こっくりさんに聞いてはいけないこと

スミレ:
高校の新聞部一年生。ゴシップ好き。

ヒヨリ:
新聞部部長。リアリスト。

部長:
新聞部の穏健派。威厳ない男子。


部長:「そろそろ来月号の特集を決めなきゃなんだけど」

ヒヨリ:「私はコラムと運動部の大会結果の記事を書きますんで、他の部員にお願いします」

部長:「そうは言っても、先月も先々月も僕が一面と特集記事を担当してるからできればヒヨリさんに代わってもらえたらなって」

ヒヨリ:「うーん、あっ、そう言えばスミレが何か書きたい記事があるから取材行くって言ってましたよ」

部長:「ええっ、取材行くなら最初に話を通してくれないと、なんかあったとき怒られるの僕なのに」

スミレ:「ただいま戻りました!」

部長:「おかえり。次からどこ行くか行ってから取材してくれたら助かるなって」

スミレ:「いやあ、私、面白そうなこと見つけると一直線なもんで。ジャーナリストはスピードですよ、スピード」

ヒヨリ:「それで、何の取材だったの?」

スミレ:「先週、放課後に一年生の教室で女子三名が気絶した状態で見つかって病院に運ばれた事件あったじゃないですか」

部長:「先生に戒厳令がしかれてるのか何も教えてくれないってぼやいていたやつですか」

スミレ:「それが私独自のルートでしらべたところによると、三人はこっくりさんを呼んでいたらしいとのことでして」

部長:「それはまた平成の時代に古風な遊びだね」

ヒヨリ:「それ女子の間で噂になってる奴じゃん。オカルトサイコ野郎三人がこっくりさんで発狂かよってバカにされて」

スミレ:「それが最新の噂だと、三人はこっくりさんに聞いてはいけないことを聞いたから祟られたんだってことになってるんですよ」

部長:「こっくりさんの禁止ワードですか。初耳ですね」

スミレ:「それで私、この三人でこっくりさんを体験して先週の事件と比較して記事にできればなと思いまして」

ヒヨリ:「何も起きないと思うけど」

スミレ:「それでもやってみたいんです」

部長:「意欲ある後輩を止める理由はありません。ちょっとやってみますか」

・・・

スミレ:「よし準備はできましたか? 先輩方、さっき教えた通り言ってくださいね」

ヒヨリ:「ハイハイ」

全員:「こっくりさんこっくりさんおこし下さい」

移動→はい

部長:「これは来たってことでいいんでしょうね」

ヒヨリ:「スミレ動かしたでしょ」

スミレ:「これはれっきとした取材なんですからいちゃもんは言いっこなしですよ」

部長:「まあまあ二人とも落ち着いて、じゃあ僕から聞きましょうか。こっくりさん、好きなものは何ですか?」

ヒヨリ:「何ですか、その質問」

移動→こ→ど→も

スミレ:「うーんホラーなようなそうでもないような」

ヒヨリ:「こっくりさんは子供好きだったで記事書けるかあ?」

部長:「質問が悪かったですかね、他の方聞いてみてください」

ヒヨリ:「そうだなあ。じゃあ、この学校の先生たちが私たちに秘密にしていることを教えてください」

スミレ:「事件の戒厳令について教えてくれるといいですが」

移動→に→ゆ→う→い→ん

部長:「入院?」

ヒヨリ:「そういえば事件の当事者の三人がまだそれ以来登校してないらしいんですよね」

スミレ:「三人はまだ病院にいるってことでしょうか」

部長:「それを秘密にする必要がありますかね」

スミレ:「こっくりさん、どこに三人は入院しているんですか?」

移動→こ→ど→も→う→み

ヒヨリ:「子供海? 海沿いの小児科とかってこと?」

部長:「いやこれはそうじゃなくてたぶん」

スミレ:「産婦人科ってことですか?」

移動→はい

ヒヨリ:「何それ。妊娠してたってこと?」

部長:「これはちょっとこっくりさんの発言としても記事化が無理そうな話になってきたな」

スミレ:「それは誰の子なんでしょう?」

ヒヨリ:「やめなよ。趣味悪い。もっと他のことを聞こう」

部長:「それじゃあ、その三人はこっくりさんに何を聞いたんですか?」

移動→お→ろ→し→か→た

スミレ:「これって大根のじゃないですよね」

ヒヨリ:「やめて。笑えない」

部長:「まとめると、三人のうち少なくとも一人が妊娠していて誰にも相談できずにこっくりさんに相談して、そこで何かが起こって倒れたと」

ヒヨリ:「部長まで何を言っているんですか。こんなのインチキですよ」

スミレ:「文句は後でですよ。ヒヨリさんも何か聞いたらどうですか」

ヒヨリ:「こっくりさん、あなたは嘘をつきましたか?」

移動→いいえ

スミレ:「そんなこっくりさんに失礼なこと」

ヒヨリ:「スミレが動かして好き勝手言ってるんでしょ?」

移動→ち→が→う

部長:「それにしても十円玉がきれいに動くもんだな」

スミレ:「信じてくださいよ先輩。正直私もなんか怖くなってきたんですってば」

ヒヨリ:「こっくりさんなんていないんでしょ?」

移動→い→る→い→る→い→る→い→る→い

部長:「ええと止まらないんだけど」

ヒヨリ:「スミレふざけてないでやめなさいよ」

スミレ:「動かしてませんってば。それより十円玉から指が離れないんですけど」

移動→し→ね→し→ね→し→ね→し→ね

ヒヨリ:「いやあああああああっ」

部長:「逆境に弱いですね、ヒヨリさんは」

スミレ:「こっくりさん怒っちゃったじゃないですか。何が禁止ワードだったんだろ。色々失礼なこと言いすぎてもうわからないや」

部長:「そんな悠長なこと考えてる場合でもないですよ。こっくりさん許してくれませんか?」

移動→いいえ→さ→さ→げ→ろ

スミレ:「何をですか?」

移動→こ→ど→も→く→れ

部長:「好きなものってそういう」

スミレ:「三人も子供を捧げたんですかね」

部長:「オカルトですねえ」

ヒヨリ:「いやだあ、もう帰るううううう」

部長:「それしか方法がないなら仕方ないですね」

スミレ:「誰かってなりますけど」

部長:「それならまあ」

暗い新聞部の部室から突如ヒヨリの泣き声が止んで、子供が一人消えた。