【BL】罠は随所に仕掛けられてるって、気が付かされた時はもう遅い

田代:

朝月:
3年の先輩、美人、やばい人

相沢:
ちょい役


何も自分で望んで男子校に入ったわけじゃないし、それも全寮制なんてとんでもない所に入学したくてしたわけじゃない。

他の高校が全滅した結果だったらまだ、そこはあきらめもついたんだが、親の離婚が原因で全寮制の男子校に入るしか手が無くなったってのは、自分でも情けない気分ではある。

いや早い話、どっちにくっついていってもろくなことにならないと言うか、結局家事炊事は俺がやることになるだろうし、要は今までと同じことだけどさ。でもいい加減それも飽きて来てたんで、じゃあいっそって感じで選択肢の一つでもあった全寮制の高校に進学したわけ。

そこが男子校だったのは、全寮制だから仕方ないと言えば言える。

メリットとしては、この選択肢の場合は月々の小遣いが両方からもらえるってことで、加えて家事からの解放も魅力的だった。共稼ぎで、仕事第一の親2人抱えて延々小学校からずっと、家事やってた自分に拍手を送りたい。

え? 何故適当にしなかったって?

俺だって美味いもの食いたかったし、コンビニ飯やスーパーの総菜ばっかじゃ我慢できなかったってのが、ある意味敗因でもあった。1回でも飯作っちゃうと、そういう家庭の場合作ったもの負けってことなんだよな。

かくて10年近くに及ぶ家事から解放されるために、俺は高校進学先を決めた・・・・やはりちょっと情けない理由だと思う、自分でも。

・・・

しにても、何と周りは見事に男男男。

男の海に溺れてしまいそうな、いやーーな予感がするほど男だらけ。ご丁寧に、教師の皆様も男だけ。

全寮制の男子校だから、以下略。

・・・

さて入学式(男の波)も終わり、入寮も無事済んで。ありがたいことに個室がもらえると言う待遇の良さに、正直涙が出そうになった。

授業中やら部活やら、男の海に溺れかけるのは目に見えてるんだ、せめて部屋ぐらいは男っ気は自分だけであって欲しいと言う、その希望はかなえられたけど。

ううむそれでも、寮の食堂にしろ娯楽室だと言われた、つつましくもテレビが一台置いてある部屋にしろ、ここでも男だけの世界が。

俺、目眩しそう。

と、ふいに目が行った娯楽室の片隅。

何で女の子が、いるはず・・・・無いよなあ。でもあれはどう見ても、女の子にしか見えないが。

とかパニック起こしてたら、クラス同じで寮の部屋隣同士と言う、相沢ってのが話しかけてきた。

「おいおい田代、あれ男だって」

半分笑いながらだけど、裏の台詞も聞き取れた(俺も間違えたさ)けどね。

「誰だあれ? いたっけ俺らのクラスじゃないよな」

「ちゃうちゃう、あれ3年の先輩。朝月さん」

3年んんんん?

ど、どう見たって同い年か年下の女の子にしか見えん。

「俺もさっき聞いたんだけど、切れ者だって噂だぜ」

そう言われてみれば、綺麗な顔立ちなのに眼だけがやたら鋭いような、冷たいような。

と目線感じたのか、その先輩がこっち向いた。

うわ、認めるのは悲しいが・・・怖い、この人怖い。綺麗だけど怖い、これが正直な印象だった。つまりもうこの時点で、俺の直感は危険を告げてたわけだ、うん。

・・・

さて何とか学校にも慣れてきて、男だけの世界が当たり前になりつつ・・・・なってたまるか、と思いつつもならされてきた頃。

GWがやってきた、皆さんめでたく男女半々の世界へお帰りになる季節である。

俺は居残りね、帰るところもないし。ってわけじゃないけど、ここにいたほうが面倒がない、面倒見なくちゃいけない相手がいないだけマシって感じ。

寮の食堂とかしまっちゃうんで、居残り組はささやかに自炊するかもしくは、近くのコンビニとかで食事調達難だけど、勿論俺は自炊組。

昔(?)取った杵柄で、寮の調理場に入り込んで自分の好きな物だけせっせと作って食ってた。いやあ、いいなあ自分の好みで飯が作れるのって。

とか思いつつ2日目の昼、朝炊いておいた飯を握って握り飯で昼飯でも、と思って食堂に降りて行ったら、誰もいないはずの食堂にポツンと座っているのは、ま・・・まさか。

最初ビビったのは内緒にしておいて、いやここの寮で「うらめしや」が出るとすれば空腹に耐えかねて、って学生の霊だろうと思ったんで。がしかしそこにいたのは、例の朝月さんだった。
・・・

うわちゃ、相変わらずお綺麗で。相変わらず、ちと怖い。

まあ相手先輩なんで、一応会釈とかして俺調理場に入って握り飯作って、ついでにパパッと味噌汁も作って。でもってトレイに乗せて食堂に戻ったら、朝月さんがこっち見てる。

えーと、御用でも?

「飯」

はい?

「美味そうだな」

は、はい。

「俺の分あるか?」

何様だ? 多分先輩様だ・・・逆らってはいけない男子校の年功序列。

「これでいいなら、どぞ。俺の分まだありますから」

大人しく差し出したら、大きな目がぱちくり。うわ、かわええ。

「助かる、すまん」

飢えてたんだろうか、てか美人でも腹減るのね。何てお馬鹿なこと考えつつ、自分の分もっかい作って戻ってみると、先輩まだ食べてない。

まさか待っててくれたんだろうか、冷めちゃったんじゃないだろうか味噌汁。

手を合わせて頂きます、ってのが何となく同時になったんで、ちょっと楽しくなったけど。朝月さん、必死で握り飯に食らいついてる。うわよほど腹減ってたんだ、むせるぞ・・・てかむせた・

「大丈夫ですか、水飲んでください」

ゴホゴホしつつ「すまない」とか言う先輩に、可愛さ2倍だなあとか男子校の魔術にかかったか俺、状態を感じるGWの2日目。

「すまん、銀行に行くのを忘れてて金が無くてな。コンビニにも行けなかったというドジだ、笑ってくれていい」

「そういう事ってありますね、俺自炊なんで良かったら一緒に作りますよ。どうせ材料は冷蔵庫のもの使ってるし」

再び目がぱちくり、やべえ・・・・・これやばい、可愛すぎ。

・・・

正直大変にやばい予感のする、男子校のまだまだ始まったばかりの1年目。

しかも殆ど2人きりらしい、GWも始まったばかり。この先、お先真っ暗なのかそれとも、俺馴染んじゃうのか不安もふと心をよぎる。

がしかし、

「すまん、本当に助かる。休みが明けたら必ずこの礼はするから。俺は朝月だ、君の名前聞いてもいいか」

「た、田代です」

思わずどもっちゃったのは、どどど、どういう礼をしてくれるんですかとかマジ反射的に考えちゃったせい。

やばいやばいと思いつつも毒されていく己が見える、ピカピカの高校1年生。まだまだ枯れてはいない若さの塊、この女っ気のない学校でそっち系に眼覚めちゃうのか。

いやこの先輩なら目覚めても仕方ない、とか思っちゃう時点で・・・もう罠にはまってるだろ自分。

美味そうに握り飯にかぶりつき、味噌汁をすすり込む先輩見つつ。いやあ、可愛い言って正義だなあと思った時点で、自分の行く末も見えてしまったわけだけど、まいっか。