友達の探し物

ユーイチ:
どっちかというとボケな高校生

シュージ:
ユーイチの友達。ツッコミ。


ユーイチ:「ああ、困ったわー。どこにあるのかな?」

シュージ:「どうかしたのか」

ユーイチ:「いや探し物してるんだけど見つからなくてさ」

シュージ:「何を探してんの?」

ユーイチ:「探してるものはたくさんあるんだけどさ、まずは夢?」

シュージ:「一気に聞く気無くなったわ。聞かなきゃダメ? その話」

ユーイチ:「俺ってば前途洋々な若者なわけじゃん?」

シュージ:「あんまり本人が言うことじゃないけど、世間一般には高校生はそうかもな」

ユーイチ:「だから才気あふれるこの身にあったでっかい夢を探してるんだけどなかなか見つからなくて」

シュージ:「見つからないならそこらに落ちてないんじゃね。競馬場の観客席の下とか探したか?」

ユーイチ:「そういうなんか欲望の塊的な夢じゃなくてさ。なんかもっと人に言うと応援してもらえるようなさ」

シュージ:「いや、自分のなかでも曖昧だからうまく説明できてないじゃん。もっと形が見えてから話せよ。聞いてて困るわ」

ユーイチ:「じゃあ、他にも見つからないものがあるんだけど聞いてくれるか?」

シュージ:「なるべく手短にな」

ユーイチ:「俺ってば、年頃の男子だからさ。女が欲しいんだけど」

シュージ:「キョーコじゃダメなんか。優しいし、お前の言うことなんでも聞いてくれるだろ」

ユーイチ:「キョーコはな、たしかにいい女なのかもしれないけど俺のかあちゃんだからな。そういうんじゃないんよ」

シュージ:「まあキョーコはヤスヒコのもんだしな」

ユーイチ:「父ちゃんね。両親茶化すのはやめてな。そうじゃなくて彼女が欲しいんだよ」

シュージ:「見つからないならそこらに落ちてないんじゃね。雑誌の袋とじの中とか探したか?」

ユーイチ:「面倒くさくなってるやん。さっきと同じ返しだし、ちゃんと聞いてよ」

シュージ:「そう言われても、ふわっふわしたオチのなさそうな話を振られても聞く気しないだろ。俺、忙しいし」

ユーイチ:「俺たち友達やん! 俺はシュージにそんな話をされても文句なしに聞くよ」

シュージ:「ほお、そういや、俺にも探してるものがあるんだけど、なかなか見つからなくてさ」

ユーイチ:「何? 何? 何を探してるの? でっかい夢、日常の中の小さな幸せ?」

シュージ:「お前のいいところ」

ユーイチ:「あるわー! たくさんあるわー! ちゃんと探せよ」

シュージ:「便器の裏とか台所のコンロ回りとか色々探したんだけど、見つからなくてさ」

ユーイチ:「そんな汚れたまりやすそうなところにはないわ! もっと腰据えて俺を見て、あるから!」

シュージ:「人に聞いてもないって言ってたよ」

ユーイチ:「誰だよ、そんなこと言ったやつ」

シュージ:「キョーコがあれはアホやし不器用でなんもできんから心配やわーって」

ユーイチ:「まさかのキョーコ、もっとオブラートに包め、キョーコ!」

シュージ:「ヤスヒコもシュージ君はたまに来ては掃除してくれたり気を使ってくれるのにユーイチときたらポンコツでって」

ユーイチ:「いろいろ言いたいことあるけど、お前、たまに俺んちの掃除してんの?」

シュージ:「お前は俺の拭いたコンロで調理された料理を食って、俺の磨いた便器に座って大してるんだよ」

ユーイチ:「うわあ、さっきは冗談だと思ったけど、お前、俺んちの掃除しながら俺っていいとこないなって思ってたってこと?」

シュージ:「掃除してるときはいくら小遣いくれるかなしか考えてないよ」

ユーイチ:「それはそれで嫌だわ。道理で最近小遣い減ったと思ったわ」

シュージ:「今度からちゃんと俺に感謝しながら便しろよ」

ユーイチ:「発射のタイミングでお前の顔浮かぶの嫌だから今度から自分で掃除するわ」

シュージ:「洗剤とブラシは洗面台の下にあるからよく探せよ」

ユーイチ:「お前のほうが俺のうち詳しいの嫌だわー。というかさ、そんな所帯じみた話がしたかったわけじゃなくてさ」

シュージ:「なんだよ」

ユーイチ:「未来に対しての漠然とした不安感というか」

シュージ:「今日の夕飯はハヤシライスって言ってたから、昼飯のカレーとは被らんよ」

ユーイチ:「そんなことに不安感じてないし、キョーコ、ニアミスしてるし」

シュージ:「じゃあ、なんだよ」

ユーイチ:「こんなバカ話もいつまでできるのかなとかさ」

シュージ:「10分後くらいから用事があるからな、俺」

ユーイチ:「そんなんじゃなくてこうセンチメンタルな気持ちになるというかさ」

シュージ:「ふうん、じゃあ思い悩むことで忙しいんか。お前もこの後誘おうと思ってたのに」

ユーイチ:「まあ忙しくはないけど、何の用なの?」

シュージ:「女の子たちと遊ぶ約束してるからもう一人男子を探してて」

ユーイチ:「暇人ならここにいますよ」

シュージ:「じゃあ一緒に行く?」

ユーイチ:「どうせキョーコだろ?」

シュージ:「違うけど。お前いつまで経っても母親離れできないマザコンだからモテねえんだよ」

ユーイチ:「マザコンじゃねえし! お前が散々、俺の両親のネタ振るから言っただけだし!」

シュージ:「じゃあ来るの?」

ユーイチ:「いや今日はやめとくわ。俺、かあちゃんのハヤシライス好きだし、家の掃除今日から手伝うから」

シュージ:「そういう素直さがお前のいいところだと思うよ」