魔王様と勇者殿 01

魔王セクサアザール二世:
世襲制で魔王になったものの、次世代になった事が人間達に知られていないため、父親時代の脅威が未だに世にはびこっている。
勇者レクレスに目をつけられ、討伐対象にされるが、なんとか穏便に帰ってもらおうと画策する。
性格はスケベで根性なし・痛い思いをするような争いを嫌う。
名前は、ガルシア語で「運が悪い」の意。

側近クレイ・ケク:
アルバニア語で「頭が悪い」の意。
先代から魔王の参謀をしているキングゾンビ。
その高い頭脳も評価され参謀として長年活躍してきたが、経年劣化で脳の腐敗が進んでおり、現在ではシナプスの繋がりにやや問題が見られる。

勇者レクレス(男):
街の人々からバックアップを受けて、魔王打倒のために魔城に潜入する。
しかし、彼もまた根性なし+命の危険を伴う闘いは避けたいという性格。
物事をあまり深く考えないタイプでもある。
名前は、英語及び西フリジア語で「無謀」の意。

魔道師ルクス・アライン(女):
勇者レクレスの補佐として同行している女性魔道師。
惜しげもなく大胆に露出したHカップの巨乳が魅力だが、逆に言うとそれだけしか能がなく、普段は殆ど何も考えていない。
名前は、西フリジア語で「見た目だけ」の意。


ここは、魔王セクサアザールの魔城。
恐るべき魔力とモンスターの脅威で、百年間に渡りこの国の人間を支配して来た存在である。

しかし、その魔王を討伐すべしと、一人の勇者が立ち上がった。
その名は、レクレス!
長い旅の果て、彼はついに、魔王セクサアザールの魔城に到達した。

ここは、魔城・謁見の間。

魔王「勇者め――ついに、ついに来おったか」

側近「はい……かなりのハイペースで、城内を進行中です」

魔王「このままでは、余との対峙も時間の問題であるな」

側近「いかがなさいますか、魔王様?」

魔王「我が側近クレイ・ケクよ。お前に確認したいことがある」

側近「はい、何なりと」

魔王「非常口は、どこだ?」

側近「非常口、でございますか。何か策でもおありで?」

魔王「いや、逃げ道」

側近「魔王様、さすがでごさいます。愚かなる人間の勇者にあえて退路を示し、己が愚行を知らしめようというお考えでございますな」

魔王「いや、余が逃げるための」

側近「なんと、御逃亡なさると?はて、私のキングゾンビ化祝200年記念の脳髄では、魔王様の崇高なる策の断片すらも、悟ることままなりませぬ」

魔王「いや、そうではない。勇者と闘いたくない」

側近「ふむ、なるほど……まだ時期早尚であるという御判断で」

魔王「そうじゃねーよ! 怖いんだって、勇者が!!」

側近「……は?」

魔王「だってお前、知ってんだろ?!あいつ、某老人魔術師事務所の迷宮の最下層で、増殖することで有名な大型悪魔ーズを12時間増やし続けて倒したり、某王家の墓で流体金属モンスター狩りを二ヶ月も続けて、滅茶苦茶レベル上げてるって噂だぞ!もしかしたら、レベルカンストしてっかもしんねーじゃん!」

側近「え、あ、はい……ちなみに、その情報は、どこから?」

魔王「そいつのツィート読んだ」

側近「……申し訳ありません、200年物の脳髄では、理解が及びませぬ」

魔王「俺、親父から魔王継いで、まだ一年と三ヶ月だぞ?!魔王レベル低すぎだってーの!たとえるなら、仲間になってもグランバニアに着く頃にはお役御免になってる程度だろっての!!」

側近「随分と、たとえが古うございますな」

魔王「しかも、なんだ?この魔城に入ってからも、あいつ色々と盗って、パワーアップしてるだろ?」

側近「えーと、お待ちください。各階の被害状況を検索いたしますので。
――フロア1階から4階まで選択して、検索ボタン、ポチっと」

魔王「今や魔城もITの時代よの」

側近「半月前やって来たIT企業の営業、話を聞いてやって正解でしたな。この検索システムのおかげで、被害状況も簡単に閲覧出来ます」

魔王「問題なのは、システム名が“魔城被害状況検索”って点だがな」

側近「おお、検索結果が出ましたぞ。
――ぶっ殺しの短剣×3本
――超邪悪な鎧+3×2体
――護りの盾×1枚
――かき混ぜ棒×3本」

魔王「結構渋い所を盗られてるなぁ」

側近「各フロアの守護者(ガーダー)も、軒並み撃退されてますな」

魔王「ん? 宝箱のトラップ、どうやって回避してるんだ?」

側近「はい、監視カメラの映像によりますと……おお、なるほど」

魔王「何々? ちょっと見せて」

側近「ガーダーを瀕死の状態に追い込んで命乞いさせて、助ける代わりに宝箱を開けさせていますな」

魔王「うっわ、えげつな!うひぃ! メタンガスジャイアント君、テレポーターでどっか飛ばされたじゃん!」

側近「あやつの身長、18メートルでしたか。あれが壁の中に入ったら、えらいことになりますな」

魔王「つうか、天井5メートルしかない所に、なんでそんな奴を配置したのよ」

側近「――え、さて、次ですが」

魔王「おい、話をそらすなっつーの」

側近「しかしこれでは、世界に名高い関西トラップ事業株式会社の製品も、形無しですな」

魔王「あれ、物凄く経費かかってなかったか?確かお前が絶賛してたから、俺が必死で経理を説得して、渋々認めさせたのに」

側近「――おお、ご覧ください、魔王様!」

魔王「お前、今、露骨に顔背けたな?」

側近「4階における鉄壁の護り! チタニウムゴーレムが、勇者に一撃で倒されておりますぞ!」

魔王「それ、運用費がかさむから何とかしろって経理から言われて、チタン合金風のメッキしただけのクレイ(泥)ゴーレムだったやん?そんな奴が、4階最強だったの?」

側近「いえ、他にも強力な者はおりますが」

魔王「そいつらは、どうしたのだ?」

側近「本日は4階勤務の者達の半数以上が、有給取得しておりまして」

魔王「なにぃ?! こんな時に有給かよ!ちゃんとシフト考えて、日を分けて取りなさいって通達したのに!!まったく、あの部署の連中は、毎度毎度……」

側近「お言葉ですが、魔王様。ブラック魔城化を避けようと、城内規約を率先して変更されたのは、他でもない貴方様でございますぞ」

魔王「だってさぁ、お上(かみ)からきっついお叱り受けたんだもん。うう……中小魔城の運営は辛いなぁ」