吸血鬼と蛇女の邂逅

吸血鬼:
バカのように見えて聡明。めちゃくちゃ強い

蛇女:
何百年も生きている女。感性がちょっと古い。


蛇女「欲しいか?わらわの血が欲しいとお主は申すのか?」

吸血鬼「あぁ、俺は貴様の血を欲している。極上の血こそを俺は欲している」

蛇女「ほう?わらわの血が極上とな?それは真に嬉しいことじゃの。この青い血をお主は極上と言ってくれるのじゃな」

吸血鬼「色など関係ない。俺にとって重要なのは美味かどうかだ。その点、貴様は多くの血を食らってきたのだろう?おいしくないわけがない」

蛇女「なるほどの。確かにわらわは多くの命を食らってきた。だがの、わらわはお主と違って血ではなく肉の味をこそ重要視している。本当にお主の望んでいるものがわらわの血にあるとは限らんぞ」

吸血鬼「そのときはそのときだ。どっちにしろ俺は腹が減っている。血を飲まないと倒れそうなぐらいには空腹だ。美味なほうがいいが、まずくても腹の足しにはなる。つまるところどっちだろうと俺に損はない」

蛇女「そうなのか。まっ、別にどっちでもいいがの。わらわとてそう簡単に食われる気はないぞ。たかが吸血鬼に血を吸われたとあっちゃ、蛇女の名が廃るわい」

吸血鬼「たかが吸血鬼か。ふん、今は夜。俺の活動時間だ。貴様に万に一つの勝ち目などない」

蛇女「くくっ、甘い、甘いぞ吸血鬼よ。わらわは何百年も生きているのだぞ。討伐されていないということはそれだけの力があるということ。それにの、吸血鬼と戦うのは別にお主が初めてではないぞ?」

吸血鬼「ふん、俺をそんじゃそこらの吸血鬼と一緒にしてもらっては困る。並の吸血鬼とは格が違うぜ」

蛇女「別にお主が強かろうと問題ない。今言ったであろう?……空腹だとな。そんな状態で果たしてわらわに勝てるのか?」

吸血鬼「……あっ」

蛇女「まさかお主。空腹だということを忘れておったのか?バカなのかお主は?」

吸血鬼「違う。バカではない。ただそこまで考えが及ばなかっただけだ。決してバカではない!」

蛇女「考えが及んでないというのがすでにバカの現われじゃろうに。まぁ、良い。お主には簡単に勝てそうじゃ」

吸血鬼「貴様、俺を甘く見すぎだ。いくら空腹だろうと女に負ける俺じゃあない」

蛇女「確かにわらわは女じゃが、それ以前に人々が恐れ戦く怪物じゃぞ?」

吸血鬼「怪物だろうと何だろうと女であることに変わりはないだろう?」

蛇女「……まぁの」

吸血鬼「何だ?女として見られたのは初めてか?」

蛇女「だったら何じゃ?」

吸血鬼「ふ、俺は異性からモテモテだ。勝った」

蛇女「いやいや、そういう勝負はしておらん。やっぱお主バカじゃろ?」

吸血鬼「バカな子ほど可愛いと言うぜ。ほら俺の勝ちだ」

蛇女「ついに認めおったなバカであること。やっぱバカじゃろお主」

吸血鬼「言霊ってあるだろ?貴様がバカバカ言ったせいで、本当にバカになってしまった。どう責任を取ってくれるんだ?」

蛇女「……お主なかなかに面倒くさい奴じゃの」

吸血鬼「ふっ、よく言われる」

蛇女「お主、よくハンターに討伐されずに生き残ってこれたの?」

吸血鬼「実力だけはあったからな俺」

蛇女「性格と力は比例しないということか」

吸血鬼「その通りだ。というよりも単純な分、相手の思惑に引っかからなかったんだ。いくら策を弄そうとも、肝心の相手が考えなしのバカだったら、無駄に終わる」

蛇女「どういう意味じゃ?」

吸血鬼「簡単なことだ。ハンターは知識と経験が豊富な連中だ。吸血鬼がどう動くかを知っている。だが俺はバカだから、吸血鬼の常識に当てはまらないんだよ。だからこそ俺は強いんだ」

蛇女「常識はずれのバカということか」

吸血鬼「その通りだ、蛇女」

蛇女「分からなくなってきたわい。お主が本当はどっちなのか?」

吸血鬼「俺がどうであろうと貴様の敗北は決まっている。ほらもうすぐ朝日が昇るぞ」

蛇女「何を言っておる。朝が来て困るのはお主だけじゃろう?」

吸血鬼「本当に、本当にそう思うか?」

蛇女「何を言っておる。何を考えているんだお主は?」

吸血鬼「周りをよく見てみろよ。果たして太陽は俺に届くかな?」

蛇女「周りじゃと?…これは!?」

吸血鬼「やっと気づいたか。俺のいる場所には光は届かないんだよ。なぜなら俺の周囲には”霧”がある。分厚い”霧”がな」

蛇女「霧、霧だと。バカなそんなものはなかったはずじゃ!」

吸血鬼「吸血鬼の能力の一つ、霧化の応用だ。貴様と話している間に左手を霧化させた」

蛇女「まさか、まさか……。光を屈折させる気か?」

吸血鬼「正解だぜ、蛇女。俺は霧化の力で太陽の下で自由自在に移動できるんだよ」

蛇女「だが太陽の光が届かないだけじゃろ?わらわが負ける理由にはならない」

吸血鬼「本当にそう思っているのか?どうして貴様はそんなに焦っているんだ?いや怯えているといったほうがいいか」

蛇女「わらわに何をした?」

吸血鬼「分かってるだろう?俺はとっくに貴様の血を吸っている」

蛇女「霧化と変身能力か!」

吸血鬼「そうだ。霧化した一部をコウモリに変化させ、貴様の血を吸った。どういうことか分かるだろう」

蛇女「あっあっ、ああああああ!」

吸血鬼「あーらら、残念、時間切れ。苦しいだろう、全身が焼かれるように熱いだろう?」

蛇女「お主、わらわを吸血鬼化させたのか」

吸血鬼「あぁ、苦しいか。どうしてほしい?俺なら貴様を助けられるぜ?」

蛇女「……どうしたら助けてくれる」

吸血鬼「賢明な判断だ。俺の一か月分の食料になれ。貴様は人間じゃないからな。一ヶ月は貴様の血で十分持つだろう」

蛇女「……くっ!」

吸血鬼「さぁ、俺の手を取れ。それだけで貴様は助かるのだぞ」

蛇女「今ここで死ぬよりはマシか。いいだろうお主の食料になってやる。だが絶対にお主にギャフンと言わせてやる!」

吸血鬼「何百年も生きてるだけあって、古いなぁ」

蛇女「うるさいわ!」

吸血鬼「行こうか俺の家へ。ははっ、愉快愉快、実に愉快だ」

蛇女「……わらわは蛇女なのか。それとも吸血鬼蛇女なのか。どっちじゃ?」

吸血鬼「それ重要か?」

蛇女「名前以上に大事なものなどないわ」

吸血鬼「でも吸血鬼蛇女だと、俺と貴様が結婚したみたいに聞こえるな」

蛇女「はっ!結婚じゃと……わらわが結婚。……うへっ」

吸血鬼「あっ……ターゲット間違えたかもしれない」

蛇女「早く行こうぞ。わらわたちの愛の巣へ」