素直に叫べば笑顔がやってくるさ

一忠(かずただ):
男性。中学2年生。
小学1年生のときからずっと理絵のことが好き。
だけど素直になれなくて、どうしてもちょっかいを出してしまい、理絵を泣かせてしまう。
自分が原因とはいえ、理絵が泣いて悲しむ姿をもう見たくないため、思い切って告白しようと決意する。
しかしどうやって告白すれば良いか分からないので、親友2人に協力を頼む。

理絵(りえ):
女性。中学2年生。
小学1年生のときからずっと一忠に色々言われていて、言われるたびに泣いてしまう。
だが実は、一忠に何か言われることはさほど気にしておらず「今日もまた泣いたな」くらいにしか思ってない。
親友のミサとは同じバレー部。

浩司(こうじ):
男性。中学2年生。一忠の親友その1。
一忠と理絵とは小学生のときからの付き合い。
一忠が理絵のことを好きなのをずっと知っている。

マサ(まさ):
男性。中学2年生。一忠の親友その2。ミサの双子の兄。
一忠、理絵、浩司たちとは別の小学校。
中学1年生のときにこの3人と同じクラスになり、一忠と浩司と仲良くなる。

ミサ(みさ):
女性。中学2年生。理絵の親友。マサの双子の妹。
理絵と小学校は別だが、中学でバレー部に入ってから知り合った。


一忠「悪いなマサ、家に上がらせてもらって」

浩司「いくら土曜日で休みだからって、一忠がわがまま言って悪いな」

一忠「浩司も乗り気だっただろ。今このリビングで一番寛(くつろ)いでるのはお前だぞ。2人がけソファでめちゃめちゃ寛いでるじゃん。隣で座ってるマサよりスペース取ってるんじゃないかお前」

浩司「とは言いつつ一忠も1人がけソファに腰掛けて肘ついてるくらいには寛いでるよね」

一忠「なんだと」

マサ「まあまあ気にしないでいいって、今日は家に誰もいないし。珍しくミサも家にいないから」

浩司「そういえば俺、ミサちゃんとは喋ったことないわ」

マサ「俺たちと浩司たちは今まで小学校も違ったし、ミサにいたっては中1のときも中2のときも、俺と浩司と一忠とは別のクラスだから、喋る機会がなくても仕方ないさ」

浩司「どんな子?」

マサ「大人しいよ。あんまり人と話したがらないかも。ミサが誰と仲が良いかとかも、俺は全然知らないや」

浩司「へー。双子だからお互いのことなら、何でも知ってるもんだと思ってた」

マサ「さすがに別の人間同士だからね、分からないことだってたくさんあるよ」

浩司「なんか話が深いな! もうちょっと双子エピソードあるなら聞きたい!」

一忠「ちょっと待って待って」

浩司「なんだよ一忠、せっかく今から良いところになりそうだったのに」

一忠「今日は何のために集まってもらったと思う?」

浩司「分かってる。集まった趣旨は覚えてる。でもちょっとくらい脱線しても良いかなって。ここはマサの家だぞ、マサの話を優先しよう」

一忠「脱線するも何も、俺の話は何も始まってないだろ」

浩司「一忠はせっかちだなー、せっかちな男はモテないぞ?」

一忠「うっ!」

浩司「今日集まったのは『素直になれない一忠がどうやって理絵に告白するかの会』だよな!」

一忠「そういう風に言うなー!」

マサ「一忠が昔から理絵ちゃんに色々やらかしてきたことは聞いてるけどさ、正直びっくりしたなあ」

浩司「俺が個人的に面白かったのは『俺の方がスカートが似合う発言』だわ」

一忠「やめてもう思い出したくない」

浩司「理絵が着てきた服が可愛かったんだけど、一忠が素直に『可愛い』と言えないせいでなぜか発した言葉、それが『俺の方がスカートが似合う』。小4くらいのときだっけ?」

一忠「うるさい! 俺だってどうしてあんなことを言ったのか、未だによく分からないんだ!」

マサ「それよりも一忠、今のままだと本当に理絵ちゃんに好きだなんて言えないと思うよ。正直いざ告白となったときに、また変なことを言い出す可能性の方が高いと思う」

一忠「かくいう俺もそれは否定できない…」

マサ「だからね」

一忠「うん」

マサ「諦めた方が良いんじゃないかな」

一忠「マサまで!?」

マサ「だって小1の頃から、何かにつけていつもちょっかい出してたんだろ?」

一忠「うん…」

マサ「それで毎日、理絵ちゃんを泣かせてたんだろ?」

一忠「うん……」

マサ「告白してもフラれるよ、諦めよう」

一忠「それだけは嫌だー!」

浩司「そもそもなんで今になって、告白しようなんて思ったのさ」

一忠「俺だってさ、いくら自分が色々なこと理絵に言ったりやったりしてさ、理絵を泣かせてきたからとは言っても、さすがに俺だってへこむんだよ」

マサ「へこむっていうのは?」

一忠「俺だって、好きな女の子が泣いて悲しんでる姿は見たくないわけ。理絵を泣かせるたびに、俺はまた理絵に悪いことしたなって思って、夜になるとへこむんだよ」

浩司「え、今まであんなに色々やってきて毎日理絵ちゃん泣かせて、それなのにお前は毎晩へこんでたの? 少しは反省すれば?」

マサ「言っちゃ悪いけど、浩司の口から物凄い正論が出てきて驚いた」

一忠「あー、どうやったら理絵に好きって言えるんだろ…」

浩司「叫んでみれば?」

一忠「なんだよその提案! 他にも何かあるだろ!」

浩司「まあまあ試しに叫んでみろよ」

マサ「うちの家、それなりに防音加工されてる家だから、家の外には聞こえないよ」

一忠「え、マサも? マサも俺に叫べって言ってるの?」

マサ「一忠はそれくらいやらないと、気持ちに踏ん切りがつかないんじゃないかな」

浩司「ほらほら、マサもこう言ってることだし! 一忠、叫んでみるんだ!」

マサ「告白本番までの練習と思って」

一忠「うーん、なんかもうどうでもよくなってきた……理絵、好きだー!」

浩司「凄い! 言えてる!」

マサ「まさか本当に叫ぶとは思わなかったけどね」

一忠「今までお前を泣かせてきたけど、本当は可愛いって言いたかったんだー!」

浩司「お前は頑張ればできる子だ、一忠!」

マサ「その調子その調子」

一忠「素直になれなくてごめん! でももうお前が泣いて悲しむ姿は見たくない! もう悲しませない! 理絵、好きだー!」

浩司「もう悲しませないってさ、なんかの歌の歌詞にありそう」

マサ「わかる」

ミサ「あの」

一忠「理絵、小1の頃からずっと好きだったー!」

浩司「私もよー!」

マサ「浩司はそういう茶々を入れるなってば」

ミサ「マサ」

マサ「え、ミサ!?」

一忠「理絵、好きだー!」

浩司「いっけーいけいけいけいけ浩司!」

マサ「あのさミサ、いつの間に家に帰ってきてたの?」

ミサ「ついさっきだけど…家の中に入ったら、リビングから叫び声が聞こえてビックリした」

一忠「俺は理絵の笑顔が見たいんだー!」

マサ「ところでミサ、隣にいる人は?」

一忠「好きだ、理絵ー!」

ミサ「同じバレー部の友達だよ」

マサ「そうだね、ミサはバレー部だもんね」

一忠「理絵ー!」

マサ「理絵ちゃんもバレー部だもんね、そりゃこういうことも起きちゃうよね」

一忠「理……え!?!?!?」

理絵「やっほー、一忠」

一忠「な、なんで理絵がここに!?」

理絵「それはこっちも同じこと言いたい」

ミサ「今日は理絵ちゃんと遊んでたんだけど、前に理絵ちゃんから借りてた漫画があったから、それを返すついでに今日はもう理絵ちゃんと家で遊ぼうと思って、家に帰ってきたんだけど…マサがいたの忘れてた」

浩司「…理絵、今の一忠の叫び、全部聞いてた?」

理絵「うん」

浩司「どう思った?」

理絵「うるさいなーって思った」

一忠「俺の人生終わった」

理絵「けどね」

浩司「ん?」

理絵「一忠のこと嫌いじゃないよ、私」

一忠「え!?」

理絵「私はもともと泣き虫だし、確かに毎日泣かされてはいたけど『今日もまた泣いたな』くらいにしか思ってなかったから大丈夫」

浩司「理絵のメンタル強すぎじゃない?」

理絵「それに一忠は分かりやすい部分もあるからね」

一忠「なんだよ」

理絵「本当に私のことが嫌なら、『理絵』なんてわざわざ下の名前で呼ばないでしょ?」

一忠「ちょっ!」

マサ「図星なんだな」

理絵「だてに小1からずっと同じクラスメイトなわけじゃないのよ」

浩司「理絵ってこんなに男前だったっけ」

理絵「一忠」

一忠「はい」

理絵「私の笑顔が見たいなら、もっともっと、好きって言ってみれば?」

一忠「理絵、それって!」

理絵「もうちょっと自分で色々考えてみてね」

ミサ「理絵ちゃん、そろそろ私の部屋に行く?」

理絵「そうだね」

一忠「おいちょっと理絵!」

マサ「よく分からないけど、一忠を叫ばせてたら丸く収まりそうになってるな」

浩司「というか理絵が意外だったわ。あいつなかなかやるじゃん。このまま上手くいくといいな」

マサ「なるんじゃないかね。このまま一忠が叫び続ければ」

浩司「それはそれでキツイな」

一忠「理絵、好きだー!」