お約束のシチュエーション

栄人(えいと):
男性。学生。チャラい女好きイケメン。男女問わず持てまくるらしい。喫煙者。

白夜(びゃくや):
男性。学生。堅物真面目で口が悪い。栄人より少し年上。軽く潔癖でマスクが手放せない。

椎名(しいな):
女性。栄人と白夜の共通の友人で天然。美人。


栄人「なあ、何でだと思う?」

白夜「……何がだよ」

栄人「せっかくトンネルが崩落して、かろうじて生まれた狭小空間に二人きりなんて素敵すぎるシチュエーションに陥ってんのに、その相手がよりにもよってアンタなんだよ」

白夜「まったくだ。こんなことならお前のつまらねえ挑発になんざ乗るんじゃなかった」

栄人「だってせっかくのオリエンテーリングだぜ? テンション上がるじゃん。なのにウチのチーム全員歩くの超遅えんだもんなー。相手になりそうなのがアンタしかいなかったのが運の尽きだわ」

白夜「おかげでこのざまか。というか、完全にお前のとばっちりだよ、疫病神が……」

栄人「あ~、こんな時、椎名ちゃんが一緒だったらむしろパラダイスなのに! せめて気の合う奴なら全然違うのに! 何が悲しくてこんな堅物・仏頂面で、気の利いた会話すら望めないつまんねえオッサンとツーショットにならなきゃいかんのよ。神様ってほんと残酷だよな。そして悪趣味! 泣ける……」

白夜「おい、酸素が減るだろうが。少し黙っとけ……」

栄人「……白夜、アンタってホント、人情の機微を解さねえよな。こう見えてもな、俺はこの墓場並みに陰気臭い場を少しでも和まそうと思って一生懸命気を使ってんだよ? でないとアンタ、永遠に無言じゃん。で、無言のまま鬱々とし続けるじゃん?」

白夜「………」

栄人「ほらあ! 早くも言葉無くしてるし。マジないわー。ちょっとは空気読んでくれない?」

白夜「うるせえな。どうせ俺は“冷血ムッツリクソヤロー”だよ」

栄人「う……ちょっと待って。何それ、どっから聞いたの?」

白夜「椎名が教えてくれた。先日、顔合わせた時に「白夜くん、こないだ栄人くんがすっごく楽しそうに、あいつはレイケツムッツリクソヤローだって言って爆笑してたんだけど何のことかなあ?」ってな」

栄人「まじか」

白夜「椎名、真面目に不思議がってたぞ」

栄人「あー、椎名ちゃん、天然だからな……。まああれだ、言葉の綾なんでスルーしてくれて一向に構わないんで!」

白夜「どう、考えても無理、だろ……」

栄人「はい。すんません」

白夜「別に、いいけど、な。自覚ある、し……」

栄人「……? さっきから、アンタなんか様子が……」

白夜「何、でもねえ、よ。お前のバカ話に、疲れただけ、だ……」

栄人「ちょ……まさか酸欠かよ! マスクなんかしてっからだろ! はずせって!」

白夜「大きな、お世話だ……何でもねえって……言ってん、だろうが……」

栄人「あーもー! いいって、無理してしゃべんな。老体にこたえんだろ」

白夜「この野郎……二歳、しか違わねえ、だろうが。好き放題、言いやがって……。お前が、黙っとけ、腐れ後輩が……」

栄人「へいへい。悪かったよ。もう黙りますー」(シュボッ!)←タバコに着火

白夜「こっの、馬鹿が……! 酸素減らすしか、能がねえのか……てめえは!」

栄人「はあ?! 一本くらいなんだよ! 変わんねえよ、こんくらい」

白夜「……誰でもいい、早く、俺をこの間抜けな空間から、解放してくれ……もう、これ以上、一秒すら耐えられる自信が、ねえ……」

栄人「そんな弱音吐くとか、オッサンどんだけグロッキーなの? 俺なんか全然平気なんですけど、やっぱ年のせいですか? ウケるw」

白夜「違う。お前と、話してると……どんどん、ペースが、乱れん、だよ……」

栄人「なにアンタ……急にどうしたの? それにそんな大っぴらに息切らして“乱れる”とか、エロいよw?」

白夜「……死ぬか?」

栄人「ヤメテ、冗談♪ま、今のままだと先にあの世に行くのは間違いなくアンタの方だな」

白夜「何で、そう言い切れん、だ」

栄人「だって俺どこも何でもないもん。ケガもないし、何より若いしww?」

白夜「いちいち、ムカつくな……」

栄人「はいはい。とにかくアンタが死んだら、そうだな、これまで死守してきた素顔、椎名ちゃんの前で晒してやんよ♪」

白夜「別に、死守してたつもり、ねえんだが……まあいい、上等だ。だったら……どっちが生き残るか勝負しようじゃねえ、か」

栄人「おっとぉ? そりゃ構わないけど、いいのかなー? この分だと、分が悪いのは明らかにそっちだと思うんだけど?」

白夜「まだ、わからねえよ……。俺は、こう見えて、結構、打たれ強いんでな。それより、お前が先に、くたばったら……身ぐるみ剥いで、転がしてやる、から……覚悟しとけ、クソガキ……」

栄人「だーから、自重しなさい! 俺がいくら超イケメンで男女問わずモテまくってたって、こっちにその気はねえんだよっ!」

白夜「何の、話だ……? 意味が、わからねえ……お前のバカが、うつったらしい……。今の、どういうことか、説明しろ……」

栄人「ちょ……わからいでか! 何こいつ! メンドクセーし、恥ずいんだけど! とっとと気絶しちまえ」

ガラガラガラ!

レスキュー隊「生存者発見! 大丈夫ですか!」

栄人「うお! 助かったー」

白夜「何だよ……勝負が台無しじゃねえか……」

栄人「助かったな、先輩? いろんな意味で♪」

白夜「だからどういう意味だ。というか、さっきの話だが――」

栄人「蒸し返すなw! 助かったんだからフツーにスルーして下さい!」