【シスコン】ずっと兄妹

真理:
シスコンの兄に悩む高校1年

雅紀:
真理を溺愛するシスコン

智也:
雅紀の親友。真理が好き

由衣:
雅紀と真理の幼馴染


真理「お兄ちゃん!いい加減にして!」

真理は、怒って兄の部屋を訪れた。

雅紀「何だ突然」

真理「私のクラスの男子に、変な事を言ったでしょ!」

雅紀「変な事って?」

真理「私に手を出すなとか言ったみたいじゃない!」

雅紀「ああ、それか。当たり前だろ! お前みたいなかわいい子がクラスにいたら、男共ががっつくに違いないからな。ちゃんと注意しとかないと…」

真理「バカバカ! お兄ちゃんが変な事言ったせいで、クラスの男子に私が引かれちゃったじゃないの!」

雅紀「ああ、それならちょうどよかった! これで、真理がクラスの男に…イテッ!」

真理は、持っていた雑誌を放り投げた。

真理「お兄ちゃんなんて、大嫌い!」

智也「アハハ、雅紀はそんな事をしたのか」

真理「笑い事じゃないよ。お兄ちゃんがあんな事をしたせいで、入学早々、男子が私に全く声をかけてくれなくなったんだから」

次の日、真理は通う高校の屋上で、兄の親友でもある智也に昨夜の事を相談した。

智也「そうなの?」

真理「そうだよ! もう、私は彼氏を作ってバラ色の高校生活を送りたいと思っていたのに…。お兄ちゃんのせいで、さっそく躓(つまず)いちゃった」

真理はため息をついた。

智也「彼氏か~。真理も、もうそんな年齢なんだな」

真理「そうだよ! 私だって、もうすぐ16歳だもん」

子供っぽく頬を膨らませた真理の頭を、智也はポンポンと叩いた。

智也「別に、彼氏は同い年じゃなくてもいいんじゃないか?」

真理「え~。でも、先輩の知り合いいないし。まずは、同級生からと思って」

智也「ここにいるじゃん」

真理「…え?」

智也「今彼女いなくて、兄貴のシスコンに理解がある先輩が」

真理は、智也の顔を見る。
いつものようにからかっている風ではなく、智也の顔は真剣だった。

「少し考えさせてほしい」

とりあえずそう答えて、真理は智也と別れた。
全く想像もしていなかった突然の告白に、真理は戸惑っていた。
学校の帰り道、親友であり幼馴染でもある由衣に、真理は智也の事を告白する。

由衣「智也さん良い人だし、いいんじゃない?」

真理「そんな軽い感じで言う?」

由衣の答えは「付き合ってみたら?」という簡単なものだった。

由衣「付き合うって、そんなもんじゃないの? 別に深く考える必要ないでしょ」

真理「そうかなあ…」

由衣「智也さん優しいし、真理の初カレに申し分ないと思うよ。雅紀さんのシスコンにも理解あるしね」

真理「そう、お兄ちゃん! 智也さんと付き合うって言ったら、絶対怒るよ」

由衣「もしかしたら怒らないかもよ? 知らない男に盗られるよりは親友の方が良いって思うかも」

真理「そうかな? もう、めんどくさい! 一々こんな心配するなら、お兄ちゃんなんていらなかったよ!」

思わず口に出た、兄の悪口。
それに対しての由衣の言葉は、真理の予想外のものだった。

由衣「…そんな言い方ないんじゃない」

いつもは明るい由衣の、どこか怒ったような声を聞いて、真理は思わず由衣の方を振り向く。

由衣「雅紀さんは、真理が心配だからああいう態度をとってるだけでしょ。それなのに、いらないなんて、そんな冷たい言い方ないよ」

真理「…由衣? どうしたの?」

真理の問いかけに、由衣はハッと我に返る。

由衣「…ごめん、何でもない! 私、今日は寄るところあるから!」

慌てたように、由衣は真理の家とは反対方向へ走り去ってしまった。

真理「由衣、もしかして…」

真理は、その時初めて、由衣の隠された思いに気づくのだった。

その日の夜、真理は雅紀の部屋を訪ねた。

智也の告白、由衣の隠された思い。

今まで気づかなかった周囲の人間の思いにようやく気づいた真理は、ある決意を掲げ、それを雅紀に伝えに来たのだ。

雅紀「真理、どうしたんだ?」

部屋を訪ねた真理に、雅紀は嬉しそうに反応する。

真理「お兄ちゃん、話があるの」

雅紀「どうした? 何か嬉しい事でも…」

真理「私、智也さんに告白された」

雅紀「…は?」

突然の妹の告白に、雅紀はポカーンとした顔をする。

真理「その告白を受けようと思うの」

雅紀「え? え?」

真理「そういうわけだから!」

それだけを告げると、真理は雅紀の部屋を出る。

雅紀「真理? どういうことだ~」

雅紀の言葉には、反応しなかった。

次の日、学校が休みの土曜日。
朝、起きて部屋を出た真理は、リビングに降りてくる。
すると、そこには今は顔を合わせたくない兄と、智也がいた。
真理に、智也が気づく。

智也「真理…」

雅紀「真理! 今、こいつと話をしているから!」

真理「お兄ちゃん…?」

真理が驚いた瞬間、雅紀は智也を殴りつける。

雅紀「親友だと思ってたのに! よくも妹に手を出そうと思ったな!」

智也「冗談なんかじゃない! 真理ちゃんの事は本気だ!」

雅紀「まだ言うか!」

雅紀はまた智也を殴りつける。
それを見て、真理は慌てて智也の元へ駆け寄った。

真理「もうやめて!」

雅紀「真理、どけ! 今、こいつに…」

真理「何をしても、智也さんと付き合う私の気持ちは変わらないから!」

雅紀「…お前は騙されて…!」

真理「智也さん、少しお兄ちゃんと二人きりにしてほしいの」

真理は、智也の方を振り返る。

智也「え、でも…」

真理「大丈夫だから…」

真理は微笑む。
それを見て、しぶしぶ智也はリビングから出ていった。

雅紀「真理、本気なのか? 本当に智也と…」

真理「本気よ。智也さんは本当に私の事を思ってくれてる。智也さんが冗談で告白なんてしないこと、親友のお兄ちゃんが一番良くわかってるでしょ」

その言葉に、雅紀は押し黙る。

智也がシスコンの自分にも引かない「良い奴」だというのは、雅紀が一番よくわかっていた事だった。

雅紀「…でも…」

真理「ねえ、お兄ちゃん。私達、ずっと兄妹でしょ?」

雅紀「なんだ、突然…」

真理「智也さんとは、もしかしたら今後別れることがあるかもしれない。でも、私とお兄ちゃんは、死ぬまでずっと兄妹。関係は変わらない」

雅紀「…」

真理「恋人として、智也さんは好き。でも、家族としてお兄ちゃんが一番好き。それじゃ、ダメ?」

雅紀「…」

真理「少しでも嫌だと思ったら、すぐにお兄ちゃんに言うから。だから、智也さんとの事を認めて?」

雅紀「…わかったよ」

真理「お兄ちゃん!」

雅紀はため息をつく。

雅紀「嫌なことがあったら、絶対に言うんだぞ? 俺が雅紀を殴ってやるから」

真理「お兄ちゃん、大好き!」

抱き着いてくる真理を、雅紀は優しく受け止めたのだった。

智也「おい、何でお前がいるんだよ!」

智也と真理が付き合って初めてのデート。

待ち合わせ場所には、真理だけじゃなく、なぜか雅紀と由衣もいた。

雅紀「こっちもデートでたまたまお前らと同じ場所に行くだけなんだが、何か問題でも?」

智也「たまたまって、おい!」

じゃれつく雅紀と智也をしり目に、真理はある言葉に気づいた。

真理「そっちもデートって、まさか」

由衣「ふふっ」
由衣がほほ笑む。
それを見て、真理は由衣の恋が上手くいってる事を悟ったのだった。

真理「…これからも、Wデートが多くなりそう」

声は呆れているのに、その顔はどこか嬉しそうな、真理だった。