【GL】素直になれない私の片思い

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三井 優(ゆう):
女性 26歳
まどかとは中学の頃からの友達。その頃からまどかに対して恋心を抱いているが、ずっとひた隠しにしてきた。
何度か男性の恋人がいたが、どの人とも長続きしなかった。
事務の仕事をしている、性格は悩み多きリアリスト。まどかとの友達関係を壊したくないので言い出せないでいる。
レズビアンではなく、まどかを人間として好き。

田所 まどか:
女性 26歳
恋多きロマンチスト。好きになったら一直線。とにかく恋愛体質で、常に彼氏が途切れない。
フラれたら優とお酒を飲んで愚痴って大泣きするのがいつものパターン。
優の気持には全然気づいていなかった、アパレルショップ店長職に就いている。


いつからまどかに対して恋心を抱いていたのかは、もう覚えていない。
でもきっと、まどかと出会った中学生の頃からまどかの事が好きなんだと思う。
まどかと私は女性同士で、私もまどかも女性が恋愛対象ではない。
まどかに至っては恋多き乙女だから男性が恋愛対象だろうし、私もまどかを女性として好きなんじゃなくて、まどかだから好きになったんだろうな。

そこまで考えてから、まどかが私を呼ぶ声でハッと意識が戻った。
「ねえ、聞いてたぁ? 私の話しー。もーほんとに、優(ゆう)ってすーぐこうなっちゃうんだからぁ~」
お酒の入ったグラスを両手で持って、ケタケタとおかしそうにまどかが笑う。顔、真っ赤かだよ。相当酔ってるな。
「まどか、飲み過ぎだよ、それ以上飲んだらあんた帰れないよ」
「今日はぁ~優の家に泊まる! 決めた! だからもっと飲む!」
勝手に決めて、勢いよくグラスを煽った。あーあ。明日二日酔いで頭痛いって苦しがっても知らないよ?

まどかは好きになったら一直線、ずっと恋愛していないと落ち着かないと自分で言っちゃうくらいの恋愛体質。
フラれる度に「優~またフラれちゃった~私ってどうしていつもこうなんだろ?」なんて泣きついてくる。
それを「もう、しょうがないな。まどか、今日は飲もっか。私が全部、まどかの愚痴聞いてあげる」と甘やかすのがいつものパターン。
中学生の頃からの友達で、その頃から恋愛体質なまどかの世話をして(その頃はスイーツバイキングに行っていたな)、大人になっても続いているこの関係。
まどかは私の事を一番仲の良い友達、親友だと思ってくれていたらいいなと思う反面、それ以上の特別な関係になりたいと思ってしまう自分もいる。

(でも、こんな気持ち、まどかに知られたら)
きっとまどかは気持ち悪がったりはしないと思うけど、でも、やっぱり気まずいと思う。
だからこんな気持ち、誰にも告げずに一生抱え込んだままでいた方がいいんだ。そうじゃないと、まどかの傍にはいられない。

はあ、と重苦しいため息をついて、いつの間にか潰れてしまったまどかを見る。
寒い寒いと言うからまどかの為にちょっとだけ早くこたつを出した。
まだ10月だよ、とか言いながらもいそいそ準備をした私って、余程まどかの事好きなんだな、なんて自嘲する。
まどかはこたつの机にほっぺをつけて、そのままくうくうと眠っている。
そっと手を伸ばしてまどかの前髪を撫でてみた、全然起きない。
今だったら、大丈夫かな。
身を乗り出して、まどかの唇へ自分の唇をつけようとした所で、止めて、額へ口づける。
「おやすみ、まどか」(おやすみ、私の恋心)
その時、実はまどかが起きていたなんて、全然気づかなかった──。

それからも月日は流れて、私に恋人が出来た。
何十人目の恋人は同じ会社の同僚。でもきっと、数か月、最悪数週間で別れるんだろうな。
私は来る者拒まずで、告白されて相手に嫌悪感がなかったら取りあえず付き合ってみる。
それは、「この人ならまどかへの恋心を忘れさせてくれるかも」と思うから。でも、いつも駄目。
皆「優は、誰か他に好きな人がいるんじゃないのか」と去っていく。
見透かされているんだ、私のまどかへの気持ちが。それ位、強い想いだから仕方ないのかもしれない。

きっとこの人も、もう少ししたら私の心に気づくんだろうと思いながら会社から新しい恋人と出て、手を繋いで帰る。
「部長、あの言い方ないよね」とか「今日、どこで食べて帰る?」なんて普通の恋人同士の会話をしていると、彼と手を繋いでいない方の空いている手を何かに掴まれた。
え? と思って振り返ると、何故か怒った顔をしたまどか。
「あれ? まどか、どうしたの?」ちょっとドキドキしながら問いかけても、まどかは私の手を握って離さない。
「えっと、知り合い?」彼が戸惑ったように言うので、「うん、友達、中学からの」と返す。
そこで何故かまどかが泣きそうな顔をした。眉間にシワを寄せるのは、まどかがあともうちょっとで涙を流すまでの合図。ずっと見てきたまどかの泣きそうな時の癖だ。
「まどか、どうしたの? 大丈夫?」彼よりも大切なまどか、どうしてそんなに悲しそうな顔をするのか解らなくて、繋いでいた彼の手をパッと離した。
するとまどかが数回瞬きをして、それから両手で私の手を握る。
様子のおかしなまどかを放っておけなくて、彼に「ごめんね、今日はちょっと、後で連絡するから」と言って、まどかを引っ張って行った。
置いてけぼりな彼をちらっと見るけど、その後に見たまどかの顔が何だか嬉しそうだから、すぐに彼の事は頭から消えてしまった。

数十分歩いて、私の家につく。
マンションの扉を開けて、まどかを部屋に呼び込んだ。素直に入ってくるまどか。
靴を脱いでそのままリビングのこたつに向かい合わせに座って、ちょっとの間、静かな時間が続く。
どうしようかな、連れてきたものの、何を言ったらいいのか解らない。
悩んでいると、まどかから「ねえ、」と話しかけてきた。「ねえ、さっきの人、彼氏?」
「うん、同じ会社の人。えと、紹介してなくてごめん」「別に」また暫く続く沈黙。

「「あの」」

まどかとかぶってしまった。思わず笑うと、まどかも笑っている。良かった。
「ねえ、どうしたの? さっき、泣きそうだった」
「あー、えとね、あの、すごく言いにくいんだけどさ」
優、この前私にキスしたでしょ?
言いにくいと言いながら、さらっと言った。っていうか、え、嘘、バレてた。
さーっと血の気が引いていくのが解る。手先がちょっと冷えてきて、冷や汗が流れそう。倒れそう。
「あの、ごめん、なさい。」気持ち悪かったよね、ごめんなさい、嫌わないで。
涙が次々溢れてきて、視界がぼやける。
どうしよう、どうしよう、まどかに嫌われたかもしれない。そう思って、拭っても涙が止まらなくて、まどかの方を見れないでいた。
すると、私の額にかかっていた前髪をよけて、露わになった額に何か柔らかいものが触れていった。

「え、まどか、今の」今のって、
状況が理解できないままでまどかを見ると、まどかがうーんと顎に手を当てて考える人のポーズをしていた。何それ。こんなシリアスな場面でそのポーズ。
「あのね、優からキスされて、私、嫌じゃなかったんだよね。それでね、考えてたんだけど、なんでか大好きだった彼氏より優の顔ばっかり浮かんじゃって」
「それで彼とも別れて、優に会ってみようと思って優の家に行こうとしたの、そしたら優が知らない男の人と仲良さそうに歩いてるから、」
嫉妬、しちゃった。
ぺろっと舌を出して言ったまどか。何だか子供みたいで無邪気な顔に反して、今の言葉に引っ掛かりを覚える。
「嫉妬? 嫉妬って言った? それって、まどか、」私の事、好きなの?
聞いてみて、自分で何言ってるんだろうと恥ずかしくなったけど、まどかは「そうみたいね」とけろっとした感じで答えた。

「今まではとっても仲の良い一番の親友! って思ってたけど、優の事好きなんだと思う」
何十年間と悩んできた私よりもあっさりと自分の気持ちを伝えてきたまどかを見て、やっぱり敵わないなと笑ってしまった。
泣いたと思ったら笑いだして私に「何で笑うのよ」とまどかも笑う。

「ねえ、女性同士だよ、簡単な恋じゃないよ」「解ってるよ、でも好きになったら一直線な私の性格は優がよく知ってるでしょ?」
いつの間にか横に移動してきていたまどかに抱き付くと、まどかも私を抱きしめ返してくれた。
何十年間の片思いだったんだろう、それがこんなにあっさり成就するなんて、思いもしなかった。
幸せで胸がいっぱいになりながら、まどかとだったら、ずっとこの先楽しく過ごしていけそうだなんて未来を想って嬉しくなる。
まどかも私が笑った気配を感じたのか「あー、幸せってこんな感じなのかな」と笑った。

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