幼馴染みは斯(か)くも美しき

アキト:
ツッコミ気質の男。

ユウキ:
天然で愛が深いアキトの幼馴染み。女。

ミサキ:
すべてを分かっているポジションの女。


ユウキ「さっさと起きろバカ! このままだと遅刻するぞ」

アキト「あと五分」

ユウキ「おらー!」

アキト「おま、普通顔面殴るか?!」

ユウキ「幼馴染みの特権って奴だな」

アキト「そんな物騒な特権渡した覚えないわ」

ユウキ「そう、あれは今日のようにぽかぽか陽気の」

アキト「いや、回想に入るなよ。つうか、その回想捏造(ねつぞう)だろ。俺、お前に殴っていいなんて特権渡してないからな」

ユウキ「だからアキトはモテないんだ」

アキト「どういう意味だよ!」

ユウキ「女はな。殴らせてくれる男に惚れるものなんだ」

アキト「なんだそのサンドバッグ的な扱いは」

ユウキ「男はみな、サンドバッグ」

アキト「怖えーよ。なんだよその発想。お前、本当に女かよ」

ユウキ「百人中九十九人に女かよって突っ込まれる私。すごい」

アキト「あとの一人は何だよ」

ユウキ「わ・た・し」

アキト「自分まで数えてんじゃねえよ」

ユウキ「私ったらお茶目だな。このこの」

アキト「何、その無駄な天然アピール。寒気がするわ」

ユウキ「服、着てないからだろ」

アキト「あっ」

ユウキ「どっちが天然なんだか。私は先に行ってるからな」

アキト「お前、先に言えよ。服着てないって」

ユウキ「だったら全裸で寝なければいいじゃないか」

アキト「服を着ると寝不足になるんだよ!」

ユウキ「イヤな体質だな。じゃ」

アキト「待て待て置いていくな。せめて俺の着替えが終わるまで待て。……えっ、本当に行くの? 待てって待て待て待て」



ユウキ「遅かったじゃないかアキト」

アキト「本気で置いていきやがったな」

ユウキ「起こしてやったんだからありがたく思え。お前が起きなきゃ、私まで遅刻するところだったんだからな」

アキト「ちょっと待て。まるで俺が遅刻したみたいに言うんじゃねえよ。遅刻してないからな普通に間に合ったからな」

ユウキ「私が起こしたんだぞ。遅刻するかもしれないのに。わざわざお前の家に行って起こしたんだぞ。この私が」

アキト「感謝してるよ! お前のおかげで遅刻せずに済んだ。これで満足か!」

ユウキ「ふむ、分かればよろしい」

アキト「面倒くせぇ」

ミサキ「ホント仲良しだねぇ。羨ましいねぇ。私も男子とイチャつきたいものだねぇ」

アキト「ミサキ、俺ら別に仲良くねえし、イチャついてもいないからな」

ユウキ「がーん。私を愛してるといったのに、あの言葉は嘘だったんだな。酷い」

女子一同「アキトー!」

男子一同「ユウキちゃんを弄ぶとは許すまじ」

アキト「待て待て。明らかに嘘だって分かるだろ。何殺気だってんだよ。ちょちょちょ、冗談だよな。冗談……だよな」

男子一同「ユウキちゃんは我らのものだー!」

アキト「追いかけてくんじゃねえ!」

ミサキ「彼らも仲良しだねぇ」

ユウキ「ふむ、幼馴染みとしても喜ばしいことだ。あいつに友達ができて、私嬉しいぞ」

アキト「お前は俺の母親-!」

ミサキ「追いかけられてる状況でも突っ込むんだねぇ」

ユウキ「どっちかといえば、私はお前の妻だろー!」

女子一同「ひゅーひゅー」

ユウキ「テレテレ」

男子一同「地獄に落ちろ」

アキト「火に油注いでんじゃねぇー」



ユウキ「追いかけっこご苦労さん」

アキト「お前のせいだぞ」

ユウキ「私の色香のせいでお前を……ぷっ」

アキト「なんで笑ってるんだよ」

ユウキ「顔中に落書きが」

アキト「あいつら、絵の具まで持ち出しやがったからな」

ユウキ「洗えばいいじゃないか」

アキト「水道を全部占拠されてる。俺に奴らを突破するだけの力はない」

ユウキ「仕方ない」

ユウキ『マイクテストー、マイクテストー。今から先着5名様にハグをプレゼント」

男子一同「うおおおー」

ユウキ「アキト、今のうちだ」

アキト「よっしゃー。ばしゃばしゃ、よしスッキリ」

男子一同「ハグー」

ユウキ「先着五名たちはお前たちか。よし、アキト行け」

アキト「はい?」

ユウキ「早くハグをしろ。彼らも待ってるぞ」

アキト「俺がやんのかよ。つうか誰も待ってねえだろ」

男子一同「チラッ、チラッ」

アキト「待てやなんで準備してんだよ。心なしか嬉しそうだな、おい!」

男子一同「お、おう」

アキト「えっ?何その感じ。やらないとダメ」



ミサキ「歴史に残る一枚だったねぇ」

アキト「黒歴史のほうだけどな!」

ユウキ「本当にハグをするとは」

アキト「なんで引いてんだよ。けしかけたのお前じゃねえか」

ユウキ「冗談のつもりだった」

アキト「だろうな。でもお前がやるよりは、何百倍もマシだと思ったんだよ!」

ユウキ「えっ。あっ、うん。そ、そうか」

アキト「あっ、うん」

ユウキ「……」

アキト「……」

ミサキ「俺、実はユウキのことが好きなんだ。……アキト、私もお前が好き」

女子・男子一同「ひゅーひゅー」

アキト「何してるんだお前ら」

ミサキ「気持ちを代弁してみました」

女子・男子一同「カップルの誕生を祝ってみました」

アキト「はぁ?」

ユウキ「みんなありがとう。私、幸せになるからな」

アキト「何、乗ってんだよ」

ユウキ「私はお前が好きだぞ。殴っても本気で怒らないからな」

アキト「それだけかよ」

ユウキ「そもそも嫌いなところなんて一つもないしな。なぁ、アキト、お前は私をどう思ってるんだ?」

アキト「……好きだよ」

アキト「――お前がいないと生活できないくらいには」