ゆきこのついていない一日

ゆきこ:
ちょっぴりついていない若い女性

なつこ:
ゆきこの親友


ゆきこ「あ~あ、また赤信号かぁ。もうイヤになっちゃうなぁ。最近どうもついてない気がするわ。大好きだった彼氏にはフラれちゃうし、この前はお財布を落としちゃうし。ああ、そういえば犬に追いかけられたこともあったっけ。あの時は焦ったわぁ。久しぶりに全力疾走したもの。あの時の私は、まさに風のようだったわ。オリンピック選手も真っ青の走りっぷりだったはずよ……犬の糞を踏んでしまったのは本当に最悪だったわ」

ゆきこ「ふぅ、やっと信号が青に変わったわ。それにしてもここんとこの私ってホント運に見放されてるわぁ。もしかしたら人生最大の大殺界なんじゃないかしら。まったく、日頃の行いだって良い……とは言えないまでも、人の道に反することはやってないはずだし、なんでこんなについてないのかなぁ……」

ゆきこ「……ひょっとするとアレかしら。一ケ月ほど前に黒猫を見かけたことが原因とか? まさかねえ、そんな迷信あるワケないわよねぇ。それとも一週間ほど前に誰も見ていないからってドアを足で開けたことがいけなかったとか? いやいや、そのくらいのことは誰だって一度や二度はやったことくらいあるわよねえ……」

ゆきこ「はぁ、何か良いことないかなぁ。当分恋をする気にはなれないし、かといって恋人の一人や二人いないのも人生損している気がするし、やっぱり辛い恋を忘れるには新しい恋をするのが一番よねぇ。いやいや、このついていない時期に焦って新しい恋人なんて作ろうとしたらきっとどうしようもない人しか捕まえられないわ。今は大人しくしておくべきよね。うん、そうよ、ゆきこ、せめてもう少し運が向いてきてから次の恋に踏み出しましょ!」

ゆきこ「そうだわ、こういう時には友達とパーっと騒ぐのが一番よ。そうやって気分転換でもしている内にこの憂鬱な気分なんて吹き飛んでしまうわよきっと。ではさっそく親友のなつこに電話しちゃおっと……あ、もしもしなつこ? ねぇ、今からちょっと会えない? うん、私今外にいるんだけどね、ここんとこ嫌なことが重なっちゃったからなつこに久々に会って愚痴でも聞いてもらおうかなと思って。うん、わかった、じゃあ、あそこで待ち合わせね。うん、あとでね、ばいばい」



ゆきこ「なつこ、久しぶり! ねぇ、ちょっと見ないうちにメイク濃くなってない?」

なつこ「何よそれ、久しぶりに会った親友に対しての第一声がメイク濃いってどういうことよ! まったく、ゆきこったら相変わらずねぇ」

ゆきこ「ごめんごめん、でもなつこ、きれいになったわよホント、いや、お世辞じゃないって! もしかしたらステキな恋でもしてるんじゃないの?」

なつこ「まぁね、最近彼ができてね。顔はタイプじゃないんだけど、すっごく優しい人でさ。いつもニコニコしてるのよ」

ゆきこ「うわぁ、いいなぁ。私なんて最近彼にフラれたばかりなんだから。そうそう、それで思い出したんだけどさ、ここんとこ私ついてないんだよね。彼にフラれたのもそうだけど、お財布落としたり犬に追いかけられたりさ、踏んだり蹴ったりだわよまったく!」

なつこ「まぁまぁ、そんなに悪い事ばかり続かないからね、そう落ち込まないで! きっとそのうち良いことあるわよ。ほら、元気出してね!」

ゆきこ「そうね、いつまでも暗い顔してたら余計にツキが逃げていくわよね。なぁんかなつこの顔見てたら元気出てきたわ。よし、今日はパーッと飲んでパーッと騒いじゃおう!」

なつこ「よし、そうと決まったらどこかお店にでも行きましょうよ」



なつこ「あら? ねぇ見て、あんなところに占い師がいるわよ。ねぇ、最近ついてないって言ってたからちょうど良かったじゃない。占ってもらったら?」

ゆきこ「そうねぇ。そうしようかしら」

なつこ「すみません占い師さん。私たちの運勢を占ってもらえますか?」

占い師「よく来なすった。私のタロット占いは特別なんじゃ。このカードにはな、神秘の力が宿っておるのじゃ。そんじゃそこらのタロットカードとは違うんじゃぞ。何が違うのかと言うと十年先まで未来をはっきりと見通すことができるのじゃ。その的中率たるやほぼ百パーセント。占いが当たらないなんてのはわしの迷信も同然。お嬢さんたち、このわしに出会えたことは幸運じゃぞ」

なつこ「わぁ、すごい。ホントなの占い師さん。そんなすごい的中率だったら占いというより予知能力じゃない」

占い師「はっはっは、まさにその通りじゃ。じゃがしかし予知能力と言ってしまっては誰も信じないからのぉ。あえて占いと称しておるのじゃよ」

ゆきこ「なんだかそこまで当たるって言われると怖いような気もするわねぇ。ねぇ占い師さん、私最近ツイてないのよね」

占い師「ふむふむ、それでどんなことを占ってほしいのじゃ。お嬢さんたちの生年月日から教えてもらおうか」

なつこ「ねぇ、ゆきこ。やっぱり帰りましょう。占い師さん、こんなとこでインチキ商売してちゃだめよ。じゃあねぇ」

ゆきこ「どうしたのなつこ? どういうこと?」

なつこ「だって私たちの生年月日さえ分からないようじゃ未来予知なんて言えないじゃない。あんなの全くの嘘だったのよ」

ゆきこ「まぁ、ほんとだわ?!」