【GL】違うから好き

「自分と違うところが好き」ってこれって当たり前のことだと思う。

「趣味が合う人がいい」とか「価値観が似た人の方が楽でいい」とか言う人がいるけど、そんなの自分が好きって言っているようなもんだと私は思うんだ。

この広い世界には自分が持っているものよりもきれいで格好良くて正しいものを持っている人がいるかもしれないのに、「好きなタイプは?」って聞かれて最初にそんなことを答える奴は世間知らずのナルシストだと思うんですよ。

広い世界を見渡してみれば、すぐ近くに自分と違うところを素敵だと思う人がいるかもしれないってのにさ。

・・・

そんなことを友達に偉そうに語る私は今日も恋に破れて家に着いたのだった。

真っ先に部屋に向かい、制服のままベッドにダイブして枕に顔をうずめる。

枕は今日も同じ匂いで私を優しく包んでくれる。

その柔らかい感触を肌で感じると何だか泣けてきた。

彼女は私と手をつないでくれた。

彼女のほっぺにキスをしても嫌がらずに微笑んでくれた。

それでもそれから先はダメだと言って、私を拒絶した。

私が女の子だからいけないのだろうか。

まあそうとしか考えられないわけだけど、それって仕方ないじゃんと思う。

女の子が好きな女の子として生まれてしまったのだから。

彼女は「自分と違うところが好き」と言ってくれた人だった。

それでも私の違うところは受け入れてくれなかったわけだ。

あるいは彼女が好きになる条件としての最初の彼女との違いを私は持っていなかったか。

考えてもどうしようもないことを考えて私はむなしくなって寂しくなる。

恋に破れた日、私は決まって、あいつが帰ってくるのを待っている気がする。

あいつはどうしようもない私をいつも優しく慰めてくれる。

ふと思った。あいつは、美智はどうなのだろう。

あいつは……私とほとんど同じのあいつはどんな人が好きだというのだろうか。

・・・

この女は自分と同じだと思いながら私は目の前の女を叩いた。

人を傷つけて悦に入る糞野郎だ。

「私が何をしたって言うの」と女はわめく。

「知らねえよ。自分で考えろ」

私はそう言いながら女の顔を見た。

面長で眉が太く大人っぽい顔。キューティクルのくるんと光った長い髪。

風貌は童顔で髪はくせっ毛でショートな私たちとはずいぶんと違う。

おまけに男好き。

こんな奴のどこに沙智は惚れたんだかと思うと笑えてくる。

恨めしそうにこちらを見てくる女の頬を叩くと、こちらを睨みつけてきた。

「ずいぶんと沙智で楽しんだんだろう? 少しくらい楽しみを分けてくれたっていいじゃないか?」

女は訳もわからず放心してしるようだ。

そりゃそうだろう。さっき自分がふって泣きながら去っていった女と同じ顔の奴が笑いながら自分を叩いてくるのだから。

まあ何もわかる資格なんてないんだ、こいつには。

沙智の純情をもてあそんで、沙智の挙動を逐一男友達に報告しては笑っていた糞野郎には。

まあ、私もそれがわかっていて沙智の恋を応援していたわけだが、実際可愛い沙智がふられるのを見ると腹が立ってしまったわけだ。

いじらしい沙智をいじめたくなる気持ちはわかる。

実際、私も裏切られ続け沙智の顔を楽しませてもらった。

ただ沙智は私のものだ。

渡す気などさらさらないし、それが沙智を好きでもない奴にはなおさらだ。

女はめそめそと泣き、長い髪はくしゃくしゃに乱れ、涙で頬に髪が張り付いている。

これが、沙智が好きな女かと改めて思う。

泣きたいのはこっちの方だ。

好きな人と同じところが多く生まれてきたがために好きになってもらえない私の気持ちがお前にわかるか?

ああ、どうも泣けてくる。

こんな日は家に帰って沙智に慰めてもらうに限る。

・・・

私が泣いていると、部屋に私と同じ顔の女の子が入ってきた。

彼女は美智。私の双子の妹だ。

「ちょっと聞いてよ」

私が声をかけると美智は「何? あの女の先輩に振られでもした?」と笑いながら言ってきた。

美智はいつも私より察しがいい。

「どうしてわかったの?」と聞くと「沙智のことならなんでもわかるよ」と美智は笑う。

私ってそんなに顔に出る方なのだろうか。

同じ顔をしているというのに私ときたら美智の顔を読めた試しがない。

涙を手で拭って、美智の顔をじっと見つめる。

美智は恥ずかしそうにはにかんでいる。

その笑顔のどこかにいつもと違う影が見えた気がした。

「美智も今日何かあった?」

試しに聞いてみると、美智は意外そうな顔をした後で「別に何も」と言ってほほ笑んだ。

私は美智のことを何も知らない気がして、寂しい気持ちがした。

「ねえ美智はどんな人が好きなの?」

美智は少し考えて「自分と似ている人かな」と言った。

・・・

沙智にどんな人が好きかと聞かれてどきりとした。

いつもと違う真剣な顔にいつものように「美智のことが好きだよ」と返すことができなかった。

「ねえ、じゃあ姉さんはどんな人が好きなの?」

「いつも言っているでしょ。自分と違う人が好きだって。ふられた人にそんなこと聞くもんじゃないよ」

私と姉さんは背格好も顔も髪型も着る服の趣味だって同じだ。

でも、好きな漫画も違えば得意な科目だって違う。

それから女の趣味も。中学生になってからどんどん私たちは違っていっていると思う。

私にとって大好きな姉さんと違っていくのは寂しい。

あるいは、もっともっと違う人間になってしまえばいつの日か姉さんは私を好きになってくれるのだろうか。

それはあとどのくらい違う人になればいいのだろう。

・・・

私が冷たい言い方をしたせいか、美智は寂しそうな顔をしていた。

私よりも大人な気がしても、やっぱり私の妹なのだ。

「それからもちろん美智のことも大好きだよ」

そう言って彼女に抱き着いた。

妹はアハハと笑っていたが、泣いているような気もした。

「私もだよ。姉さん」