目指すはマッスル魔法使いなんだけど……

葵(あおい):
女性。大学1年生。主人公。
現代から異世界に召喚されて、魔法使いになるようにアンリに言われた。
でも魔力がないので、魔力の代わりに筋力をつけようと頑張っている。

アンリ:
女性。10歳。異世界に住んでいる召喚士。
自分が住んでいる世界にモンスターが増えすぎたため、人員が欲しいと思い、とりあえず葵を召喚した。

カズ:
男性。23歳。異世界に住んでいる武闘家。
魔力が無い代わりに筋力をつけてモンスターを退治している。
実は3年前に、葵がいる世界から召喚された人。


葵「あーもう全然筋力がつかない」

アンリ「葵、いい加減魔力をつける修行をしてみない?」

葵「いやいや、魔力をつけたって元の世界で魔法が使えなかったら無意味だし、せっかくなら筋肉をつけたい」

アンリ「いやいや、この世界にいる限りは、魔法が使えるのは物凄く意味があることだから。魔法が使えればモンスター退治しまくりだから」

葵「というかそもそもよ」

アンリ「んー?」

葵「『モンスターが増えすぎたため、人員を増やそう』という心構えは良いと思う」

アンリ「あ、やっぱり葵もそう思う?」

葵「でもね、だからといって、魔法が使えない世界の人を召喚するのは、かなり無茶だと思うわ」

アンリ「うっ……返す言葉もございません……勝手に召喚してごめんなさい……」

葵「まあ召喚されたときはびっくりしたけど、今はこうしてアンリと生活するのも楽しいし、別に大丈夫よ。モンスターも意外と弱いしね」

アンリ「なら良かった!」

葵「待って待って、アンリはもう少しだけ反省する様子を見せてくれないかな? 私もなんだかんだ召喚されたときはビックリしたからね?」

カズ「葵! 筋肉というのは一朝一夕でつくものではない! 毎日の積み重ねによって、筋力は生まれるものなのだ! 葵はまだまだこれからだぞ!」

葵「有難う、カズ。というかカズは魔法使いにはならないの?」

カズ「俺も魔力が無いからな! だから代わりに筋力を手に入れようと思ったのだ!」

葵「うーん、どこの世界にも『筋肉こそが力』みたいな人はいるものね……」

アンリ「ねー葵、そろそろご飯にしよー?」

葵「それもそうね。お腹空いたわ」

カズ「なら俺が飯を作ろう! しばらく待ってくれよな!」

葵「はーい」

アンリ「でも不思議なのよねー」

葵「何が?」

アンリ「どうしてカズに魔力が無いのかってことよ」

葵「えーと、確かこの世界の人って、生まれつきみんな魔力があるのよね?」

アンリ「そうそう。魔力が強い人、弱い人はいるけど『魔力が無い人』なんて、本当は有り得ないはずなのよ」

葵「んー……」

アンリ「だからカズの存在は、かなり希少だと言えるわ。でもだからこそカズはカズなりに、筋力をつけようと努力して、今ではこの世界で一番の武闘家になったわけだけども」

葵「ひょっとして、この世界で初の武闘家なんじゃない?」

アンリ「確かに世界初の武闘家かもしれない。だけど本当に、なんでカズは魔力が無いのかしら……」

葵「もしかしたらカズも、私と同じ世界の人で、こっちの世界の人に召喚されたのかもね……それなら魔力が無いことにも説明がつく……さすがにそれはないか」

アンリ「うーん、本当にどうしてカズは魔力が無いんだろう?」

葵「そうねえ……たまには例外もあるってことかもしれないわ」

アンリ「それもそうかもね」

葵「……アンリはやっぱりもう少し、考える癖をつけた方が良いと思う」

カズ「葵! アンリ! 昼飯ができたぞ!」

葵「やったー!」

アンリ「わーい!ねえねえ、今日のお昼は何ー?」

カズ「今日はオムライスだ!」

アンリ「ご飯を卵で包んだやつだ! やったー!」

葵「え、アンリはオムライスを食べるの初めてなの?」

アンリ「うん!」

葵「まあアンリはまだ10歳だもんね、まだ食べてない物が色々あるよね」

カズ「それとオムライスは、この世界の料理ではないからな! アンリが知らなくても致し方あるまい!」

葵「へえ、オムライスってこの世界の料理じゃないんだ。え!?」

アンリ「ちょ、ちょっと待ってカズ、もう一度言ってもらって良い?」

カズ「アンリが知らなくても致し方あるまい!」

アンリ「もうちょい前!」

カズ「オムライスは、この世界の料理ではない!」

アンリ「それそれ!」

葵「なんかもう先が見えてきたんだけど、一応聞いても良いかな、カズ……」

カズ「どうした葵、何でも聞いて良いぞ!」

葵「オムライスはこの世界の料理じゃないってことは、どこの世界の料理なのかな?」

カズ「俺が元の世界にいたときの料理だぞ!」

葵「奇遇ねー、私がいた元の世界にも、オムライスがあったのよー」

カズ「おっ? 俺と葵がいた世界は、同じ世界なんじゃないのか?」

アンリ「ちょっとちょっとどういうこと!?」

カズ「おや、もしかして話してなかったか? 俺は3年前にこの世界に召喚されたんだぞ!」

葵「あんたもかーい!」

アンリ「だからカズは魔力を持ってなかったんだ!」

葵「そこに感心してる場合じゃなーい!」

カズ「いやー、俺を召喚したのは隣の村の村長なんだがな、当時は村長も驚いていたぞ! 俺に魔力が無いことを!」

アンリ「そうだよねー、やっぱり驚いちゃうよね!」

葵「だからそこに感心するんじゃないの! カズはどうして召喚されたの?」

カズ「それは無論、モンスター増加に対して人員が不足していたからだ!」

葵「どんだけ人員不足なのよこの世界。もっと魔法使いのみんなが強くなれば良いのに」

アンリ「ねえ、ちょっと気になったんだけど、カズは元の世界に戻りたいって思わないの?」

カズ「いや、思ってないぞ! 確かに昔は、元の世界に戻りたいと思っていたこともある。だがこの世界はこの世界で楽しい! それにな!」

葵「それに?」

カズ「今は隣の村の女の子と付き合ってるし、こっちの世界にいたいと思っている!」

葵「それも初耳だわー!」

アンリ「カズにはお付き合いしてる人がいるの!? おめでとうー! 今度紹介してね!」

カズ「良かろう良かろう! ハッハッハ!」

葵「なんか疲れてきちゃった……私は元の世界に戻ろうかなぁ」

アンリ「あ、葵が言ってくれれば、いつでも元の世界に戻すよ!」

葵「ああそうなのね……じゃあ戻りたくなったら、アンリに伝えるわ……もう私はツッコまない、有難う……」