紅い地球と第二の故郷

隊長:
地球生まれ。おじさん。めちゃくちゃ強い。

副隊長:
月生まれ。若い女の子。そこそこ強い。

基地統括者:
地球生まれ。隊長の古い友人。めちゃくちゃ強い。


その日、地球は紅く染まった。

隊長「紅いねぇ。とっても紅いねぇ。おじさんはさ、昔地球に住んでたんだよ。当時は青かったのにな。どうしてこうなってしまったのかねぇ。いやぁ、人生何があるか分からないねぇ」

副隊長「隊長。緊張感なさすぎです。これから戦場に赴くのですよ。腑抜けた状態では困ります」

隊長「君は肩に力が入りすぎてるねぇ。おじさんみたいにリラックスしたほうがいいよ。気を張り詰めてもいいことないよ。もう少し気楽にね」

副隊長「なんであなたのような適当な人が隊長なんですか?」

隊長「そりゃぁ、年食ってるからねぇ。年功序列だと思うよ。優秀だからってわけじゃないさ。考えてもみなさいよ。年上のおじさんが部下にいたら、みんな気を使うでしょ?そうならないための上層部の配慮だよ。僕のこと、気に食わないかもしれないけどさ。大目に見てよ」

副隊長「……分かりました。ですが緊張感は持ってくださいね」

隊長「すまないねぇ。久しぶりの地球だからね。心が躍っているのさ。おじさんの故郷は今でも地球だからね。まぁ、でも君には分からないか」

副隊長「バカにしないでください。故郷の良さは分かっています。ただ私の故郷は””月””ですからね。地球に行くことになってもワクワクしないんですよ」

隊長「うーん、そうだろうねぇ。僕と君じゃ生まれた環境が違うからねぇ。価値観が違うのも当然さ」

副隊長「……そうですね」

隊長「どうしたんだい?」

副隊長「いえ何でもありません。……そろそろ着く頃です」

隊長「そうだねぇ。ゆっくり観光でも出来たらいいんだけど、無理だろうねぇ」

静かに降り立つ宇宙船。二人の見つめる先は紅く染まっていた。

部下「隊長、副隊長。周囲の確認終わりました。やつらはいません」

副隊長「そうか。よくやった。下がっていい。……隊長どうします?」

隊長「とりあえず任務を遂行しようか。えーっと確か、やつらの拠点を叩くんだったかな?」

副隊長「そうです。前線基地の部隊と協力して、拠点を叩きます。出来れば、やつらの他の拠点の情報も手に入れてくるように言われています」

隊長「そういえばそんなことも言っていたねぇ。でも無理はしないでおこうか。安全策を取ろう」

副隊長「ですが隊長。地球を取り戻すためには拠点の情報は必要不可欠です!」

隊長「分かってるよ。でもね命のほうが大切だ。地球を取り戻すことよりもね。命さえあれば、何度だってやり直せるからねぇ。君たちも無理しないでね。危なくなったらすぐ逃げるように」

部下一同「はい!」

隊長「じゃあ、前線基地と回線繋いでくれる?」

基地統括者『がっはっは!ようやく来たか待ちわびたぞ。待ちくたびれすぎて、特攻を仕掛けるところだったわ!』

隊長「相変わらずだねぇ、君は。本当に昔から変わらない」

基地統括者『がっはっは!お前だってそうじゃないか!安心せい。玉砕する気はないわ!』

隊長「分かってるよ。君はそんな無謀な真似をしないことはね。長い付き合いだからね。ところで戦況はどうなってるんだい?」

基地統括者『おう、そうだったな。今のところは特に問題はない。やつらはこちらを恐れているのか、必要以上に攻撃はしてきていないからな。だが安心はできん。やつらは一週間足らずで地球を支配したんだからな。今の状況は嵐の前の静けさのような気がする』

隊長「なるほどねぇ。向こうも何かを仕掛けてくる……君はそう睨んでるんだね?」

基地統括者『おう、まぁ、ただの勘だがな。がっはっは!』

基地部下『ボス!大変です!』

基地統括者『どうした?!』

基地部下『やつらが侵入してきました』

基地統括者・隊長「!!」

基地統括者『なんだと!』

基地部下『数もおお……がっ!』

隊長「これはまずいねぇ。前線基地に船を」

部下一同「はっ」

隊長「間に合ってくれよ」

数刻後。

基地統括者「ふん!」

やつら「ぐえっ」

基地統括者「甘いわ。ふん!」

基地統括者の周りにはやつらの死体が転がっていた。その場には人間が一人しかいなかった。

基地統括者「すまんの。守れなくて。じゃが、安心せい。ぬしらの意志はわしが受け継ごう」

やつら一同「ぐえっ、ぐえっ」

基地統括者「ぬう!」

百を超える軍勢が基地統括者を囲む。

基地統括者「わしもここまでか。すまぬ」

隊長「――諦めるには少し早すぎないかい?」

やつら「ぐえー!!!」

瞬く間にやられるやつら。

基地統括者「……がっはっは!遅いわ」

隊長「そうだねぇ。遅かったねぇ。君以外死んじゃったかぁ」

基地統括者「わしの力不足だ」

隊長「いいや、君は一人でよくやった。後は僕たちに任せなよ」

やつら「ぐえ、ぐえ」

やつらの悲鳴が響く。

副隊長「人間を舐めるなぁ!!」

副隊長の剣がすべてを切り裂く。

隊長「僕も頑張らないとねぇ」

歩く。倒れる音。屍が転がる。隊長の道に生者は残らない。

隊長「君たち、少しおいたが過ぎたねぇ。さすがの僕も冷静ではいられないよ。君たちには存分に償ってもらうよ」

やつら「ぐえー」

やつらが逃げる。

隊長「逃がすと思うかい?」

やつらより早く。何よりも早く。隊長の剣はやつらの体を切り裂く。

隊長「君たちはやってはいけないことをした」

切る。切る。切る。

轟くやつらの悲鳴。

部下一同「隊長。殲滅完了です」

隊長「よくやった」

基地統括者「がっはっは。さすが人類最強部隊じゃ。圧倒的じゃのお」

隊長「いやいや君の言うセリフかい。一人で何匹倒してると思ってるんだい君?」

基地統括者「いちいち数えとらんわ」

隊長「そうだろうねぇ。とりあえず僕の船に君も。この基地はもう使い物にならない」

基地統括者「待ってくれ。せめて部下の亡骸だけでも弔わせてくれ」

隊長「言われなくても僕もそうするつもりだ。彼らは僕らの同志だからねぇ」

人類の英雄、ここに眠る。

基地統括者「がっはっは。行こうか」

隊長「あぁ、行こう。僕らの船へ」

隊長はふと空を見上げた。

隊長「あぁ、今日は月がよく見えるねぇ」

副隊長「やはり私の故郷は月です。月を見ると安心する。心が洗われます。……本当に月はキレイです」

隊長「ふっ。そうだねぇ。死んでもいいかもねぇ」

副隊長「……!そ、そういう意味で言ったんじゃありません。それに微妙に言葉が違います」

隊長「僕だってそういう意味で言ったんじゃないよ。月で骨を埋めるのもいいかなと思っただけさ」

副隊長「……紛らわしいこと言わないでくださいよ。本当に心臓に悪い」

基地統括者「がっはっは。いちゃつくのは後でしろ。外はまだ危険地帯だぞ」

隊長「そうだねぇ。いちゃつくのは後にしようか」

副隊長「いちゃついてなんかない!」

船へ向かう彼らを月は照らす。第二の故郷は常に彼らを見守っている。願わくば地球をもう一度その手に。