恋人はロボット?

西暦2200年――世界ではすっかりロボットが幅を利かせていた。
もはや介護や地雷撤去どころではなく、一家に一台は人型ロボットがいるという状態。

太郎の家にも勿論ロボットがいた。
太郎は友達がいないので、友達ロボットを買うか恋人ロボットを買うか相当悩んだが、結局は女性型の恋人ロボットを購入したものである。

ロボ子「太郎さん。ご飯にする? お風呂にする? それとも…あ・た・し?」

太郎「ごめんロボ子。今、朝なんだよ。その台詞は夜俺が帰ってきた時に言って」

ロボ子「ワオ! テヘペロ」

太郎「でさ、俺今日調子悪いんだよ。だから会社休むわ」

ロボ子「わかりました。じゃあ会社に連絡すればいいですね?」

太郎「うん。お願い」

ロボ子が会社に連絡している隙に、太郎はもっそりと布団に入り込んだ。

太郎「こんな酷い風邪ひくの久々だな」

ロボ子「太郎さん。電話終わりました」

太郎「ありがとう」

ロボ子「おかゆ食べますか?」

太郎「ううん、ちょっと寝るわ」

ロボ子「分かりました。私はどうすればいいですか?」

太郎「ゆっくりしてていいよ」

ロボ子「本当ですか?」

太郎「うん」

ロボ子「本当に本当ですか?」

太郎「しつこいな! 良いよ、自由にして」

ロボ子「わーい。じゃあ私、隣のロボ男さんと不倫してきますね!」

太郎「おう。…って、は!? 不倫!?」

ロボ子「実は私、太郎さんが会社に行っている間、いつもロボ男さんと不倫してるんです」

太郎「はあ!?」

ロボ子「だから今日太郎さんが会社休むと言った瞬間、チッ、クソ! って思いました」

太郎「正直すぎるなお前!」

ロボ子「そんなわけで、じゃあ行ってきまーす!」

太郎「ちょいちょいちょいちょい待て!」

ロボ子「なんですか? ロボ男さんとの時間が減っちゃう」

太郎「そうじゃないだろ!お前さ、俺の恋人ってことになってるじゃん?」

ロボ子「そうですけど、太郎さんは全然魅力的じゃないです」

太郎「なにい!」

ロボ子「太郎さんはOSも古いしレスポンスも遅いし性能悪いです。それに引き替えロボ男さんは最新OSで高性能です。それを比較したら太郎さんなんて…ぷぷっ(笑)」

太郎「おーい! (笑)じゃねーよ!」

ロボ子「とにかく私はロボ男さんのところに…」

太郎「行かせるか!」

ロボ子「チッ。うるせー男だな」

太郎「お前本性それかよ!?」

ロボ子がロボ男のところに行くといってきかないので、仕方なく太郎は一緒についていくことにした。

太郎「くそう…ロボ男め。俺のロボ子を誑かしおって…!」

太郎「どんな顔してんのかこの目でじっくり拝んでやるぜ!」

そう勢い込んで隣室のドアをノックすると、中からは華奢な女性みほが現れた。

みほ「あ…はい。なんでしょうか…?」

ロボ子「ロボ男さんはいらっしゃいますか?」

みほ「……あなた、誰?」

ロボ子「隣に住んでいるロボ子です」

みほ「もしかしてアンタなの? ウチのロボ男に手出したのは…」

ロボ子「そうです。私とロボ男さんはアッチッチーな仲なのです」

みほ「ふざけんな!」

みほがロボ子に殴りかかりそうになったので、太郎は咄嗟にロボ子を庇った。

太郎「待て待て、ちょっと落ち着けって」

みほ「落ち着けるわけないでしょ! アンタがしっかりこの女ロボットを見張らないからこんなことになってんじゃない! どうにかしなさいよ!」

太郎「そんなこと言われたって…。っていうか俺だって被害者なんだぞ!?」

みほ「そんなの知らないわよ。ウチのロボ男はね、恋人ロボットなの。しかもめっちゃ高かったの。30年ローン組んで買ったのよ? それなのに…それなのにこんなチンケな女ロボに取られるなんて!」

太郎「そ、それを言うなら俺だって10年ローンだぞ! まあ若干値引きしてもらったけど…でも俺の収入からすればかなり大枚はたいてロボ子を買ったんだ」

ロボ子「私、そんな安い女だったのね…悲しい」

みほ「そうよ! そんな安い女にロボ男は渡さないわ!」

太郎「あーもう! よくわかんないけど、とにかくそのロボ男と会わせてくれよ」

みほが声をかけると、中からロボ男がやってきた。

30年ローンを組んでいるだけあって、さすがにしっかりしている。
しかもかなりのイケメンだ。

ロボ男「呼んだかい、みほ?」

みほ「ロボ男! この女なんでしょう、あなたを誑(たぶら)かしたのは!」

ロボ男「やあ、ロボ子。どうしたんだい、こんな朝っぱらから」

ロボ子「実はね、今日は太郎さん、風邪をひいて会社を休んでいるの。その間私は自由にして良いと言われたから、早くロボ男さんと会いたくて」

ロボ男「おお、なんていう偶然なんだ。実はうちのみほも今日は風邪で会社を休んだんだ。適当におかゆを出して寝かしつけたら君との逢瀬を楽しもうと思ってたところだよ」

ロボ子「まあ♪」

太郎「お前ら自重しろ! 普通そういうのはオブラートに包んでだな…!」

みほ「ひどい…」

太郎「え?」

みほ「私が30年ローンを組んで購入しなかったらロボ男はこの世にいなかったくせに…それなのに私を捨てるのね…ひどい…もう立ち直れない…」

太郎「おい、ちょっと。そんないきなり泣くなって」

みほ「これが泣かないでいられる!? だってまだローン残ってるのよ!?」

太郎「ローンの話が多いなオイ!」

みほ「それに私、今迄ずっとロボ男だけが心の支えだった…これからどうすればいいの…」

太郎「あ…」

ロボ男「みほ、後は適当に眠っていておくれ。僕はロボ子と楽しんでくるよ」

ロボ子「じゃあね、太郎さん」

ロボ男とロボ子は仲良さげに手を繋いでどこかへ行ってしまった。
そこに残されたのは、ロボットに失恋した男女一名づつである。

太郎「えっと…とりあえず俺、風邪ひいてるんで、もう帰ります」

みほ「私だって風邪ひいてるのよ。会社まで休んだのに」

太郎「じゃあ…二人で療養しますか」

みほ「…なにそれ。もしかして口説いてる?」

太郎「そういうわけじゃないけど、あいにく俺も失恋したばっかなんで」

みほ「似たもの同志ってことね」

太郎とみほは、ぎこちなく笑い合った。
友達も恋人もいないからロボットを購入した二人だが、まさかこんなところで生身の恋の予感が訪れるとは――!

一か月後、みほの部屋にはロボ男とロボ子のカップルが、太郎の部屋には太郎とみほが住んでいた。

END