【BL】極道の恋愛方法

国道勇気(こくどうゆうき):
国道組の一人息子。男子高生。敦夫のことが好き。

県道敦夫(けんどうあつお):
県道組の一人息子。男子高生。


国道勇気はごくごく普通の男子高生だったが、親が極道という珍しい家系だった。
そんな彼には今とてつもない悩みがある。そう…恋の悩みだ。
しかし彼の恋はそんじょそこらの高校生の恋の悩みとは一味違っていた。
何故ならその恋の相手は県道敦夫というれっきとした男であり、更には勇気の親と対立している組の息子だったからだ。

勇気「ああ…なんで敦夫は男なんだろう…?」

勇気「いや、その前に何でウチの組と昔から因縁のある組の息子なんだろう…?」

勇気「はぁ…絶対にこんな恋、叶うわけないよ…」

国道組組長「おやおや、どうした息子よ。そんな溜息などついて」

勇気「あっ、父さん! こんな都合よく出てきてどうしたの!?」

国道組組長「いや、愛しの息子が溜息などついていれば気になるものだろう?」

勇気「そうかな? ちょっと過保護じゃない?」

国道組組長「なんのなんの。お前にはこの国道組を継いでもらわにゃならんからな」

勇気「うっ…」

国道組組長「ん? どうした?」

勇気「そのことなんだけど…やっぱり俺が継がなきゃダメかな?」

国道組組長「何を言っとる! 当たり前だろうが! お前はワシの一人息子なんだぞ!」

勇気「ですよね…」

勇気(はぁ…、これじゃますます敦夫への恋は叶いっこなさそうだ…)

一方、そのころ県道組では……

県道組組長「おい、敦夫。国道組との抗争はもう20年にも渡っている。お前も知ってるな?」

敦夫「はい」

県道組組長「俺はそろそろケリをつけたい。そこでこちらから奇襲をかけようと思う」

敦夫「奇襲ですか?」

県道組組長「そうだ。国道組にはお前と同い年の一人息子がいるだろう?」

敦夫「はい、同級生です」

県道組組長「アイツは極道とは思えないほどチャラチャラしているだろう?」

敦夫「確かにイマイチ男気に欠けますね」

県道組組長「そこであの息子を人質にとって一気に攻め入ろうと思う」

敦夫「なるほど、勇気を人質にとるんですね。それは良いアイディアだと思います」

県道組組長「だろう? そこで敦夫に頼みたいことがある」

敦夫「はい、なんでしょうか」

県道組「国道組の一人息子を攫ってこい。これはお前を一人前の極道と見込んでのことだ」

敦夫「わかりました。必ずや父さんの期待に応えてみせます」

そして翌日――
愛しの敦夫から話しかけられて有頂天になった勇気は、まんまと人質となり県道組に囚われた。

敦夫「こんなに簡単だとはな…驚いたぜ」

勇気「お、お、お、俺も驚いたよ! まさか敦夫が俺のこと攫(さら)ってくれるなんて!」

敦夫「は…? お前、攫われて嬉しいのか?」

勇気「当たり前だろっ? だってこんな展開でもなきゃ一緒にいられないしっ」

敦夫「まあそうだけど…」

勇気「で、これからどうするんだ!? 俺が人質だとしたら敦夫に縛られたりするのか!?」

敦夫「えっと…ごめん。お前は何を期待してるんだ?」

勇気「敦夫と触れあえるなら何だって期待するに決まってんだろ!」

敦夫「なんかすごい予想外の展開というか…。お前、人質として捕まってるの分かってる?」

勇気「分かってるよ! もっと強く捕まえていて!!」

敦夫「なにそのJ-POPの歌詞みたいなの。キモいからやめて」

勇気「そんな殺生な! もっと抱きしめていて!!」

敦夫「マジやめろ」

勇気「なんだったらキスしても良いよ! いや、むしろ俺の体を好きにしても…」

敦夫「そこ求めてないから。人質が積極的とか意味不明だから。ほんと勘弁して」

勇気「そんな…せっかく敦夫と触れあえるチャンスだと思ったのに…」

思ったより優しい軟禁だったことにガッカリした勇気だったが、彼の極道魂はそんなことではへこたれなかった。
何しろこんなチャンスは滅多にない――このチャンスを逃してなるものか! …勇気はそう思った。

勇気「敦夫、俺に良い考えがあるんだ」

敦夫「なんだ?」

勇気「俺らの組はもう20年も抗争が続いてるだろ? それはきっと俺らの代に引き継がれる」

敦夫「まあそうだな」

勇気「でも俺、ぶっちゃけそんなのどうでもいいと思ってんだ」

敦夫「え?」

勇気「むしろ俺は敦夫と仲良くなりたい! それどころか一線を超えたい!」

敦夫「余計なことは言わなくていいぞ」

勇気「そんなわけで俺は休戦協定を提案したい!」

敦夫「休戦協定?」

勇気「うん。だって俺は敦夫のこと好きだし、敦夫といがみ合いたくないもん。だから組同士の抗争をなんとかやめたいんだ。例え一時的にでも」

敦夫「勇気…」

勇気「敦夫は俺のこと嫌いか?」

敦夫「いや、そんなことはないけど…」

勇気「だったらもうこんな意味のない抗争やめようよ。親父たちはどう思うか知らないけど、俺達は嫌なんだから」

敦夫「…まあそれもそうだな…」

勇気「でしょ? だから親父たちを説得するためにも俺と付き合って!」

敦夫「は?」

勇気「いや、だってさ。ただ単に休戦しようっていっても親父たちは納得しないと思うんだよね。けど俺達が真剣に付き合ってるって言ったら納得せざるを得ないと思うんだ」

敦夫「いやいやいやいや納得しないだろ!」

勇気「そんなことない! 大丈夫! だってウチ、親バカだから! 敦夫ん家はどう?」

敦夫「ウチはそうでもないけど…」

勇気「じゃあ敦夫ん家はもういいや。ウチだけでなんとかするから!」

敦夫「おい強引だな!」

こうして勇気の一方的な作戦を実行に移したところ、勇気の父である国道組組長は号泣しながら愛息の言い分を飲んだ。

国道組組長「まさか勇気がそんなに敦夫君のことを好きだなんて…ワシは悲しい! しかし勇気の気持ちをないがしろにすることはできん…!」

勇気「でしょ? 俺は敦夫が好きなんだ。将来的に一緒に暮らしたいとすら思ってるんだよ」

敦夫「俺は思ってませんけどね」

勇気「とにかくそんなわけだから、国道組と県道組の抗争はしばらく休戦ね」

国道組組長「くうっ…仕方あるまい…勇気がそう言うならワシも賛同しよう…」

県道組組長「俺としてはアンタの息子の気持ちとかどうでも良いんですがね」

国道組組長「黙れー! ワシの息子の恋心をないがしろにするつもりか! 尊重しろ!!!」

県道組組長「ウチの息子の気持ちはどうなるんだ…」

国道組組長「そんなん知ったこっちゃねえええ」

敦夫「…なんだかスゴイことになってるな」

勇気「まあとりあえずこれで円満解決でしょ? ってわけでこれからヨロシクね、敦夫」

敦夫「は!?」

こうして国道組と県道組は無期限休戦協定を締結したのであった。
これは勇気にとって人生最大の幸せであり、敦夫にとっては人生最大のミスであったが、とにもかくにもその後抗争は起こる事無く平和に過ごしたそうな…。

END