【GL】ずるいひと

スポンサーリンク

ずるいひと800x500

Illustration by うみの


香子(かおるこ):
26歳。司書でふんわりしたロングヘアの眼鏡のお姉さん、少し恥ずかしがり屋な一面もある。
小犬みたいに懐いてくる花月を可愛く思っているし時々からかいたくなる。

花月(かづき):
18歳。女子高生で人懐っこい性格。
どちらかと言えばスポーツとかのアウトドア派で、あまり本は読まなかったが香子の影響で本が好きになり図書館通いをするほどになる。でも本目的というより香子に会いに来ている。


花月「カコさん、忙しくないといいんだけどなぁ……」

扉を開けた先にある紙のさらりとした匂いと静けさに包まれた空間で、見慣れた白いリボンバレッタで飾られた黒髪を見つけた。

久しぶりに見るゆらゆらと揺れる柔らかそうな髪に触れたくなり、本を棚に戻す事に集中し私に気付かない彼女の後ろにそっと近づいた。

花月「カコさん、今ぎゅーってしてもいい?」

本を戻す手を止めて、少し困ったような笑いが含まれた涼やかな声が私の耳に注がれた。

香子「…花月ちゃん、【カコ】じゃなくて【カオルコ】だってば。それに見ての通り私はいま仕事中なんだけどなぁ」

花月「ん、知ってる。でも【カコ】さんって呼んだ方が私だけ特別な感じするでしょ?
お仕事中なのは分かるけどさ、カコさんのお仕事してる背中見てたら抱きつきたくなっちゃって」

香子「この前みたいに急に後ろからタックルしてこないだけ成長したのかな……?
あの時は本当びっくりしたんだよー
香子さんでもあんな大声でるんですねって他の司書さんに笑われちゃったんだからね」

くすくす笑いながら肩を竦(すく)めるカコさんに見惚(みほ)れそうになるのを誤魔化すように捲し立てる。

花月「期末テストで忙しくてなかなかカコさんに会えなかったからさー、嬉しくってつい……
ごめんね、でも驚くカコさんも新鮮で可愛かったよ!」

香子「もう……。ここは図書館なの忘れないでね?
花月ちゃん期末テストだったんならココで勉強したら良かったのに。
休憩中で良ければ勉強教えてあげたよ?」

花月「んー最初はそれも考えたんだけどさ、カコさんといると勉強どころじゃなくなりそうで……」

香子「あら、私じゃ、チカラ不足?」

珍しくつい、と顔を背けた拗(す)ねた様子のカコさんに慌てた。

花月「そ、そんなことないって! カコさんの教え方上手いし解りやすかったもん!
でも、カコさんが勉強教えてくれるってだけでドキドキしちゃって……
絶対テスト勉強どころじゃなくなるって思ってココにくるの我慢してたんだよ!」

香子「ふふっ、冗談よ。
じゃあ頑張った花月ちゃんに、テストお疲れ様って事で、おねえさんがなにか美味しいもの、ご馳走しちゃおうかな」

花月「本当!? やったぁ! ありがとっ! カコさんっ」

香子「そろそろ閉館で人もいなそうだし早く片付け終わらせちゃうね。すぐ終わるから大人しく待っててね?」

花月「はーい! そしたらその本ちょうだい、私が棚に戻してくるからカコさんは閉館準備しててよ」

香子「ありがとう、そこの列の一番奥の棚に同じ本のシリーズがあるから並べておいてね」

――カコさんに渡された本を抱え教えてもらった棚に本を戻していく。既に館内に人の気配はなく、カウンターに戻ってきて身近な椅子に座りカコさんを眺める。

花月「(パソコンに向かってる時のカコさんって仕事できる女! って感じで格好いいなぁ……
私ももっと大人になれば、カコさんに妹扱いされなくなるのかな……)」

香子「花月ちゃんお待たせ、準備できたからご飯食べに行こうか」

花月「お疲れ様! あのさ、この前カコさんと食べに行った隠れ家みたいなオムライスのお店行かない? あそこの卵ふわっふわですごく美味しかったし」

香子「いいね! 確かあのお店って今は新しいメニューが出てたはず……
せっかく花月ちゃんが気に入ってくれたんだしオムライス食べに行こう」

花月「カコさんって美味しいお店色々知ってるから、待ってる間ずーっとどこにしようか迷ってたんだよね。新メニューってどんなかなぁ?」

香子「ふふ、本も大好きだけど美味しいものも同じくらい大好きだもん。
新メニューは私もまだ食べてないからなぁ……
花月ちゃんと一緒に食べに行きたいなって思ってたのもあるけど……」

月明かりに照らされたカコさんの少しはにかんだ顔が愛おしくて抱き締めたくなる衝動を抑えるのに必死になっていると、ほっそりした指がするりと私の指に絡まってきた。

香子「花月ちゃん……」

花月「カコさんどうし……あの、手、繋がって…」

香子「駄目かな? 久しぶりのデートだから手を繋ぎたいなぁって……
花月ちゃん、前に手繋ぎたいって言ってたでしょ?
あの時は照れくさくて、イヤって言っちゃったけど夜なら暗いから……ね?」

花月「覚えててくれたんだ……
へへ、早速ご褒美もらっちゃった!」

香子「そんなに喜んでもらえるなら、恥ずかしがらないでもっと早く手繋いじゃえば良かったかな」

花月「んー…それはそれですっごく嬉しいけど……
カコさんの照れてる顔とか、恥ずかしがり屋さんなのに私の為にこうやって頑張ってくれる姿も可愛くて捨てがたいんだよねー。
だから今のまま、カコさんのペースでいいんだよ?
私はカコさんがしてくれるから嬉しいしドキドキするんだもん」

香子「花月ちゃん……ありがとう。
なんかさ、こうやって手を繋いでるとドキドキしてるのまで伝わっちゃいそうでやっぱり照れるね」

花月「カコさんって恥ずかしがり屋さんのわりにこっちが照れることをさらっと言っちゃうよね……ホント可愛すぎてズルい」

香子「そう? 私は花月ちゃんの行動の方が可愛いと思うよ、小犬みたいで」

花月「なにそれ!? 私はカコさんの犬じゃなくて、コ・イ・ビ・トなんですけどー!?」

香子「だってたまに、しっぽでも振ってるんじゃないの? ってくらいべったりしてきたり、飛びつくように抱きついてきたりするでしょ?」

花月「ええー……それは愛情表現であって別に犬っぽくないと思うけどなぁ……。それにさ、犬ならこんな事はしないでしょ?」

香子「こんな事って……ちょっと、花月ちゃん顔近すぎ……んっ」

まだ私の意図に気づいていないカコさんの唇を啄(ついば)むようにキスをすると、柔らかな唇の感触とともに出会った頃と同じ甘い金木犀(きんもくせい)の香水が鼻を擽る。

花月「…ン…ほら、犬はこんな事してこないでしょ?
私ね、カコさんの唇柔らかくて好き、髪とかもいい匂いがして、もっと欲しくなっちゃうな」

香子「もうっ! 人通り少ない道だけど、ここ外だよ!
……次からは外ではしちゃダメだよ?」

花月「ちゃんと人いないの確認したってばー! ねぇ、【外ではダメ】って事は外じゃなきゃキスしたりそれ以上のこと、してもいいってことだよね?」

花月「……だって私たちコ・イ・ビ・ト・ド・ウ・シでしょ?」

香子「ほら! もうすぐお店着くから行こう。私お腹空いちゃったよ」

花月「あー! 誤魔化したー! もー!
せっかくのデートだし、ご飯食べたらカラオケかカコさんのおウチ行きたいなー」

香子「そうだね、それなら私の家においでよ。花月ちゃんが見たいって言ってた映画、レンタル開始してるし借りていこう?」

花月「やった、ご飯もおウチデートも楽しみだね」

香子「明日は休みだから夜更かししちゃおっか」

花月「カコさん」

香子「なぁに?」

花月「大好き! 私カコさんのこと大好きだよ!!」

カコさんは静かに微笑んで、返事をくれるかわりに私の手をぎゅっと握り締めた。

END

スポンサーリンク
レクタングル (大)_336 x 280
レクタングル (大)_336 x 280

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル (大)_336 x 280