体育祭は家に帰るまでが体育祭です

由紀:
運動神経抜群な女子高生

和也:
やる気のない男子高校生


由紀「和也君、この前の体育祭のことについてなんだけど、ちょっといいかしら?」

和也「何だ?」

由紀「明らかに手を抜いてたよね? 何で本気でやらないの?」

和也「何で体育祭ごときで本気にならないといけないんだ?」

由紀「体育祭ごときですって? 大事な行事なのよ? それをごとき呼ばわりするなんてね。あんな優しい両親の間で、何でこんなのが生まれるのかしら」

和也「こんなの言うんじゃねえよ。それに体育祭のどこが大事なんだよ。あんなのただただ疲れるだけじゃねえか」

由紀「だからいいんじゃないの。皆で協力し合い、汗をかくからこそ、後になってあの時は大変だったけど、やってよかったと思えるんでしょ!」

和也「バカバカしい。何が協力だ。あんな面倒くさいことやるくらいなら、家でゲームしてるほうがいい」

由紀「ゲームを楽しむのは別にいいんだけど、面倒くさいなんて言ったら、一生懸命やってる人たちに対して失礼でしょ!」

和也「はっ、いったいどれだけの奴が真剣にやってたんだろうな」

由紀「和也君以外は皆真摯に取り組んでいたわよ」

和也「お前は一人一人にちゃんと確認したのか? 真摯に取り組んでいたかって?」

由紀「そ、それは確認してないけど」

和也「だったら俺以外にも真摯に取り組んでなかった奴はいるかもしれないだろ」

由紀「皆頑張ってたわよ! 真剣な表情だったもの! 和也君だけなんだから、真剣な表情してなかったの!」

和也「後で何でお前真剣にやらなかったんだよ、と言われるのが嫌だから頑張ってるフリをしてる可能性だってある」

由紀「和也君は何でそんな風にしか物事を捉えられないの?」

和也「俺は思ったことを言ってるに過ぎないんだがな」

由紀「そんなんだから、和也君は顔はかっこいいけど、性格は全然かっこよくないよねって言われるのよ!」

和也「俺ってそんな風に言われてたのかよ。まぁ、どうでもいいけど」

由紀「その性格さえ直せば、きっとモテモテになるだろうに」

和也「お前、もしかして俺を口説いているのか?」

由紀「そんなわけないじゃない! まぁ、別に嫌いってわけじゃないけど」

和也「素直になれよ。すべて吐き出しちゃえよ」

由紀「何で吐かなきゃならないの! そんなことしたら汚くなるじゃない!」

和也「そういう意味じゃねえよ!」

由紀「え、そうなの? それじゃ、どういう意味で言ったの?」

和也「いちいち説明するのは面倒くさいが、自分の気持ちを言えってことだよ」

由紀「あぁ、なるほどね。それならそうと最初から言いなさいよ」

和也「言わなくても分かるだろ」

由紀「私こう見えても頭良くないのよ」

和也「それは見れば分かる。頭悪そうな見た目だし」

由紀「そんな! さ、さいしょくなんちゃらっぽく振舞ってたのに!」

和也「才色兼備が出てこない時点でアウトだろ」

由紀「ち、違うのよ。勉強ができないだけなのよ!」

和也「必死だな。そんなに頭良く見せたいのか?」

由紀「……本当は頭もあまり良くありません」

和也「素直でよろしい」

由紀「でも、その代わりといってはなんだけど、運動神経は抜群よ」

和也「知能を失った代わりに筋力は得たわけか」

由紀「別に知能は失ってないわよ。ちゃんとあるわよ」

和也「そういうことにしといてやる」

由紀「ちゃんとあるのに。でも、体育祭であれだけ活躍したんだから、運動神経が抜群ってことは信じてくれるわよね?」

和也「あぁ、それだけは信じてやるよ。知能の点に関しては信じないがな」

由紀「なんでそんなに疑うのよ。ちゃんと日本語は喋れてるじゃない!」

和也「日本人なんだから、日本語は喋れて当然だと思うんだけど」

由紀「そ、そうよね。……私って知能ないのかな?」

和也「ないんだろうな」

由紀「そのことに関しては後で考えるとして、来年はちゃんと体育祭頑張ってよね?」

和也「それは無理だな。俺はお前と違って運動神経ないからな。仮に本気で取り組んだとしても、やる気がないと思われるに違いない」

由紀「確かに和也君って、ちょっと走り方変だしね」

和也「だろ? 俺としては不本意だがな」

由紀「でも、走り方は変でも真剣さはきっと伝わるから大丈夫よ。だから、安心して本気で体育祭に取り組んでね」

和也「真剣さが伝わる前に笑われそうだけどな」

由紀「大丈夫よ。そんな人がいたら、私が叱ってやるから。彼は真剣に取り組んでいるの、笑わないであげてね、って」

和也「お前が一番笑いそうだけどな」

由紀「そんなことないとは言い切れないわね。その時になってみないと自分が笑うか笑わないかはわからないからね」

和也「笑われるのが嫌だから、手を抜いているんだ。まぁ、一番の理由は面倒くさいからだけどな」

由紀「面倒くさがらずにやってよ。私は勉強は苦手だけど、面倒くさがらずに真摯に取り組んでいるわよ」

和也「勉強と体育祭とでは疲れ度が違うだろ。勉強も疲れるには疲れるが、体育祭ほど疲れないからな」

由紀「本気で体育祭に取り組んでくれたら、何でも言うこと聞いてあげるわよ」

和也「そうか。じゃあ、もう俺に関わらないでくれ」

由紀「それはできないわ」

和也「何でだよ。何でも言うこと聞いてくれるんだろ?」

由紀「だって、和也君のこと好きだもん。ずっとしゃべっていたいし」

和也「……俺を口説いているってのはあながち間違いではなかったんだな」

由紀「そうなるわね。それで来年は頑張ってくれるよね? 私のために」

和也「……分かったよ。来年はお前のために頑張ってやるよ」

由紀「ありがとう、和也君」