「ビンボー生活からほんの少し脱出して、姫を助けて、それから、次は、なんだっけ?」

アオミカエデ(クレス):
主人公。高2。

シバタ:
主人公のクラスメイト。

リシア:
クレスの恋人。

ハンナビ:
ハンナビ国の国王。

ヒアンナ:
ハンナビ国の姫。ハンナビの娘。

グリヒト:
占術師。

母:
アオミの母。

小林浩志:
母の恋人。

相田リオ:
転校生。


夕暮れ時のスーパー。

背中を丸め、何かを覗き込む青年がひとり。

アオミ「1グラム15円で、この袋の大きさだとだいたい500グラムは入るだろうから、カップの約4分の1には抑えて…」

シバタ「おう、何しんての。…シリアル?量り売りかー」

アオミ「…シバタ、何でいんの」

シバタ「何でって、親から買いもん頼まれたんだよ。えーっと?(メモを見ながら)ピーマン、マイペット、猫のトイレ砂…」

アオミ「…いや、まてよ…この価格でシリアルを買うより、あっちのほうれん草の煮びたしを買った方が健康的にはいいんじゃないか…?」

シバタ「…お前、何しんてのよ」

アオミ「見れば分かるだろ、買い物だよ。…いや、まてよ…あと30分で値引きのシール貼りが始まるから、やはりシリアルを8分の1に抑えて、ほうれん草の値引きを待ってどちらも買った方が…」

アオミ、ブツブツ独り言を言いながら、透明なカップにシリアルを入れ始める。

シバタ「…」

× × ×

朝のチャイムが鳴り、ガヤガヤと生徒たちが教室に入ってくる。

アオミ、机に突っ伏して眠っている。

アオミ「う…うう…」

シバタ「おーアオミ、早いな」

アオミ「う…うううう…」

シバタ「おい、どうした? おい、アオミ?」

先生「ホームルーム始めるぞー、…ん? アオミ、シバタ、どうした」

アオミ「う、うう…(やがて、気持ち良さそうな寝息)んふ…んふふ…」

シバタ「…先生、起こすには気が引けます」

先生「いいから、さっさと起こしなさい」

教室内から失笑が起きる。

ホームルームが始まる。

シバタ「おい、アオミ、おい…」

アオミ「(寝息)」

× × ×

どこからかクラシックが流れてくる。

女性たちの上品な笑い声、グラスが合わさる音。

女の声「ねえ、ねえってば」

アオミ「…ん?? …ああ、リシアか」

リシア「もう、パーティの途中で寝るなんて」

アオミ「ああ、ごめん。疲れてるんだよ」

リシア「…うん、分かってる。今日も王都から依頼が来たんだってね」

アオミ「ああ…でも今日のはたいしたことない。もう、済ませたよ。…それより、腹が空いたな。何か食べよう」

リシア「ええ、分かったわ。ビュフェとワインを取ってくるから、クレスはここで待ってて」

アオミ「ああ、悪いな」

次第に煌びやかな音が遠のいていく。

× × ×

教室の騒がしい音が戻ってくる。

アオミ「ああ、ありがとう、リシア…おお、うまい肉だな…一級品だ…」

シバタ「おい、…おいって」

アオミ「ああ…明日の仕事は少し厄介なんだ…馬の調達が必要だ…いや、気にすることはない。俺は王からの依頼でしくじったことは一度だってない…そんな目はよしてくれ…リシア…」

シバタ「…おい、バカ」

アオミ「リシア…」

ポコン!(殴る)

アオミ「ん…??(起きて)…あれ、ここは…どこだ…」

シバタ「教室だ」

アオミ「教室…。そうか、ここは異世界とやらか…」

シバタ「まだ寝ぼけてんのか。異世界とやらはさっきまでお前が見てた夢の中。こっちが現実だよ」

アオミ「……。ああ、そうだな」

シバタ「(ため息)担任が起きたらすぐ教員室来いって」

アオミ「ああ…」

立ち上がり、ノソノソと教室を出て行く。

シバタ「…アオミ」

アオミ「何」

シバタ「お前もしかして、何か困ってること、ある」

アオミ「……あると言えばあるし、あったとしても、たいしたことはない。…そんな目はよしてくれ…シバタ…」

シバタ「…俺は夢の中の女じゃねーぞ」

アオミ「(鼻で笑って)」

教室から去っていく。

シバタ「(ため息)」

× × ×

カラスの鳴き声、夕焼け小焼けの放送、近所の小学生が遊ぶ声。

自動販売機で缶コーラを買うシバタ。

アオミ「お前炭酸苦手だろ、何で買ったんだよ」

シバタ「…ん、そうだった。やるよ」

アオミ「いや、いい」

シバタ「もう買っちまったから。金もいらない。俺が間違えただけだから」

アオミ「…バカなのか?」

シバタ「そうだな」

アオミ「…」

缶コーラのプルタブを開ける。

ゴク、ゴク、と音をたてて、飲み干す。

シバタ「うまそうに飲むなあ」

アオミ「…うまいから」

空缶をゴミ箱へ投げ入れる。

アオミ「…」

シバタ「お前んちさ、母さん働いてるんだろ」

アオミ「うん、そうだけど」

シバタ「金のこと、困ってるんじゃないか」

アオミ「…まあ、普通に、困ってるよね。でも、普通のレベル」

シバタ「本当に普通のレベルなのか」

アオミ「うん」

シバタ「そうか…」

アオミ「シバタ」

シバタ「うん?」

アオミ「いいバイト先、知らない?」

シバタ「…してるって言ってなかったっけ。休日に」

アオミ「してる。でも、平日も入れるとこ探してる」

シバタ「…やっぱり困ってるんじゃないか」

アオミ「まあ、困ってるよね。普通レベルで」

シバタ「普通…か」

アオミ「うん」

× × ×

馬の蹄の音が聞こえてくる。

手綱を引き、馬の鳴き声とともに、蹄の音が止まる。

アオミ「我、ダリアン国王の命(めい)によりここに参った、クレスと申す。ハンナビ国王にお目にかかりたく存じる」

ギギギ…木のしなる音とともに、巨大な門が開く。

ハンナビ「待っておった、ダリアンの使いの者よ」

× × ×

ハンナビ「…して、我が国の姫、ヒアンナが危険に晒されていると申すのか」

アオミ「はっ」

ハンナビ「なんたる…」

アオミ「我が国の占術師グリヒトが、ヒアンナ様の未来を詠み、そのように確信したと申しております」

ハンナビ「しかしそのグリヒトとやらは、信用できるのかね」

アオミ「我が国王に遣える、我が国一の占術師です。今までグリヒトの視ることに違えたことは一度としてありません」

ハンナビ「ふむ…ヒアンナの未来とは、一体…」

アオミ「はっ。ヒアンナ様の胸に、何か良からぬものが棲みつく、とのことです」

ハンナビ「良からぬもの…悪魔か」

アオミ「それは分かりません。グリヒト曰く、その良からぬものは、東の果て、カザスの森よりやって来る、と」

ハンナビ「カザスの森…」

コン、コン、コン。ノックが聞こえる。

ハンナビ「誰だ」

小さくドアが開き、ヒアンナが顔を出す。

ハンナビ「おお、ヒアンナ。そこにいたのか」

アオミ「(息を飲む)」

ヒアンナ「お父様…今の話は本当なのでしょうか…」

ハンナビ「聞いてしまったか、ヒアンナよ…しかし案じることはない。この若者が何とかしてくれよう。のう、クレスとやら」

アオミ「は……」

ハンナビ「ダリアンの使いの者だ、よっぽど腕が立つのだろう。馬さばきもなかなか良い。上から見ておったぞ」

アオミ「……ありがたきお言葉。しかし、私は言伝をしに来たただの衛兵であります」

ヒアンナ「クレス…さん」

アオミ「……はい」

ヒアンナ「私を助けて」

アオミ「……」

ヒアンナ「私を…助けて」

× × ×

ガチャガチャ、と鍵を開ける音。

ドラが静かに開く。

母「(小さな声で)ただいまー」

パチッと電気を点けると、リビングでアオミが寝ている。

母「うわ、いたの」

アオミ「…(起きて)いたのはないだろ…母さん」

母「ごめんごめん、寝るときはちゃんと布団で寝なさいよー」

アオミ「うん…今日も遅かったね」

母「お願いして残業させてもらっちゃった。今の会社、残業代出るから」

アオミ「…母さん」

母「うん?」

アオミ「俺バイトするよ、平日も」

母「……(かしこまって)アオミカエデくん」

アオミ「……はい、なんでしょう」

母「あなたの本業は何でしょうか」

アオミ「……勉強です」

母「その通り。平日、学校行って、バイトして、疲れて、次の日また学校行って、授業、寝ないでちゃんと聞けるのかしら」

アオミ「……努力次第では」

母「しなくていい努力はしない。するべき努力は全力でする。そうでしょう」

アオミ「…バイトも、するべき努力だと、思う」

母「……ねえ、カエデ。心配かけて、ごめんね」

アオミ「……」

母「母さん、もっと頑張るから。カエデには、今を楽しんで欲しい」

アオミ「……授業料、払えてないんだろ」

母「……その件は、先生とも話し済。卒業までにちゃんと全部払います。カエデには大学だって行ってもらうんだから」

アオミ「……」

母「…そんな顔しないで、カエデ。さ、布団に行きなさい。あ、あとでお小遣い置いとくから、明日もちゃんとごはんたべるのよ」

母、風呂場に向かう。

シャワーの音が聞こえてくる。

アオミ「……」

× × ×

放課後の教室。まばらに生徒が残っている。

生徒「おーい、アオミはー? あいつプリント忘れてってるけど」

シバタ「あー、俺届けるわ」

× × ×

スーパーの自動ドアが開き、シバタが入ってくる。

レジに並ぶ。

アオミ「いらっしゃいませ……あ。」

シバタ「プリント忘れてったぞ」

アオミ、カゴに入ってるプリントを手に取り、小さくたたんでポケットにしまう。

弁当と牛乳をレジに通す。

アオミ「…568円です」

シバタ、払う。

シバタ「じゃ、またな」

商品を貰わず、そのまま、出て行く。

アオミ「あ、おい、シバタ…」

自動ドアが閉まる。

アオミ「あいつ……」

× × ×

慌ただしくアオミが家に帰ってくる。

アオミ「母さんごめん、今日友達と遊んでて遅くなったわ、話って何……」

母「おかえり、カエデ」

浩志「こんばんは、カエデ君」

アオミ「……誰」

母「いきなり誰は失礼でしょう。同じ職場の、小林さんよ。小林浩志さん」

アオミ「はあ……」

母「座って」

アオミ、椅子に座る。

母「単刀直入に言うわね。私たち、結婚を考えてるの」

アオミ「……」

浩志「突然来て、申し訳ない。はじめまして、小林です。お母さんとは、同じ職場で出会って、真剣にお付き合いさせてもらっています」

アオミ「……」

浩志「お母さんはいつも弱音を見せずに頑張る人だから……、生活に困ってることに今まで気付いてあげられなかった……。カエデ君もバイトを増やそうとしてるって、聞いたよ」

アオミ「……まあ、はい」

浩志「僕はその話を聞いて、お母さんと、一緒になりたいと思ったんだよ」

アオミ「……」

母「カエデ、お母さん、カエデのことが一番大切。カエデの今と、未来が幸せであって欲しいと思ってる。だから……」

アオミ「……今日ちょっと疲れてて……先、寝るわ」

母「カエデ」

アオミ「母さんのことだから、母さんが決めていい。俺は反対なんかしないよ」

母「カエデ……。……もう遅いけど、良かったら今から三人でご飯食べに行かない……?」

アオミ「いや、食べてきたから、大丈夫。行ってきていいよ」

母「……そう……」

アオミ、部屋を出て行く。

ひとり、部屋にてカバンからスーパーの袋を出す。

中には、シバタが忘れていった弁当と、牛乳。

アオミ「もっと安い弁当いっぱいあんだろ……」

しばらく弁当を見つめ

アオミ「…いただき、ます……」

一口、また一口、かみしめるように食べる。

ふと、スーパーの袋の底に入っている折りたたまれたプリントに気付く。

広げる。

アオミの進路希望調査表だ。

第一希望に「就職」と、薄く書いてある。

アオミ「……」

× × ×

グリヒト「東の果てより邪悪なものが近付いておる……くる、くるぞ……!」

アオミ「門を固めるのだ!一歩も中にいれるな!」

武装した兵たちが集結している。

嵐のような音が次第に近付いてくる。

アオミ「あれは…なんだ…!?」

グリヒト「くる…!」

巨大なエネルギーの塊が黒い霧となって襲ってくる。轟音が辺りに響く。

兵たち「ぐ…耳が…!やられる…!うぁぁあ!」

アオミ「み…耳を…ふさ…ぐん…だ…!」

轟音がアオミたちを包み、

やがて門が破壊される。

アオミ「しまっ…た…!!」

城の中へエネルギーの塊が入っていく。

アオミ「ぐっ……体が……うごか…ない…!」

ヒアンナの声「(叫び後)」

アオミ「ぐ……姫…」

辺りは真っ黒になる。

城の中で、騒ぎが起きている。

ハンナビ「おお、なんてことだ……!ヒアンナ……ヒアンナ……!!」

ヒアンナが倒れている。

アオミが体を引きずりやって来る。

アオミ「ハンナビ…王…」

ハンナビ「ヒアンナが…死んでしまった…」

アオミ「……そん……な」

アオミ、その場に膝から崩れる。

ハンナビ「……悪いが、お前を生かしておくわけにはいかぬ」

アオミ「……はい」

扉が勢いよく開き、グリヒトが入ってくる。

グリヒト「待つのじゃ、ハンナビの王よ」

ハンナビ「……なんの用だ、占術師よ」

グリヒト「姫を助ける道が視えたのだ」

ハンナビ「なんだと!生き返らせることができるというのか」

グリヒト「これは一か八かの勝負です。……ヒアンナ姫の胸には今、邪悪なエネルギーが渦巻いている。そやつを追い払うには……」

ハンナビ「どうしろというのだ!さっさと言え!」

グリヒト「……姫の胸の奥にある、恋心、そのものを呼び覚ますのです」

ハンナビ「恋心…だと?」

グリヒト「はい」

ハンナビ「しかし娘は、今まで城の中に閉じこもりきりだった。男と会う機会などまったく……」

グリヒト「しかし、姫の胸の奥に、芽生えたばかりの恋の魂が、私にはハッキリ視えるのです」

ハンナビ「芽生えたばかりの恋心……まさか……いや……一か八か…」

グリヒト「何かお心当たりが?」

ハンナビ「ああ……。クレス、こちらへ参れ」

アオミ「私…ですか?」

ハンナビ「……お前を初めて見た時の娘の表情がどうも気になっていた。私の勘が当たっているのであれば……」

アオミ「……」

ハンナビ「占術師よ、恋心を呼び覚ます、とは、どうしたらよいのだ」

グリヒト「はい、それは、口付けです」

ハンナビ「口付け……」

アオミ「しかし! ……もし違っていれば……」

ハンナビ「……構わん。娘が助かる可能性があるのならば、間違いでも試してみる価値はある」

アオミ「……この僕が…ヒアンナ姫に……」

グリヒト「邪悪なエネルギーが姫の体中を支配しようとしています。時間がありません。早く」

アオミ「……わかった」

ゆっくりヒアンナに近付くアオミ。

アオミ「……」

アオミ、口付けをする。

アオミ「……ヒアンナ姫…」

すると、ヒアンナの胸のあたりが光り始め、それが次第に大きくなる。

やがてヒアンナの体が宙に浮き、黒いエネルギーが弾け飛ぶ。

ヒアンナ「……ん」

ハンナビ「ヒアンナ!」

ヒアンナ、目をさます。

ヒアンナ「私……生き返ったの……?」

ハンナビ「ヒアンナ…ヒアンナ……良かった……」

ヒアンナ「お父様……。私一体……あれ……クレス…さん?」

アオミ「ヒアンナ姫……無事で何よりです」

ヒアンナ「……はい」

アオミ「こうして俺は、姫を助けることができた。しかし、邪悪なエネルギーの正体が何なのか、そして、姫の恋心が果たして自分に向けられているものだったのか、それはまだ、謎のままだ」

× × ×

学校の玄関口で下駄箱に靴を入れる、シバタ。

アオミ「よ」

シバタ「おう、珍しく早いな、アオミ」

アオミ「お前に渡すものがあって」

シバタ「渡すもの?」

アオミ、ビニール袋をシバタに渡す。

シバタ、中を見る。

シバタ「…弁当箱? なんだ、これ」

アオミ「この前の礼」

シバタ「俺、なんかした?」

アオミ「くれただろ、弁当。と、牛乳」

シバタ「……ああ、支払い済ませて、持って帰るの忘れたやつかー。あとで気付いてさ、あれ。もしかして、アオミ食った?」

アオミ「……あんなわざとらしい忘れ方するバカ、どこにいるんだよ」

シバタ「……ここ?」

アオミ「……」

シバタ、弁当箱を開ける。

シバタ「すっげえ美味そう……てか、弁当、もしかして手作り?」

アオミ「そうだけど」

シバタ「……アオミの?」

アオミ「……そうだけど」

シバタ「マジか……てか、材料費結構かかるだろ! いいんだよこんなことしなくて」

アオミ「シバタ、もう、いいんだよ」

シバタ「え?」

アオミ「もう俺は、普通のビンボーから、普通に、変わったんだよ」

シバタ「……はい?」

アオミ「……だから、もう、心配してくんなくて、いいんだよ」

シバタ「……」

アオミ「ありがとな」

シバタ「……何が何だか分からんけど、弁当はいただくわ。とりあえず、今日のアオミ顔色良くて、おとーちゃん、安心するわ」

アオミ「あっそ、サンキュ。つか、誰がシバタの息子やねん」

チャイムが鳴り響く。

シバタ「やべ、行くぞ」

アオミ「おう」

アオミ「あのあと俺は、母さんの恋人…小林さんと何度か話した。凄く、いい人だった。きっともうすぐ結婚して、俺の父親ってことに、なるんだろう。でも本当は…少し、悔しかった。母さんと俺の生活を救ってくれるのが、俺の知らない人だったことが。……こうして、俺のいつもの生活が、ほんの少し、変わった。」

× × ×

アオミ「ヒアンナ姫……僕には……リシアという恋人が……いや……姫を嫌いなわけじゃ決して……むしろ……むにゃむにゃ……」

シバタ「おい、アオミ、こら、起きろ、転校生だぞ」

アオミ「うん……転校生……?」

教師「今日からこのクラスの仲間になる、相田リオさんだ」

リオ「相田です。よろしく」

アオミ、突然立ち上がる。

アオミ「えっ……り、り、り、リシア……!」

リオ「……え?」

教師「どうした、アオミ」

アオミ「ちちち、違うんだ、リシア、ヒアンナ姫とは仕事関係で知り合っただけで…俺が好きなのはリシアだけだ!」

リオ「……リシアって、誰ですか」

シバタ「おい、アオミ、異世界から戻ってこい。ここは現実だ」

アオミ「……え……え……?」

教室内、しーんとしている。

シバタ「……ドン引き、ってやつだな」

アオミ「……マジかよ、俺……」

リオ、突然クスクス笑い始める。

リオ「面白いクラスなんですね」

教師「あ?……ああー、そうなんだよ、変なやつが多くて困ってるんだよ」

リオ、笑っている。

クラスのみんなも、静かに笑いはじめる。

生徒「変なのはアオミくんだけだと思いまーす」

生徒「同意ー」

アオミ「うるせえ、お前らもみんな、変だ」

アオミ「俺の毎日は少しずつ変わっていく。現実も、夢の中でも。次は何が起きるのか? それは、起きてみるまで、誰にも分からない」

生徒たちの笑い声が次第に遠くなっていく。

終わり