ゲテモノ料理への道(未知)

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アキラ:
ゲテモノ料理が好きで仕方ない。男口調で話が、れっきとした女性である。

ユウジ:
ゲテモノ料理に対して苦手意識を持っている男。


ユウジ「君は本当にゲテモノ料理好きだなぁ」

アキラ「ゲテモノも立派な料理の一つだよ」

ユウジ「まぁ、そうかもしれないけど、食欲沸かないよ」

アキラ「見解の相違というやつだね。僕は食欲がわいて仕方ないよ。ゲテモノ料理には魅力が満ち溢れている、食べれば君もその良さが分かるはずさ」

ユウジ「うーん、気が進まないなぁ」

アキラ「僕も最初はそうだったさ。でも一口食べた瞬間にそんな気持ちはふっとんだよ。世の中にはこんなおいしい食べ物があったのかとね」

ユウジ「ゴクリ」

アキラ「僕の家に来るといいよ。ゲテモノ料理を食べさせてあげる」

ユウジ「うーん、やっぱり気が進まないなぁ」

アキラ「じゃあ君はこのままゲテモノ料理の魅力を知らずに生きていくというのかい? そのおいしさを知らずに生活を送っていくというのかい? あぁ、残念だね。このうまさを知らずに生きていけるとは。僕はもう魅力に取り付かれてしまって、一日に一回はゲテモノ料理を食べないと満足できない体になってしまったというのに」

ユウジ「う、そう言われるとものすごく気になってくるじゃないか」

アキラ「どうする?」

ユウジ「じゃあ、お言葉に甘えて」

アキラ「決まりだね」

ユウジ「何を食べさせてくれるの?」

アキラ「おいおい、そう急ぐなよ。お楽しみは後に取っておくべきだろう」

ユウジ「せめてどういう系統の料理か知りたいんだけど」

アキラ「まぁまぁ、そうビビらずに。この僕にすべて任せなさない。必ずや君を満足させるものを出してみよう」

ユウジ「どうなるのかなぁ?」

アキラ「僕は今ね、シュールストレミングにハマッっていてね」

ユウジ「あの世界一臭いって言う?」

アキラ「あぁ、その通りだよ」

ユウジ「おいしいの?」

アキラ「おいしいに決まってるじゃないか。だからこそ料理として成立してるわけだからね。まぁ、臭いはなかなかに強烈だったけどね。最初に食べたときは鼻が取れると思ったものさ」

ユウジ「そんなに?」

アキラ「あぁ、さすがの僕でも最初はげんなりしたものだよ。ゲテモノ料理には慣れていたつもりだったけど、シュールストレミングほど強烈な臭いを放つものは滅多にないからね」

ユウジ「でもハマッてるんでしょ」

アキラ「あぁ。僕にもゲテモノ料理好きとしてのプライドがあるからね。臭いを克服するために何度も食べているうちに、いつの間にか虜になっていたのさ。君も食べてみるといい」

ユウジ「でも臭いんでしょ。それはちょっと、臭いがキツいものは得意じゃないんだよ」

アキラ「果物の王様ドリアンだって臭いよ。臭いからまずいというのは偏見もいいところだ」

ユウジ「ごめん」

アキラ「分かればよろしい。ではリビングに座って待っていてくれ。腕によりをかけてゲテモノ料理を作るから」

ユウジ「えぅ? 作る?」

アキラ「あぁ、そうだけど」

ユウジ「てっきり買ってきたものを出すものだとばかり」

アキラ「ゲテモノ料理だからね。食材は売っていても完成品はなかなか売ってないよ。君、見たことあるかい? スーパーにゲテモノ料理が並んでいるところ」

ユウジ「そう言われてみると見た記憶はないなぁ」

アキラ「だろう? だから僕は基本的には自分で作っているんだ。料理が難しいものは現地に行って調達している」

ユウジ「わざわざ海外にまで行くのかい?」

アキラ「もちろんだとも。道のりは困難なほど、得たときの喜びはひとしおのものになる。ゲテモノ料理のためなら、嵐にだって出向くさ」

ユウジ「なんというか君らしいよ」

アキラ「ふふん、そうだろう」

ユウジ「でも君、料理なんてできるのかい? ズボラなイメージしかないんだけど」

アキラ「バカにしてはいけないよ。確かに僕はズボラな部分もある。けどそれと料理ができないことは別の話だ。それに料理は僕の趣味だ。期待したまえ」

ユウジ「分かったよ。期待しないで待ってる」

アキラ「僕だって切れるときは切れるんだよ」

ユウジ「ごめんなさい」

アキラ「まぁ、いい。期待せずに待っていればいいさ」

ユウジ「ほんとごめん」



ユウジ「うーん、一体何が出てくるんだろう? ……ん、なんだこの缶詰、ラベルが剥がれて何か分からないなぁ。それに臭いし……もしかしてシュールストレミング? ゴクリッ、少しくらいならいいよね。モグモグ、うっ、やっぱりおいしくない」

アキラ「何を食べてるんだい君は?」

ユウジ「あぁ、缶詰だよ。シュールストレミングの」

アキラ「うん? ……くくくっ、ははっ」

ユウジ「何がおかしいの。勝手に食べたのは悪いと思うけど」

アキラ「今、僕の家にはシュールストレミングはないよ」

ユウジ「えっ? でもこの臭いは?」

アキラ「うん、確かに臭いね。でもシュールストレミングはこんなものじゃないよ」

ユウジ「えっ? じゃあこれは一体」

アキラ「僕のズボラな部分が出てしまったね。それは食べかけのサバ味噌だよ。確か一年ほど前の」

ユウジ「えっ?」

アキラ「いやー、うっかりうっかり。まさかリビングの隅にずっと放置していたとは。やはりたまには掃除をしないといけないね。その臭いは腐っている臭いだと思うよ」

ユウジ「うっ」

アキラ「はいはい、トイレに行って吐いておいで。いくらでも待っているから」

ユウジ「うえぇぇ」

アキラ「スッキリしたかい?」

ユウジ「うん」

アキラ「じゃあお口直しに僕の手料理を食べてくれたまえ」

ユウジ「見た目はアレだね。……よーし」

アキラ「お味は?」

ユウジ「……お、おいしい! すごくおいしいよ。ゲテモノってこんなにおいしいんだね」

アキラ「喜んでくれて嬉しいよ。作った甲斐がある」

ユウジ「あっ、でも」

アキラ「なんだい?」

ユウジ「君の手料理だから、おいしいのかもしれないね」

アキラ「なっ? な、何をバカなことを言っているんだい君は」

そういってアキラは――彼女はテレたように頬を染めるのだった。

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