メスアイランド

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アレルド:
メスアイランドを調査しにきた調査員。

リゼルフ:
調査員

手:
メスアイランドに生息する生き物。


アレルド「目的の島が見えてきたぞ!」

リゼルフ「あそこが『メスアイランド』ですか」

数キロ先に小さな島が浮いているのが見えた。

その島にはメスしかいない。オスは生息していないが、生態系には何の問題もなかった。なぜならその島に生息しているメスは単為生殖(たんいせいしょく)だからだ。メスだけで子供を産むことができる。故に『メスアイランド』と呼ばれている。

リゼルフ「それにしても、こんなところに単為生殖の生物だけが棲む島があるなんて驚きですね」

アレルド「ああ、そうだな。最近発見されたばかりの島だから、まだ詳しいことは分かっていない。だから俺たちが派遣されたんだ。あの島を調査するためにな」

船を岩場に乗り付けて、僕たちは島に降り立った。船が流されないように、ロープで岩場にしっかりと固定する。

アレルド「この島の発見者によると奇妙な生物が生息しているらしいから、気を付けた方がいいな。まずはこの砂浜から調査しようか」

リゼルフ「ええ、そうですね」

僕はかがんで砂を手に取った。この島の砂はやけにぬるぬるとしている。一般的に砂はさらさらしている。しかし、この砂にはさらさら感がまったくなかった。まるでローションのようなぬめぬめとした感触がある。こんな砂は今まで見たことがない。

僕はカバンから瓶を取り出し、砂を入れた。このぬるぬるが何なのかは現時点では判断できない。詳しいことは検査しないと分からない。

瓶をカバンに入れて立ち上がろうとした瞬間、砂の中から何かが飛び出した。

リゼルフ「ひっ!」

僕はあまりにもびっくりしてしまい、尻もちをついてしまった。

アレルド「リゼルフ? どうしたんだ?」

僕の悲鳴を聞いてアレルドさんが駆けつけてきてくれた。

アレルド「大丈夫か?」

リゼルフ「は、はい、大丈夫です」

アレルドさんが差し伸べてくれた手につかまり、僕は立ち上がった。

砂の中から飛び出したのは手だった。その手は鱗で覆われており、ぬめぬめとした体液で包まれていた。砂がぬめぬめとしていたのは、この体液が纏わりついていたからだろう。

僕たちは警戒しながらも、その手をじっと見つめていた。手は微動だにせず、まったく動くそぶりを見せなかった。どういう生物なのか分からない以上、迂闊に近づくのは危険だ。分かっているのはメスということだけだ。

リゼルフ「アレルドさん、どうしましょうか?」

アレルド「この島のことを知るためにサンプルとして持ち帰りたいところだが、近づくのは危険だからな。ここは相手が行動に移すまでじっと待つしかないな」

リゼルフ「分かりました。ここは待ちましょう」

僕はアレルドさんの指示に従い、待つことにした。カバンの中に入っているお菓子を食べながら、相手が動くのを待つ。

アレルド「……お前は何でお菓子を持ってきているんだ? 遠足じゃないんだぞ」

リゼルフ「え? でもおやつは三百円分しか持ってきていませんよ。ちゃんと約束は守っているんですから、別にいいじゃないですか」

アレルド「そもそもそんな約束はしていないんだけどな」

アレルドさんはなぜか呆れたようにため息をついた。僕は何かおかしなことを言っただろうか? お菓子だけに……今のはなかったことにしよう。ものすごく恥ずかしい。口には出してないけど、恥ずかしすぎる。

手は相変わらず、微動だにしていない。もしや死んでいるのではなかろうか? いや、さすがにそれはないか。もし死んでいるのなら、死臭が漂うはずだ。しかし、臭いはまったくしていない。

僕は次のお菓子を食べようとカバンを開き、あまりの出来事に目を見開いた。

リゼルフ「そ、そんなバカな!」

アレルド「どうしたんだ?」

リゼルフ「あ、アイスが溶けてるんですよ! なんで溶けてるんだ。最後に食べようと思っていたのに」

アレルド「アイスまで持ってきていたのか。夏なんだから溶けるに決まっているじゃないか」

リゼルフ「で、でもちゃんと氷も入れてたんですよ。あ、氷も溶けてる」

アレルドさんは冷めた目で僕を見ていた。何でこんな奴を連れてきたんだろうという目をしている。

手「お前ら、バカだろう。いったい、何しに来たんだ?」

突然、声がした。僕たちは同時に声がした方向を見る。手が砂浜を這いずり回っていた。

アレルド「ま、まさかお前が喋ったのか?」

リゼルフ「手が喋るなんて信じられない!」

手「何を勘違いしているんだ。お前たちが手だと思っている部分は顔だよ。よく見たら、ちゃんと目と口があるぞ」

よく見てみると、確かに指に酷似した部分に目と口があった。

リゼルフ「目と口が五つもあるなんて気持ち悪い」

手「メスに向かって気持ち悪いとは失礼な奴だな。まあ、別にいいけど」

アレルド「いいのかよ」

手「それでお前たちは何をしにここへ来たんだ?」

アレルド「この島を調査しに来たんだ」

手「そうか。だったら、私がこの島について教えてやるよ。私についてこい、案内してやる」

そう言うと手は砂浜の奥へと進んでいく。

僕たちは戸惑いながらも、手についていった。

――半年後
フレンドリーな生物がいると話題になり、『メスアイランド』は有名な観光地となった。

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