【GL】シオン

芹沢りな:
女性 17歳 高校2年 160㎝
ショートカットがよく似合う、涼やかな目元をしている。
女子高通いな為に周りの女生徒から「王子様」と呼ばれている。嫌だけど、それを上手く言えないでいる。
カワイイ物や甘い物が好き。でもそういう乙女な事は似合わないと思っていて隠している。

早川咲(さき):
女性 17歳 高校2年 163㎝
りなのクラスの転校生。
色白でくりくりとした大きなはしばみ色の瞳、ハーフで髪も明るいブラウン。
りなより身長が3㎝大きく、スラリとした体躯。
砂糖菓子しか食べないような、か弱そうな見た目に反して力が強い。
物事をハッキリ言う男勝りな性格。


私はこの学校の「王子様」、でも本当の私は、「お姫様」に憧れている。
いつか綺麗な瞳の王子様が、私を浚(さら)ってくれたらいいのに、なんて想像しながら毎日を過ごしている。

「りな君、おはよう」

「おはようございます、先輩」

「おはよー、りな君」

「おはよ、何だか眠そうだね」

私の名前は、芹沢りな。17歳、女子高生。そう、「女子高生」だ。
それなのに私の事を皆が「りな“君”」と呼ぶのは、ここが女子高で私が男の子っぽい見た目をしているから。
女子高ってソウイウ風習があるんだとは聞いていたけど、自分がその対象になるなんて思ってもみなかった。
入学から数週間で私の靴箱や机には女生徒からのラブレターが入っていて、裏庭に呼び出されて行ってみれば告白もされた。
でも私は体も心も女だし、恋人はまだ出来た事はないけど、きっと恋愛対象は男の人だ。

1年の時に、一度クラスメイトに何となく言ってみた。「私、可愛いぬいぐるみとか好きなんだよね。パフェとか甘い物も大好き」って。
そうしたら一斉に「りな君にそんなの似合わない」と大反対をくらって、一部の生徒からは「ちやほやされて調子に乗ってる」なんて言われちゃった。
多分、皆の理想の「王子様」像を壊したからなんだろうな、それ以来結構臆病な私は、本当の私を出せないままでいる。
でもこれも卒業するまでの辛抱だって思って我慢していた毎日に、あの子と出会ったんだ。

「えーと、今日からこのクラスの仲間になる早川咲さん。皆さん、仲良くしましょうね」
朝の会、先生が連れてきたのは、お姫様みたいな見た目の転校生だった。
「早川 咲(さき)です、宜しくお願いします」
ぺこり、とお辞儀をした拍子に腰元まである長い髪がさらりと流れた。
はしばみ色の瞳、明るいブラウンの髪、色も白くて眼も大きくて、何だか本当に絵本の中から抜け出してきたお姫様みたい。

(私がこの子みたいな見た目だったらいいのになぁ)
そう思いながらじっと見ていると、早川さんが視線に気づいたのか、私を見てにっこり笑った。
うわ、笑った顔もすごく可愛い。
何だかアイドルみたいで、思わず顔が熱くなるのを感じて目を伏せる。
早川さんは窓際席の私の隣。座った後も何だかこちらに視線を感じて、どうしようもなく恥ずかしくなってそのまま窓の外を眺め続けた。

その日は結局早川さんはクラスメイトに囲まれたまま。私は友達と話して、でも気になってチラチラ見る度にどうしてか早川さんと目が合っては逸らすを繰り返した。
何でこんなに気になるんだろう、だったら話しかければいいのに、その勇気も出ないんだもんな…。
そのまま授業が終わってさあ帰ろうと下駄箱で靴を履き替えていると、ぽん、と肩を叩かれた。
振り返ると、ニコニコしている早川さん。「ねえ、今日、何度も目合ってたね」ニコニコ。

「えっと、うん、あの、何度も見ちゃってごめん」思わずしゅんとする。怒っちゃったかな。そうだよね、私の目つきって結構悪いし、睨まれてると思われたかも。

「あ、怒ってないよ、あのね、仲良くしたいなと思ったの」貴女、すっごく可愛いんだもん。

「え、」かわいい? わたしが?

「うふふ、何だか私の飼ってるトカゲのみーくんみたいで、とっても可愛いの。その目元、みーくんそっくり」ニコニコ

トカゲ、飼ってるんだ。ふわふわのペルシャ猫とかちっちゃくてくりくりした瞳のチワワとか飼ってそうなイメージだけど。

「ええと、トカゲ」

「うん、トカゲのみーくん」

「そう…」何だか一気に力が抜けて、思わずその場に座りこむ。

別にトカゲに似てるって言われたのがショックなんじゃなくて、何だか面白い、この子。

「ねえ、これから私の家に来ない?」特別。みーくんに会わせてあげる。

座り込んだ私の目の前に、早川さんの白くて細い手が差し出された。
顔を上げると丁度窓を背にして立っている早川さんに後光がさしているように太陽の光が見えて、何だかその光景にドキッとする。
王子様みたい、まるで、傷ついたお姫様を助けに来たような。

「お姫様、お手をどうぞ」

そんな私の馬鹿な妄想が早川さんにも伝線したのか、早川さんがにっこり笑って言う。

「お姫様ってなりじゃないけど…」そう呟いて早川さんの手を取ると、想像以上に強い力で引っ張られ、思わず早川さんの胸に飛び込んだ。

160㎝の私より少しだけ背の高い早川さんは、そんな私を軽々と抱き留める。

「お姫様みたいに可愛いよ。私には、貴女がお姫様に見える」

優しく私の背中に手を回して抱きしめたまま、耳元で囁かれる。
先程まで聞いていたよりちょっと低い声で、それで益々ドキドキしてしまって、また顔が熱くなってくるのを感じて動けなかった。
すると早川さんが私を抱きしめる力を緩めて、「お姫様、私を王子様にしてくれる?」って言って、俯(うつむ)いた私の顔を覗き込む。
いたずらっ子のような瞳に心臓が高鳴って、そのまま小さくうなずくと、早川さんは私の右手を取って歩き出した。

今朝出会ったばっかりで、早川さんと喋ったのなんてほんのちょっとで、まだまだ早川さんの事を知らない。
でも今1つだけ解るのは、私は早川さんに恋をしたという事だ。
可愛くない、周りの女生徒に王子様って言われる私をお姫さまって言ってくれた早川さんを、好きになっているって事。
少なからず早川さんも私を想っていてくれればいいな、と思いながら「ねえ、手、そんなに強く握らなくても逃げたりしないよ」
ぐんぐんと私の手を引っ張っていく早川さんに言ってみた。

「だって、せっかく見つけた私のお姫様だもん、ずっと一緒にいたいじゃない」はしばみ色の瞳が、にっこりと笑って言った。