シスコンとブラコンの戦い

兄:
妹大好き。屁理屈主義

妹:
兄大好き。でも素直になれない

女:
察しが良すぎる妹の親友

男:
妹のクラスメイト。空気


兄「ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだー!」

妹「うっさい。私が何をしようと勝手でしょ。兄貴には関係ないでしょ」

兄「どこの馬の骨とも分からん奴に大事な妹をやれるか!」

妹「クラスメイトと出かけるだけでしょ。兄貴は大げさなのよ」

兄「妹よ。お前は分かってない。男は狼なんだ。どんな下心を隠し持っているか分からない。お前に気がなくても男は絶対に惚れてる。なぜならお前はかわいい。女神ヴィーナスですらひれ伏すぐらい美しい」

妹「気持ち悪い」

兄「俺はただお前が大切なだけなのに……酷い」

妹「シスコンも度が過ぎれば犯罪よ」

兄「妹に幸せになってほしいと願っているだけではないか!?」

妹「だったら邪魔しないでよ。私幸せになってくるから」

兄「ダメだー!せめて俺に紹介してからデートを」

妹「いやよ。私のプライベートにいちいち口出さないでくれる」

兄「いつからだ。いつから、妹は俺のことが嫌いに」

妹「物心ついたときから」

兄「ぐふっ!」

妹「じゃあ行ってくるから。……もしついてきたら絶交だからね」

兄「そ、そんな殺生な!」

・・・

男「遅かったね。どうしたの?」

妹「家族がどこに行くんだってうるさいのよ」

女「それって例のお兄さん?」

妹「……えぇ、そうよ。クラスメイトの男と出かけるくらいで大げさなんだから」

女「んん?あれあれ?もしかして私の存在は言わなかったんだ?」

女はニヤニヤと妹を見つめる。妹は気まずそうに目を逸らした。

男「どういうこと?」

男は不思議そうに首をかしげる。

女「いやいや、簡単な話だよ。この子、かなりのブラコンなんだよ。お兄さんのことが好きで堪らないんだよ。私のことについて言わなかったのは嫉妬して欲しいからだと見た」

妹「な、何を言ってるのよ!そ、そんなバカなことあるわけないでしょ。変なこと言わないでよ」

女「素直じゃないなぁ、この子は。まぁ、そこがかわいいんだよね。ねぇ、お兄さん?」

兄「よく分かっているじゃないか。妹はかわいい。それはもうすごくかわいい。このツンデレっぷりは俺の心を掴んで離さない」

兄は女の隣でうんうんと頷いている。

妹「な、なんでいるのよー!」

妹は恥ずかしさのあまり、兄をグーで殴った。

兄「ぐふっ!……いいもん持ってるじゃねえか。気に入ったぜ」

妹「ついてきたら絶交って言ったよね?」

兄「勘違いするな。俺はついてきたわけじゃない。一緒に出かけようと思っただけだ」

妹「それって着いてきたってことでしょ?」

兄「いーや、一緒に出かけるのとついていくのとでは大きな差だ。そうたとえて言うなら、タコとオクトパスくらい違う」

妹「それ一緒の生き物!」

兄「な……に?一緒だとバカな!」

妹「バカなのは兄貴のほうよ!」

兄「ふっ!もっと言ってくれ!」

妹「気色悪い」

兄「妹の罵倒、それこそが俺を強くする」

妹「ブラコンとかそんなレベルじゃない」

兄「ちっち。世のブラコンはこんなもんだぜ」

妹「もうやだこの人」

女「……仲いいねぇ」

兄「だろ!」

妹「はっ!ち、違うのよ。仲なんて良くないのよ」

女「そんな顔で言われても説得力ないなぁ」

妹「そんな顔って何よ」

女「デレデレと嬉しそうな顔」

妹「そんな顔してない!」

女「してるよ。ねぇ、お兄さん」

兄「してるしてる。そんな顔で見つめられたら、兄冥利に尽きるってもんだ」

妹「してないよね?」

妹は助けを求めるようにクラスメイトの男に視線をやった。男は困ったように頬をかき、答えた。

男「えっと、その……嬉しそうな顔してる」

妹「……ち、違うのよ。兄貴相手にしてるんじゃないの。あなた相手にしてるのよ」

妹は必死の形相で男に詰め寄った。その距離の近さにクラスメイトの男は思わず顔が赤くなる。

兄「離れろー!」

鬼のような形相で兄は二人を引き剥がす。

兄「やはり男は狼だ。お前には渡さん!」

男「ひぃ!」

がたがたと全身を振るわせる男。まさに蛇に睨まれた蛙である。

妹「私が誰を好きになろうと兄貴には関係ないでしょ!」

妹は男をかばうように兄の前に立ちはだかる。

兄「あぁ、確かに関係ない」

妹「っ!」

妹は一瞬傷ついた表情を見せた。

兄「だから俺がお前を好きでも関係ないよな?」

兄はニヤリと笑う。妹は一瞬のうちに頬を染める。

妹「な、何を言ってるのよ?」

兄「関係ないんだろう俺には?だったら俺が妹を好きであっても、お前には関係ないということに」

妹「なるわけないでしょ!当事者じゃない!関係ありまくりじゃない!」

兄「ほーう。だったらお前が誰を好きであっても、俺がお前を好きなら干渉してもいいってことだよな?」

妹「へ、屁理屈よ!」

兄「認めろよいい加減に。そんな態度のままなら、シスコンの俺もいつか愛想を尽かすかもしれないぜ?」

女「そうだよ。お兄さんが私に取られてもいいの?」

妹「えっ?」

女「お兄さんっていい男だよね。恋人になれるならなってみたいよ」

妹「だ、だめー!兄貴は私のなの!」

兄「へぇー」

女「ふぅーん」

妹「あっ」

妹は恥ずかしさのあまりうずくまる。

女「ちなみに今のはウソ。さすがに親友の兄と付き合おうと思うほど神経は図太くない。というか私、恋人いるし」

妹「騙したのね」

兄「素直にならないお前が悪い。俺はいつだってお前に本音で接してきたんだぜ?」

妹「うぅ……ごめんなさい」

兄「別に謝って欲しいわけじゃない。俺はただお前の気持ちを知りたいだけだ」

妹「……好き。兄貴のことが好き。これで文句ないんでしょ」

恥ずかしそうに視線を逸らす。

兄「最初からそういえばいいんだ」

女「じゃ、後は若い二人に任せて。私たちは退散しようかしら」

男「えっ、ちょ、引っ張らないでー」

妹「えっ、ちょっと。二人きりにしないでー!」

兄「酷くね?」

妹「だって好きって言った後に二人きりはさすがに恥ずかしい」

兄「そうか俺は嬉しいけどな」

妹「バーカ」

兄「うるせえよ。……せっかくの二人きりなんだ楽しもうぜデートってやつ」

妹「私たち兄妹なのに」

兄「今更すぎるぜ、それ」

妹「そうかも」

兄と妹はぎゅっと手を繋ぐ。ようやく見つけたのだ。手放しはしない。兄はそう思う。この気持ちは決してなくならない。お前にも無くさせない。

兄「妹よ、好きだ」

絶対に離しはしない。その気持ちははたして兄だけのものか……それは妹のみぞ知る。

妹「(私も好きよ)」