】恋人は画面の向こう側

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春日 裕樹(かすが ゆうき):
男 19歳 フリーター
オタク。男性向け恋愛シミュレーションゲーム「恋人は画面の向こう側」の登場人物である音無七瀬に夢中。
ある時、「恋人は画面の向こう側」の登場人物である山瀬史郎が目の前に現れる事になる。

山瀬 史郎(やませ しろう):
男 16歳 高校1年
「恋人は画面の向こう側」の登場人物で、バグにより裕樹の住む世界に逆転生してきた。
ゲーム内では主人公(プレーヤー)の友達で、良きアドバイザーキャラクター。
実はプレイヤーに恋をして、自分でバグを発生させて逆転生を成功させた。

音無 七瀬(おとなし ななせ):
女 16歳 高校1年
「恋人は画面の向こう側」の登場人物で、妹キャラ。
しかしその実態は超性悪な猫かぶり。


裕樹「はぁ、七瀬たんは今日も可愛いなぁ」カチカチ

七瀬『あ、おはよう、裕樹君。今日も良い天気で良かったね』

裕樹「えーと、選択肢Aの、“おはよう、そうだね”っと、」

僕は今、巷で噂の「恋人は画面の向こう側」という男性向け恋愛シミュレーションゲームの登場人物、七瀬たんに夢中である。
現実世界で非モテの僕だって、ゲームの中ならばお姉さん系から同級生、先生キャラにも大モテなのだ。
その中でも主人公であるプレーヤーにとても人懐っこい性格をもつ、妹系キャラの音無七瀬(おとなし ななせ)たんは誰よりも可愛い。
僕の理想の妹であり彼女である七瀬たんを攻略するべく、ここのところの僕は一層ゲームに夢中になっていた。

裕樹「ふう、あともうちょっとパラメーターを上げれば攻略できるかな…っと」

史郎『よーっす、裕樹。今日もシケた面してんなぁ。もうちょっと楽しそうにしろってー』

裕樹「こいつめ…。僕のせっかくの七瀬たんタイムを邪魔しやがって。」

裕樹「えーと、選択肢Aのうるせえ、早く情報をよこせか、Bのなんだと、僕の顔は世界一かっこいいだろ、かCの…え?」

裕樹「Cの、こっちに来て、僕の傍に居て…?」

裕樹「なんだこの選択肢、ゲームのバグか…? あ!」カチッ

裕樹「しまった、間違ってC選んじゃった。…ん?」パアアアア

裕樹「なんだ、画面が光って――――」

史郎「…え?」

裕樹「ん?」

裕樹「ゆ、夢? えっと、まじで…?」

史郎「ええっと、ここって、え? お前、もしかして裕樹? 何だ、現実のお前もシケた面してんなぁ」

裕樹「は―――?」画面の中から史郎が出てきただと…?

裕樹「えーっと、状況を整理すると、お前は僕がさっきまでやってたゲームの登場人物の、山瀬史郎(やませ しろう)でいいんだよな?」

史郎「そう、それでお前がいっつも音無の情報ばっか聞いてくる非モテ君、だろ?」

裕樹「おま! …悪いかよ! …で、こっちに来たのはゲームのバグだって? どうせなら七瀬たんが良かったのに」

史郎「まぁそういうなって、友達だろー俺達? 戻れるまでしばらくはここに居させてくれよ」

裕樹「…別に追い出すとは言ってないけどさ。…はぁ、まじでこんな事ってあるのかよ」

それから史郎と僕の共同生活が何日か続いたら、どうやら史郎はゲームの世界よりもこちらが気に入ったらしい。
フリーターである僕のバイト先で一緒にバイトを始めたり、休みの日には一緒に出掛けたりして、何だか友達同士のように楽しく過ごした。

裕樹「ここまで仲が良い友達っていなかったし、いいもんだな―――」

裕樹「でもやっぱり、出てきてくれるなら七瀬たんが良かった」ぼそっ

史郎「まだ言ってんのかよー。でも音無ってお前が思ってるような女じゃないぞ?」

裕樹「は? 七瀬たんは超可愛くて清楚な妹キャラなんだからな! お前みたいなチャラついた奴じゃないんだよ」

史郎「そこまで言うなら、音無の本性を見せてやるよ―――」

裕樹「おい! 何をするっ…えっこれは…」

七瀬『はぁー、主人公の機嫌取るのも楽じゃないわー』

他攻略キャラ『あいつ、あんたに夢中だもんねー私らなんてモブ扱いだわ』ゲラゲラ

七瀬『まじカンベンしてって感じ。あいつって、絶対あっち(現実)ではモテないよね』

史郎「あいつは、本当はこんな奴なんだよ。だから、俺は―――。なぁ、裕樹、俺にしておけよ。俺ならお前を―――」

裕樹「嘘だ! どうせこれはお前が造った幻なんだろ! 嘘つき! お前なんか、史郎なんか元の世界へ帰っちまえ!」

史郎「ザザッ―― ゆ、裕―――ザーーーッ」プツン

裕樹「あ…、史郎?」

僕が史郎にあんな事を言って、史郎が画面の向こうに吸い込まれてからもう1ヶ月は経ってしまった。
あれから何度かゲームをプレイしたけれど、もうあの選択肢は出てこない。
七瀬たんも相変わらず可愛いけれど、ゲームの中にいるはずの史郎の姿がなくなってしまった事に気づいてからは、プレイする事はなくなった。
僕が史郎を拒否したから消えてしまったのだろうか、あれだけ優しくしてくれた史郎になんてひどい言葉をぶつけてしまったんだろう。
そうやって悩み続けていた頃、ふと夢の中に史郎が出てきた。
相変わらずの人を食ったような笑顔で、僕に「ごめんな」と謝ったのだ。

裕樹「史郎…」カチッ

七瀬『わぁ! 裕樹君! 久しぶりだね! どうして七瀬に会いにきてくれなかったの? 七瀬、怒らせちゃったかな?』

裕樹「はは、プレイ期間を空けるとこんなサービスあるんだ。えーっと、選択肢Aのごめんね、忙しくて。か、Bの他に好きな人が…」

裕樹「…ごめんね七瀬たん、僕、他に好きな人が出来たんだ。そいつはいつもニコニコして、どうしようもない僕に君達の攻略アドバイスをくれるんだよ」

裕樹「攻略対象キャラじゃないけど、結構お気に入りのキャラでさ。年齢も離れてるしあっちの方が年下なのに、勝手に俺の友達だと思っちゃって」

裕樹「ほんと、良い奴なんだ、史郎って。ごめん、謝らないといけないのは僕の方だ――」

七瀬『…もう、ほんっとあんたらって面倒くさーい。謝るなら本人に言ったら? 七瀬に言われても困るし!』ドンッ

史郎「え…? うわっ」

裕樹「…史郎?」

史郎「ごめん、俺、出てくるつもりじゃ、」

裕樹「僕の方こそごめん! 信じたくなかったんだ、ごめん、それなのに…」

史郎「…裕樹、俺は…。実は、最初のバグを作ったのは俺なんだ。画面の向こうで俺のアドバイスに一喜一憂するお前を見て、いつまにか好きになってた」

史郎「でも俺はプレーヤーの補助キャラクターで、お前はプレーヤーで、相いれない存在だって諦めようとしたんだけど、でも諦めきれなくて」

史郎「だから、俺はバグを作ってこっちに来た。でも、あまりに音無の事ばっか信じるお前に、ちょっと意地悪してやろうとして…」

史郎「もう、これで終わりにするから。バグは消えて、音無とお前がくっつけるように新しいバグを作っておくから。だからお前は幸せに―――」

裕樹「嫌だ! 俺が好きなのは、本当は史郎だって気づいたんだ! それなのにいなくなるなんて言うなよ…!」

史郎「裕樹…」

裕樹「またこっちで暮らそう。それが無理なら僕がそっちに行くから、だから―――」

裕樹「、僕の傍に居て…」

史郎「裕樹…!」

パアアアアア

裕樹「…! し、史郎…?」

史郎「その言葉、バグの発生条件にしてたんだ。俺、やっぱどうしてもお前を諦めきれなくて、お前がまたそう言ってくれればこっちに出てこれると思って…」

裕樹「史郎、もういなくならないで」

傍にいて、僕とずっと一緒に未来を過ごして――

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