太陽と月

サン:
太陽の化身。情熱的

ムーン:
月の化身。素直じゃない


サン「オレ様の熱い心が火を噴くぜー! キャッホー!!」

ムーン「あらあら、はしたない人ですわね。私のように優雅に振舞うことはできないのかしら?」

サン「うるせー! オレ様は誰よりも熱い男。ハイテンションで何が悪い」

ムーン「だって……そんなテンションの人と一緒にいると恥ずかしいんですもの」

サン「……オレ様だって傷つくことはある」

ムーン「すみません。私の配慮が足りませんでしたわ」

サン「それにオレ様だって常日頃からテンション高いわけじゃ決してないぜ」

ムーン「そうなんですか?」

サン「そうだぜ。ずっとこのテンションだったら暑苦しいじゃねえか」

ムーン「確かに。ただでさえ熱いのに、そのテンションだとなお熱いですわ」

サン「仕方ねえだろ、太陽の化身なんだから」

ムーン「悪いとは一言も言っていませんわよ」

サン「まぁ、悪いとは言ってねえけどよ。そんな気持ちが見え隠れする言葉だった」

ムーン「そう感じさせてしまったのなら、私の失態というものですわね。……お詫びに手を繋いでもよろしくてよ」

サン「……手を繋ぎたいんだったら、最初からそう言えよな」

ムーン「あら、何を言っているんですか? 私はお詫びをしたいだけです。決してあなたと手を繋ぎたいわけではありません」

サン「そうかよ。じゃあお詫びなんてしなくていいぜ。オレ様は紳士だからな、女子が嫌がることは決してしない」

ムーン「あっ……そうですか」

サン「だからぁ。素直になれよ。滅多にないことなんだぜ。後悔はしたくねえだろ?」

ムーン「十人十色、千差万別ですわ。私はこういう性格なんです。変えることなんてできませんわ」

サン「仕方ねえなぁ。ほら」

ムーン「なんですかその手は?」

サン「侘びじゃなくていい。単純にオレ様がお前と手を繋ぎたい。それじゃダメか?」

ムーン「……仕方ないですわね。そこまで言うなら繋いであげましょう。私は慈悲深いですから」

サン「嫌味」

ムーン「うるさいですわ」

サン「まぁ、いいけどよ」

ムーン「……」

サン「どうしたよ。急に黙って」

ムーン「べ、別に何でもありませんわ」

サン「なんか顔赤くね?」

ムーン「な、何を言っているんですか? そ、そんなわけないでしょう。気のせいですわ!」

サン「月なのに太陽のように真っ赤か。さては照れているな?」

ムーン「ち、違います。私が照れるなんて、そんなことあるわけないでしょ!」

サン「ツンデレだな」

ムーン「ツンデレじゃありません!」

サン「ふーん?」

ムーン「に、ニヤニヤしないでください」

サン「いやぁ、ほんと可愛いなぁ」

ムーン「えっ? はっ? ううううぅ」

サン「太陽のオレ様より真っ赤か。体温も急上昇。やっぱり照れてるな」

ムーン「……悪いですか」

サン「いんや、嬉しいぜ。オレ様としてはな」

ムーン「なぜです?」

サン「だってオレ様が好きだから照れてるんだろう?」

ムーン「!!」

サン「違うのか?」

ムーン「えっ、えっとそれは……わ、分かるでしょ?」

サン「えー、分からないなぁ。オレ様賢くないしー」

ムーン「っ! ……ホントに嫌みったらしい人ですわね」

サン「仕方ない。そういう性格だ」

ムーン「あなたなんてキライです」

サン「そう言いながら手は離さないんだな」

ムーン「あう」

サン「オレ様の勝ちだ」

ムーン「勝負なんてしてません!」

サン「じゃあオレ様たちは何をしてるんだ?」

ムーン「そ、それは……デ、デート」

サン「その通り! オレ様たちはデートをしているんだ。それはつまり愛し合っていることに他ならない。お前がいくら照れて否定しても、オレ様とデートをしているという事実がお前の気持ちを物語っているんだ!」

ムーン「……」

サン「沈黙は肯定と見なすぜ?」

ムーン「勝手にしてください」

サン「じゃあ、そうする」

ムーン「……どうしてなんでしょうね?」

サン「何が?」

ムーン「私は他者を魅了し、狂わせる存在です。それはご存知でしょう?」

サン「当然だ」

ムーン「そのはずなのに私が……魅了され狂わされるなんて思ってもいませんでした」

サン「月が輝くのは太陽がいるからだ。お前がオレ様に魅了されるのも当たり前なんだよ。……オレ様がお前に恋焦がれるのも、お前がオレ様の光を受け止めて輝いているからだ。オレ様の目にはお前しか見えない」

ムーン「……恥ずかしい人ですね」

サン「太陽の化身だから情熱的なんだよ」

ムーン「もっと抑えるようにしてください。このままだと耐え切れませんわ」

サン「恥ずかしくて?」

ムーン「いいえ……嬉しくてですわ」

サン「ようやく素直になったか」

ムーン「私はずっと素直ですわ」

サン「オレ様のほうが素直だ」

ムーン「あなたと比べないでください。心外です」

サン「酷い」

ムーン「私なりの愛情表現ですので気にしないでください」

サン「もっと積極的に愛を囁いて欲しい」

ムーン「それは無理ですわ……もう時間がありませんもの」

サン「げっ! もう時間かよ。思ったより短いぜ」

ムーン「仕方ないでしょう。いつだって刹那的です」

サン「足りねえよ」

ムーン「私だって」

・・・

太陽と月、両者が出会うのは日食の日だけ。短い時間、刹那的な逢瀬。二人は恋焦がれる。もう一度出会える日まで。