あなただけでも最後まで

黒犬:
(くろいぬ オス)

白犬:
(しろいぬ メス)

年取った犬:
(としとったいぬ オス)

三毛猫:
(みけねこ メス)
若い犬:
(わかいいぬ オス)

人間1:
(にんげん1 センターの職員)

人間2:
(にんげん2 引き取り手)


黒犬「ああまた・・・誰かが連れてこられたね」

白犬「若い子かしら」

黒犬「でなければいいがね」

年取った犬「若い子は・・・なあ、出来ればこんなところで・・・」

黒犬「じーさん、あんたさすがに諦めたかい?」

年取った犬「諦める? いや諦めないさ、最後まで俺は。だがね、若い子はなあ」

白犬「そうよ、若い子はここに来てほしくないわ」

人間「ほらほら、ここにお入り。すまんなあ、まだ子供なのになあ。俺が引き取れれば・・・いやいや」

若い犬「え? 何? ここにって・・・どうして? 僕のパートナーはどうしたの? どうして僕だけここに入らなくちゃいけないの?」

白犬「ああ、まだ若い子だわね」

黒犬「(ため息)」

若い犬「ねえ、ここはどこ? 何でこんなに犬ばかりいるの? どうしてここに集められてるの?」

年取った犬「お前さん、そう吠えるな」

若い犬「だって、僕のパートナーがいないんだもの。どうしたらいいか解らないんだもの」

白犬「ここにお座りなさい、ちょっと落ち着いて」

若い犬「でも・・・」

黒犬「あんた、パートナーに連れてこられたんか?」

若い犬「って言うか、何時もと同じに散歩してドライブして、でもここで降ろされて。僕だけさっきの人間に預けられて」

黒犬「お払い箱か」

若い犬「お払い・・・箱・・・?」

黒犬「いらん犬だってことさ」

白犬「やめなさいよ、この子に八つ当たりは」

黒犬「八つ当たりなもんか、事実じゃないか」

白犬「八つ当たりだって、解ってるはずよ」

黒犬「・・・」

年取った犬「お前さん、幾つかな?」

若い犬「えと、1歳だって言われてた」

年取った犬「1歳ならなあ、譲渡の可能性もあったはずだが。何故こっちに入れられたのか」

若い犬「譲渡って・・・他の人間に上げられちゃうってこと?」

年取った犬「まあ、そう言う事だ。だが生き延びられるだけマシと言う事もある」

若い犬「生き延びられる・・・?」

年取った犬「聞いたことは無いかな、動物愛護センターと言う名前を」

黒犬「愛護が聞いて呆れるぜ」

白犬「うるさい」

年取った犬「ここはな、そう言う名前の場所なんだよ。パートナーがいなかったり、パートナーに要らんと言われた犬や猫が連れてこられる場所なんだ」

若い犬「ま、まさか・・・嘘だよ、あの人がそんなことするはず・・・・するはず・・・」

黒犬「事実さ。俺だって、俺だってさ。あんなに一緒に暮らして楽しかったのに、でかくなりすぎたってだけで、ここに連れてこられたんだ」

白犬「おかげでひねちゃってね、この人。なので血統書付きの癖に譲渡も出来ないって言われてここにね」

黒犬「うっせえ、お前さんだって」

白犬「そうよね、目の見えない犬ってだけで、ここに連れて来られたんだわ私」

若い犬「そんなことで? そんなことで僕たち捨てられたの? おじいさんは?」

年取った犬「俺かい? 俺はパートナーが身体悪くして家にいられなくなって、パートナーの子供とかが年寄りの犬は要らんと言って、ここにな」

若い犬「そんなあ」

黒犬「なのにこのじーさんは、今でも迎えが来るとか、誰か他の人間が引き取ってくれるとか、信じてんのさ」

年とった犬「まあ俺はな、結構長く生きたしそれなりに楽しい思いもしたし」

白犬「うん私も、楽しいことも一杯あった」

年取った犬「だからまあ、仕方ないかなとも思うがな。それでも誰かが来てくれるような気も、まだしとるんだよ」

若い犬「・・・・皆さん・・・僕だけじゃないんだ」

年取った犬「だがなあ、お前さんは若すぎる。何とかなればいいんだが」

三毛猫「あーあ、隣の犬ッころたちうるさい。眠れやしないじゃないの」

若い犬「え? どこに? 誰?」

白犬「近くのケージに猫たちがいるのよ」

三毛猫「どうせあと少しの命なんだから、今のうちに寝て夢見てって思ってるのにさあ。あんたらのおかげで、寝られないじゃないの」

若い犬「あと・・・少し・・・?」

三毛猫「ああ、新入りだもんね。うちらの命はあと、せいぜい1日か2日ってとこよ」

年取った犬「猫のに・・・先に言われてしまったか」

若い犬「そうなの? このまま死んじゃうの僕ら」

白犬「ごめんね、もっと少しずつ教えてあげたかったんだけど」

黒犬「仕方ないだろ、猫の連中にデリカシーなんてあるわきゃない」

白犬「あんたが言うな」

三毛猫「言葉飾っても仕方ないでしょ。事実教えてやった方がいいのよ」

年取った犬「まあ、なあ」

若い犬「・・・僕、本当はここに入った時に・・・そうじゃないか、って思ったんです」

三毛猫「あら、いい勘してるのね。じゃあ一ついいこと教えてあげる」

若い犬「何?」

三毛猫「ここにはさ、本当は譲渡目当ての人間は来ないのよ。でもねさっき、譲渡用じゃない犬と猫が欲しいって、誰かが言ってたの聞いたのよ」

年取った犬「猫の、本当かね」

三毛猫「一応人間の言葉は解るからねえ、間違いない。だからもし誰かが来たら、尻尾振ってアピールすることね。そうすれば連れてってくれるかもよ」

白犬「いい話じゃないの、そうしなさい」

黒犬「そうだな、お前ならまだ若いし人間受けもしそうだ」

年取った犬「お前さんのパートナーじゃないのが残念かもしれんが、命あっての物種とも言う。やってみてはどうかな?」

若い犬「・・・・どうなんだろう、僕・・・生きたいのかなあ。僕のパートナーが僕を捨てた世界で、生きていたいのか・・・解らないんだ」

白犬「シッ、誰か来た」

人間1「ここです、この子たちは明後日・・・・処分されます」

人間2「何てこと、もし出来れば全部引き取りたいくらいだけど。それはとても無理ですねえ」

人間1「お気持ちありがとうございます」

人間2「私もいい年ですので、若い子を引き取ってももしかしたら最後まで一緒にいられないかもしれません。なので無理を言ってこちらの子たちを」

人間1「どの子も大人しい子たちです」

人間2「あの、結構年取ってるワンチャンは」

人間1「かなり可愛がられていたんですが、飼い主が施設に入ってしまって。ご家族が飼えないと」

人間2「それは、気の毒な。飼い主さんもワンチャンも」

人間1「です」

人間2「ワンちゃんの最後の何年か、ひょっとしたら少しお手伝いできそうですね。あの子をいただきます」

年取った犬「な・・・・何でだ、俺か?」

白犬「まあ、良かった」

黒犬「ほう、信じるものは救われるとか、どっかの人間が言ってたが」

若い犬「良かったです、行ってください」

年取った犬「だがお前さんの方が、まだ若いし未来も」

若い犬「いいんです、僕・・・パートナーに捨てられた・・・から・・・もう・・・」

白犬「幸せになってください」

黒犬「じーさん、俺ももうちょっと信じてみるわ」

若い犬「ありがとう」

人間2「ねえ、私のパートナーになってくれるかしら。あなたさえ良かったら」

年取った犬「俺でいいんですか、一緒に行っていいんですか?」

人間2「こっちの猫ちゃんも一緒に行くのよ」

三毛猫「腐れ縁かしらね」

年取った犬「俺、まだ人生捨てたもんじゃないって・・・確信できた」

三毛猫「私もよ」

年取った犬「みんな、ありがとう。みんなの分まで、俺たち生きるから」