地球人代表と火星人代表

地球人代表:
地球の代表。

火星人代表:
火星の代表。


地球人代表「水と食料を分けてくれないか? 人口が増えすぎて資源が足らなくなっているんだ」

火星人代表「わかった。水と食料を分けよう。その代わりこちらにも水と食料を分けてくれないか?」

地球人代表「うん、俺は資源が足らないから分けてくれと言ってるんだ。水と食料を渡したら、余計資源が足らなくなるじゃないか」

火星人代表「言い方が悪かったな。互いの惑星の水と食料を交換しようということだ。もちろん水と食料は多く渡す。そちらは少なくていい。地球人はどんなものを食べているのか知りたいんだ」

地球人代表「なるほどそれなら納得だ。わかった。こちらも水と食料を分けよう。お口に合うかどうかはわからないけど」

火星人代表「それはお互い様だ。火星の食料は少々見た目がエグいからな。地球人の口には合わないかもしれない」

地球人代表「具体的にどのくらいエグいんだ?」

火星人代表「そうだな。火星の食料は原形を留めたままで調理する。だから、目玉がついたままの料理が多くてね。目玉には小さな穴が無数に空いてるんだよ。地球人の中にはぶつぶつに嫌悪感を抱く者がいるというじゃないか」

地球人代表「俺もぶつぶつは苦手なんだよな。目玉に小さな穴か。想像しただけでも気分が悪くなる」

脳内にその映像が浮かんできて、少しえずいた。

火星人代表「それだけじゃない。火星の生物はすべて血管が浮き出ているんだ。俺も血管が浮き出ているだろ」

地球人代表「血管が浮き出ているのか。食べたら口の中が血だらけになりそうだな」

火星人代表「血だらけになるぞ」

地球人代表「え? なんの?」

火星人代表「食後に毎回口の中をすすがないといけないのが面倒くさいんだよな。血だらけのまま放置するのはなんか嫌だし」

地球人代表「……それって血の味しかしないんじゃないか?」

火星人代表「ああ、血の味しかしない。いくら調味料で味をつけても血の味が上回ってくるんだ」

地球人代表「そのまま調理するからダメなんじゃないか? 下処理してから調理すれば血の味はしないのでは?」

火星人代表「皮膚が硬いから切れないんだ」

地球人代表「皮膚が硬いとかみ切ることもできないんじゃないか?」

火星人代表「熱を通すことで細胞が破壊され、皮膚が柔らかくなるんだ。火を通しさえすれば、簡単にかみ切れる」

地球人代表「それなら一旦火を通した後に切ればいいんじゃないのか?」

火星人代表は固まった。数秒間動かなかったが、やがて深いため息をついた。

火星人代表「なぜ、そのことに考えが至らなかったんだ。火を通せば調理は完了だと思い込んでいた。火を通した後に調理するという考えに行きつかなかった」

地球人代表「文明の違いもあるし、それは仕方ないんじゃないか?」

火星人代表「あんたのおかげで火星の食文化は一気に飛躍するだろう。感謝する」

地球人代表「いや、そんな大したことは言ってない」

俺はちょっと照れくさくなってそう言った。

火星人代表「確かに大したことは言ってない。火を通した後に切ればって言っただけだしな。そんなことは地球人なら誰でも思いつくことだろう」

地球人代表「……喧嘩売ってんのか? アドバイスしてやったのに、その言いぐさはないだろ! お前は思いつかなかったくせに!」

あまりにも腹が立ち、俺は火星人代表をギロリと睨み付けた。

火星人代表「文明も違うし、それは仕方ないだろ?」

火星人代表はどや顔をしながら、そう言い放った。

地球人代表「俺のセリフを真似やがったな!」

火星人代表「言いがかりはよしてもらおう。真似てなんかいない」

地球人代表「何を言ってやがる! 完全に真似ているじゃねえか!」

火星人代表「真似てなんかいないさ。あんたは『文明の違いもあるし、それは仕方ないんじゃないか?』と言った。それに対し、俺は『文明も違うし、それは仕方ないだろ?』と言ったんだ。ほら、真似てなんかいないだろ?」

地球人代表「言い方が違うだけでニュアンスは同じだろうが! タコみたいなタコめ!」

火星人代表「それはもう完全にタコだろ。俺はタコじゃない。火星人だ。血管が浮いているだろ?」

地球人代表「お前なんかどうせタコに毛が生えた程度の戦闘力だろ! ……え? それってヤバいじゃん」

俺は背筋がゾクリとするのを感じた。体の震えが止まらない。

火星人代表「自分で言っといてビビるなよ。それに生えてるのは毛じゃなく、血管だからな。正確には生えてるんじゃなく、浮いているんだけどな」

地球人代表「お前のような奴に水と食料を渡してたまるか! 水と食料はもらうがな!」

火星人代表「そんな勝手な言い分が通ると思っているのか!」

地球人代表「だまらっしゃい! 覚悟しろ、火星人!」

火星人代表「よろしい、相手になってやる!」

俺と火星人代表はつかみ合いの喧嘩に発展するが、ものの数分で決着がついてしまった。結果は両者引き分けに終わった。

これが後に全宇宙で笑いものになる地球人代表(笑)対火星人代表(笑)の個人戦争である。