内緒なのでこんなことに

宗輔(そうすけ):
男性。高校2年生。主人公。
都留先生のことが好き。

千隼(ちはや):
男性。高校2年生。主人公の親友。
宗輔の片想いを陰ながら応援してはいるが、正直実らない恋だとは思っている。

都留先生(つるせんせい):
女性。保健室の先生。
周りには内緒でカナ先生と付き合っている。

カナ先生(かなせんせい):
女性。宗輔と千隼の副担任。
周りには内緒で都留先生と付き合っている。

加藤先生(かとうせんせい):
男性。宗輔と千隼の担任。
生徒たちからは都留先生と付き合っていると勘違いされている。
既婚者なのだが、なぜか既婚であることはあまり知られていない。


千隼「宗輔ー、いつまで保健室の前で突っ立ってるんだよ?」

宗輔「今日こそは! 都留先生に言うんだ! 『好きです、付き合ってください』って!」

千隼「まあお前の恋心を失くせとは言わない。だけど大分無謀な挑戦だと思うぞ」

宗輔「なんでだよ! もしかしたらオッケーもらえるかもしれないじゃん!」

千隼「よく考えてみろよ。教師と生徒での恋愛ってそううまくいくか?」

宗輔「何を言ってるんだ! 世の中にはな、教え子と結婚した先生だってたくさんいるんだぞ!」

千隼「確かにそれはそうだけど、必ず付き合えるわけでもないし、結婚できるわけでもないぞ」

宗輔「やめて現実を突きつけないで」

千隼「そんなに気になるなら、いっそ保健室に入るぞ」

宗輔「あ、ちょ、千隼、ドア開けるなよ!」

千隼「すみません、失礼しまーす。都留先生ー」

宗輔「うわードア開けやがったー!!」

都留「あら、千隼くんと宗輔くんじゃない。どうしたの?」

千隼「それがですね、宗輔が都留先生に聞きたいことがあるらしくて」

宗輔「ち、千隼ぁ~」

都留「宗輔くん、何かあったの?」

千隼(頑張れ、宗輔……!)

宗輔「……よし、言います。単刀直入に聞きます、都留先生。好きです、俺と付き合ってください!」

都留「え、ごめんなさい」

千隼「断るの早すぎでしょ」

宗輔「せ、先生……どうしてですか……!」

都留「実は私、今付き合っている人がいて……」

宗輔「それってどんな人ですか!?」

都留「え、う、うーん……格好良くて、頼りがいがある人よ」

千隼「その人って、うちの学校の先生ですか?」

都留「い、いえ、ぜ、全然、あなたたちが、し、知らない、ひ、人よ」

千隼「都留先生、動揺が隠せてませんよ……」

宗輔「いやぁ~都留先生のそういう素直なところ、俺すごい好きぃ~……」

千隼「宗輔、現実逃避はやめておけ……と言いたいところだけど、お前は失恋したばかりだもんな。今は現実から逃げておけ」

都留「……私ってそんなに分かりやすいのね」

千隼「うちの学校で、格好良くて頼りがいがある人と言えば……」

都留「もう! 私が誰と付き合ってても良いじゃない、おませな生徒ね」

千隼「ちょっと大人ぶりたい年ごろなんです! んで、都留先生の付き合ってる人は……」

都留「もう何も言いません!」

千隼「……やっぱり、あの噂は本当だったのか?」

都留「噂?」

千隼「都留先生が加藤先生と付き合ってるっていう噂です。生徒の間では有名ですよ」

都留「え? 加藤先生って、あなたたちの担任のあの加藤先生?」

千隼「そうです。加藤先生と都留先生、普段から仲良さそうですし、都留先生の付き合ってる人って……加藤先生ですよね?」

都留「いえ、加藤先生じゃないわよ?」

千隼「えー? いやいや、だって格好良くて頼りがいがあるといえば、加藤先生じゃないですか」

宗輔「加藤先生……いくら俺の担任とはいえ、許すまじ……!」

千隼「すげぇ、宗輔の背後に憎悪の炎が見える気がする」

カナ「失礼しまーす。廊下までうちの宗輔くんと千隼くんの声が聞こえてますよー」

千隼「あ! カナ先生!」

カナ「廊下を歩いてたら、宗輔くんと千隼くんの騒がしい声が聞こえてきたから、気になって保健室に来てみたんだけど、何を話してたの?」

都留「……なんでもないです、カナ先生」

カナ「都留先生、本当ですかぁー?」

宗輔「カナ先生! 都留先生に意地悪しないでください! どうせなら加藤先生に意地悪してくださいうわぁぁ」

カナ「そ、宗輔くん……どうしたのかな?」

千隼「この際ぶっちゃけますけど、宗輔は都留先生のことが好きだったんですよ。でも今コクったら、都留先生からフラれちゃったんで、宗輔は失恋したてなんです」

カナ「あら、そうだったのね……宗輔くん、いい女の子なら他にもいるんだから、新しい恋を見つけるのが良いわよ。ん? でもそれが加藤先生とどう繋がるの?」

千隼「あのですね、これは生徒の間では有名な話なんですけど、都留先生は加藤先生と付き合ってるって噂があるんです」

都留「うっ……」

カナ「ほおほお」

千隼「だから宗輔は今、都留先生と付き合っているであろう加藤先生に対して、かつてない怒りを覚えている、というわけです」

カナ「事情は理解したわ」

都留「り、理解しなくていいです……」

カナ「じゃあ、この話はあまり知られていないのかな?」

宗輔「どんな話ですか!?」

千隼「食いつきっぷりが良いな」

カナ「加藤先生が結婚してるっていう話よ」

宗輔「え!? 加藤先生、既婚者だったんですか!?」

千隼「全っ然知りませんでした! 初耳です!」

カナ「まあ加藤先生、普段は結婚指輪はしてないから分からないわよね……前に結婚指輪を一度なくして奥さんに叱られて以来、家に飾っているらしいし」

千隼「結婚指輪をなくされたら、そりゃ奥さんも怒るでしょうね。あれ?ってことは……」

都留「な、なんで私を見るの……?」

千隼「……都留先生、もしかして加藤先生と不倫してるんですか……!?」

都留「してません!」

カナ「ははっ、こりゃ正直に話さないと誤解は解けそうにないわね。都留先生は私と付き合ってるのよ」

千隼「あーカナ先生、女性にしてはやったら格好良くて頼りがいがありますもんねー……って、えー!?」

宗輔「ちょ、ちょっと待ってください! え!? 都留先生!? え!?」

都留「もうー、カナ先生ったら、ずっと内緒にしてたのにー」

宗輔「マジかー!」

カナ「アハハ、ごめんね宗輔くん……」

都留「ま、まあそういうことなので、他の子たちには内緒にしてね……?」

宗輔「都留先生の頼みなら、内緒にしておきます……」

千隼「宗輔、これで新しい恋を始められるな!」

宗輔「そんなにすぐ切り替えられるかーい!」