【BL】山田の高校生活10日間の黒歴史

山田(やまだ):
高校3年の男子

鈴木(すずき):
山田の後輩の男子


某男子校では、男が男に告白されることは日常茶飯事だった。
今年3年になる山田はそこそこイケメンだったので、1年の頃からよく告白されてきた。
そのため最早そんなのは慣れっこだったが、その日の告白だけは何だか違っていた。

鈴木「山田先輩。期間限定で付き合ってください」

山田「期間限定?」

鈴木「はい。今日付き合って、10日後に別れる予定です」

山田「は!? 最初っから別れる前提なの!?」

鈴木「ええ…とても残念ですが、10日後には同じクラスの高橋と付き合うことになってるので…」

山田「じゃあ今からもうその高橋と付き合えば良いじゃん」

鈴木「いいえ、ダメです。僕は高校3年間でこの学校の生徒100人と付き合うと目標を立てたんです。目標達成のためには1人につきおおよそ10日しか付き合えないんです」

山田「いや…ちょっと俺無理だわ、ゴメン」

鈴木「ダメです! 僕はこの学校でイケメンな順に付き合うと決めているんです! 今はちょうど山田先輩の順番なんです!」

山田「なんだよそれ! お前の都合なんかしらねーよ!」

鈴木「なに言ってるんですか! もしここで山田先輩が棄権したらイケメンの序列から外れることになるんですよ!?」

山田「てか棄権ってなんだよ! 別にお前となんて付き合いたくねーわ!」

鈴木「ひどい…僕が魅力的じゃないとでも言いたげですね…」

山田「いや、むしろどの辺が魅力なの?」

鈴木「僕はこの学校で上位100人のイケメンと付き合うと入学式で公言しました」

山田「え、入学式で!?」

鈴木「新入生代表として高らかに宣言しました」

山田「マジかよ! 馬鹿じゃないの!?」

鈴木「その為、皆が僕のことを応援してくれています。そんな僕の告白を断るということは…どういうことか分かりますね?」

山田「ゴクリ…なんだそれ…確実に脅迫じゃねーかよ!」

鈴木「僕のバックには全校生徒はおろか校長もついているんです。大人しく僕と付き合ってください」

山田「くそ…! そんな脅迫に屈するもんか!」

鈴木「ほう…そうですか。先輩の今学期の成績がどうなっても知りませんよ?」

山田「ひっ…! わ、わかった…じゃあ付き合うよ」

鈴木「やったー! じゃあ10日間よろしくお願いします」

こうして山田は後輩・鈴木と期間限定で付き合うことになった。
脅迫までしてくる後輩なので一体どんな恐ろしい出来事が待っているのだろうかとビクビクしていた山田だったが、意外な事に後輩・鈴木は何もしてこなかった。
そうこうしている内に10日が経過――あっという間に別れの日がやってきた。

山田「おい鈴木。今日でお別れだな」

鈴木「はい、そうですね。短い間でしたがとても楽しかったです。ありがとうございました」

山田「楽しいっつっても一緒に動画見たとかそんくらいしかしてないけどな…」

鈴木「そうですけど、山田先輩と一緒にいると飽きなくて…楽しかったです」

山田「そ…そうか?」

鈴木「はい。できればこのまま山田先輩と付き合い続けたいくらいです」

山田「おう…。まぁ…俺は別に付き合い続けてもいいんだけどさ…お前は無理なんだろ?」

鈴木「はい。次は高橋と付き合うことになっているので…」

山田「そうだよな…」

鈴木「もうお別れなのにこんなこと言うのアレですけど…山田先輩は今迄付き合った人の中で一番よかったです」

山田「えっ…」

鈴木「あ…こんなこと言ったら別れづらくなっちゃいますよね」

山田「いや、別にいいって! その…嬉しいよ」

鈴木「今まで付き合ってきた山田先輩以上のイケメンは、みんなナルシストだったり俺様だったりして結構イラッとしたんですけど山田先輩はそこそこ優しくて…」

山田「お…おう。まあ俺は別にそこまで自分のことイケメンとは思ってないしな…」

鈴木「そういう謙虚なところもすごく良かったんです」

山田「そうか? なんか俺、今迄の人生で一番褒められてる気がするわ」

鈴木「それだけじゃないんです。山田先輩は成績もそこそこだし素行もそこそこ悪いじゃないですか?」

山田「んんっ…!?」

鈴木「そういう中途半端なところも魅力だったんです。ほら、僕って新入生代表になるくらい頭も良いし素行も良いしこうやって目標に対して真摯に生きてるじゃないですか?」

山田「は…!?」

鈴木「そんなほぼ完璧な僕にとって、おおかた全部が中途半端な山田先輩はすごく新鮮っていうか…見ていて飽きなかったんです」

山田「ちょ、お前それ褒めてないだろ!?」

鈴木「え? 元々別に褒めてないですよ?」

山田「おまえな!!」

鈴木「できればこのまま山田先輩とずっと付き合い続けたいです。そうすればずっと観察できるのに…」

山田「観察って! 俺は動物じゃねーんだよ!!」

鈴木「ヒト科の動物ではありますけどね」

山田「くそっ、あげ足とんな!!」

鈴木「うわーやっぱ山田先輩って面白いな。次に付き合う高橋は僕と同じくらい頭が良いから話が合い過ぎてつまんないと思うんですよね。はぁ…残念だなぁ」

山田「鈴木てめぇ…おぼえとけよ!!」

鈴木「はい! 山田先輩と付き合った10日間のこと、絶対忘れません!!」

山田「やっぱ忘れろ!!」

こうして山田は後輩・鈴木との10日間の付き合いを終えた。
高校卒業後、山田がこの10日間を「黒歴史」と呼んだことは言うまでもない。

END